ゆらゆら帝国 @ 恵比寿 リキッドルーム
2008.06.04
恵比寿駅からリキッドルームへと向かって歩いていると、「チケットを譲ってください」という紙を掲げた人が何人か立っている。このぐらいの会場だといつものことだそうだが、ゆら帝のライブには、このような中毒性というか、禁断症状を生み出してしまうところがある。そこには、人気ロック・バンドのチケットを求めてる、といった雰囲気はまったくない。もっと生理的な、身体にべったりと染み付いた欲求が人をそこへ向かわせる。 「こんばんは………昨日来た人いますか…………………やります」という坂本の挨拶と共に始まったライブ。今回は2日連続のリキッドルーム公演の2日目になる。1曲目の“おはようまだやろう”で響くトレモロとディレイが、ゆらゆら帝国のライブに来たことを身体に語りかけてくる。そして、亀川千代の伽藍堂に響くようなベースと、柴田一郎の淡々としていて丁寧なドラム。言うまでもないけれど、『空洞です』を経た今のライヴはグルーヴがすごい。スローモーションで時速160kmの球を見つめるような、奇妙な時間軸がそこには存在する。それは、敢えて遠近法を崩したような現在の世界的なダンス・ミュージック〜ポスト・パンク〜ダブの潮流ともリンクする。 “2005年世界旅行”と“無い!!”の壮絶な演奏でピークを迎えた前半、この日のグルーヴの真骨頂だった“あえて抵抗しない”と“3x3x3”の爆発的なロックンロールが印象的だった後半。最新作同様、締めくくるように“空洞です”を演奏して、アンコールもなく、「ありがとう」とだけ言い残して、3人はステージを降りていった。(古川琢也)