●セットリスト
1.ICHIDAIJI
2.BLUE
3.DENKOUSEKKA
4.ばけものだらけの街
5.大脱走
6.パンドラボックス
7.話半分
8.エレクトリック・パブリック
9.ラディアン
10.7
11.ミドリ
12.リスミー
13.ヒミツ
14.テレキャスター・ストライプ
15.バケノカワ
16.有頂天
(アンコール)
EN1.阿吽
EN2.ラブコール
今年2月に2ndフルアルバム『有頂天』をリリースしたポルカドットスティングレイが、そのリリースツアーの最終公演として、キャリア初の日本武道館ワンマンを開催した。チケットは5分でソールドアウト。武道館はポルカを愛する約9000人の男女で埋め尽くされた。
場内が暗転すると、ステージの両脇に設置されたモニターに、“ICHIDAIJI”のMVに出演したことでもおなじみのお笑いコンビ・流れ星出演の映像が流れる。「武道館には行かれない」というトークを繰り広げたあと、バナナの皮を発見したふたりが、点在するそれを追いかけていくと辿り着いた部屋には巨大バナナのぬいぐるみが山盛りになったカゴが――というところで映像は終了。するとステージには、黄色と黒の衣装を身にまとったエジマハルシ(G)、ウエムラユウキ(B)、ミツヤスカズマ(Dr)と、映像に登場していた山盛りのバナナが。その山をかきわけてバナナをモチーフにした雫(Vo・G)が現れると、彼女の威勢のいい「1、2、3、4!」のカウントで“ICHIDAIJI”を演奏し始めた。
ギターを弾きながら伸びやかな歌声を聴かせる雫は、モニターのカメラにも目配せを欠かさない。横目でさりげなくウインクをするなど、後方の観客にも楽しんでもらうサービス精神や演者意識の高さはさすがである。“DENKOUSEKKA”では、MVとは別バージョンのけたたましく動くクマの映像が流れ、けたクマの動きに合わせて観客たちもダンスに興じた。
転換中のモニターに「きょうはあいするみなさまに すてきないちやをすごしていただけるよう ぜんりょくでがんばりますので たのしんでいってね さあかかってこいよ武道館」といったメッセージが流れると、メンバーたちは『有頂天』の衣装へとお色直し。楽器隊のインスト演奏とソロ回しから“ばけものだらけの街”につなぎ、導入を経てジャジーでムーディーな“大脱走”と、聴かせるアプローチを繰り広げる。曲の世界観に入り込み主人公を全うする雫は、まさしくヒロインだ。
アッパーな“パンドラボックス”は、焦燥感のある演奏に合わせて激しく飛び出すド派手なレーザーが爽快。先程のメッセージのとおり、頭からつねに観客が楽しめる演出が、これでもかというくらい詰め込まれている。ミディアムナンバー“話半分”で場内を恍惚とさせ、“エレクトリック・パブリック”の間奏では前衛3人が縦1列になって楽器を弾きながら“Choo Choo TRAIN”のイントロでお馴染みのダンスをするなど、彼女たちがバンドというフォーマットを最大限に生かしたエンターテイナーであることをあらためて思い知らされた。
メンバーがステージを去ると、この日のために制作された“7”のアニメーションMVが放映される。そのまま初公開の“ミドリ”のMVに移り変わると、ステージにはアコースティックセットを組んだメンバーの姿が。雫は曲に綴られた狂気を迫真のボーカルで届けた。「ライブでアコースティックを披露するのはこの日が初めて」と語ると、続いての“リスミー”も同編成で演奏。ステージの背景一面に星空が広がるなか、観客もじっくりとその音色に聴き惚れた。
アコースティックの静寂から“ヒミツ”で場内をカラフルに染め、“バケノカワ”では同曲のMVに出演しているタイムマシーン3号がサプライズ登場。それぞれ盾と剣をもって、MVでも見せている迫力のバトルを繰り広げたり、ダンスを披露するなどする。パフォーマンス後は「言葉を太らせる」という持ちネタを披露し客席を大いに沸かせ、ステージに残ったポルカの4人はそのハッピーな空気感のまま“有頂天”で本編ラストを締めくくった。
アンコールでは突如新曲“阿吽”のMVがフルで流れ、そのあと同MVにも出演していたハリウッドザコシショウとメンバーが、MVとまったく同じ衣装で登場。同曲を生演奏で披露した。甘酸っぱく清涼感のあるギターロックは、ポルカの新しい武器になるだろう。演奏後にザコシショウは服を破って普段のルックスになり、ネタやトークを繰り広げ、場内も盛り上がりを見せた。メンバーが3回目のお色直しを済ませると、終演後のアンケートで今日のセットリストから最も票を集めた楽曲を次回作のライブ音源にすること、9月に3rdミニアルバム『ハイパークラクション』をリリースすることを発表。止まらない勢いに観客は高らかな歓声と拍手で応えた。
雫は興奮気味に「本当にみんなには感謝しとるわけ! クライアントさん、ライブスタッフ、そしてなによりお客さん! 本当にありがとう、すごく楽しかった!」と呼びかけると、「あと1曲、みんなへの気持ちを書いたエモいヤバい曲やってもいい!? 我々からのラブコールを受け取ってくれー!!」と絶叫し、“ラブコール”を届ける。心情がストレートに綴られた歌詞は、どんなMCよりも彼女の愛情が伝わってきた。ラスサビ前からさらに力いっぱいに歌う彼女は、「かかってこいよ!」と叫ぶと膝から崩れ落ち、そのままお立ち台に上がってギターをかき鳴らして歌う。彼女の気持ちに応えるように客席からシンガロングが起こったシーンは、雲一つない晴天のように淀みなかった。
雫は音が鳴り止むまで喉を枯らし「みんなほんとにありがとう! 本当に楽しかった!! みんな愛してるよー!!」と叫び続けた。序盤は「楽しんでいってね」と言っていた彼女たちが、最後に「楽しかった」と感謝を伝えるのは、客席とステージの気持ちが最後にシンクロしたという意味でも非常に趣深い。ひとつの大舞台を成功させたポルカドットスティングレイ。今後彼女たちが作り出す景色はより鮮やかになるだろう。(沖さやこ)