indigo la End/中野サンプラザ

indigo la End/中野サンプラザ - All photo by 鳥居 洋介All photo by 鳥居 洋介

●セットリスト
1.渚にて幻
2.夏夜のマジック
3.雫に恋して
4.砂に紛れて
5.花傘
6.Midnight indigo love story
7.忘れて花束
8.心ふたつ
9.ほころびごっこ
10.心の実
11.見せかけのラブソング
12.藍色好きさ
13.アリスは突然に
14.ラッパーの涙
15.結び様
16.蒼糸
17.通り恋
18.幸せが溢れたら
(アンコール)
EN1.抱きしめて
EN2.Play Back End Roll


この日のライブを、もっと言うとindigo la Endというバンドを象徴していた場面がある。アンコール2曲目、“Play Back End Roll”でのことだ。穏やかだったバンドサウンドが次第に熱を帯び、ステージから溢れ出していくなか、客席の人々はそれをじっと見守るように立ち尽くしていた。逆光の照明を背負ったメンバーはやがてこちらからだとシルエットだけしか見えない状態になる。そうして音楽に溶けていく。

伝えたいことはすべて音楽の中で。だってそれがきっと一番伝わるから。そんな信条のもと、曲と演奏をひたすらに磨き続けたこのバンドの在り方をそのラストシーンは象徴していたのだ。「本当にindigo la Endって地味なバンドで。メンバーが揃わなかったり、曲が響かなかったり、悔しい想いをしたことはたくさんあったけど、ずっとつまらなくはなかったというか。だから10年続いたんだと思います。(サポートの2人も含めた)この6人で5年経ちましたけど、前半の5年間よりこの5年間の方が濃くて。次の10年の方が楽しくなれると今回のツアーをやってみて思いました」と川谷絵音(Vo・G)。「僕らマイペースですけど、これからもよろしくお願いします」という彼の言葉に、観客が拍手で応える。

2015年3月に初のホール公演を行った時と同じ会場、中野サンプラザで行われたindigo la Endの2Daysライブ。彼らは今年結成10周年を迎える。この2日間は、最新アルバム『濡れゆく私小説』に伴う全国ツアーのファイナル、かつアニバーサリー前夜にあたる位置づけだ。1日目は「朱」、今回レポートする2日目は「蒼」をコンセプトにしたセットリストが組まれ、異なる内容のライブが行われた。

indigo la End/中野サンプラザ
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indigo la End/中野サンプラザ

楽器の音が一つずつ重なり、“渚にて幻”から演奏が始まった。青色のレーザーとスモークが幻想的な空間を作り出し、2階席から見ると、雲の下にステージがあるみたいに見える。しかしボーカルの母音の響きをはじめ、バンドの音には独特の浮遊感があり、まるで天から降ってくるみたいに聴こえる。不思議な感覚だ。同曲を終えると、キーボードの旋律をバックに川谷が「indigo la Endです、よろしくお願いします」と挨拶。“夏夜のマジック”に入ると、照明により、衣装を黒で揃えた川谷、長田カーティス(G)、後鳥亮介(B)、佐藤栄太郎(Dr)、サポートの佐々木みお(Cho)、えつこ(Key・Cho)の姿が明らかになった。この日のライブは、曲間をバンドの演奏やSEで繋ぎながら全20曲(アンコール含む)を次々と演奏する構成。“夏夜のマジック”のグルーヴに身を委ね、“雫に恋して”でバンドが刻む8ビートの疾走感に昂揚していると、伸ばされた最後の音が迫りくるように音量を上げた。続くは“砂に紛れて”の整頓されたリズム、コードによる歪な響きが導くスリル。川谷がアコギを軽く鳴らしたあと、SEによる弦のトレモロを機に“花傘”へ。そうしている間に5曲。曲の連なりに心を動かされているうちにあっという間に時が過ぎていた。

indigo la End/中野サンプラザ
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8分の6拍子に乗せてひとつのリズムをループさせる“Midnight indigo love story”では、ドラムを筆頭に、曲が進むにしたがって激しさを増していく。各々が別々の旋律を奏で、最終的にはひとつの所に収束していく“忘れて花束”のアウトロにはこのバンドの演奏力の高さが表れていた。赤と黒の照明で場内が染まった“ほころびごっこ”は、ボーカル+コーラスによる歌い出しからひんやりとした狂気があり、この曲ひとつで一気に空気が変わる。どの音域でもフラットに鳴らす、川谷のブレのないボーカルがその狂気をかえって際立たせる。ノイズ混じりのアウトロを終えると、キーボードのコードにドラムのビート、ベースのスラップが加わり、“心の実”へ。

インタールード的なセッションを経て始まった“アリスは突然に”。バンドが最後の音を鳴らしきったとき、ここで一旦締まったような手応えがあったが、すぐに佐藤が次のリズムを叩き始めた。“ラッパーの涙”は食ったリズムを多用した変則的なキメが特徴的。隣同士に位置するリズム隊の連携が光る曲だ。“結び様”では悲しみを滴らせたようなメロディ、ハーモニーの美しさに心奪われる。“蒼糸”では上空で青色のレーザーが交差するというそのタイトルを彷彿とさせる演出があった。川谷が弱くエレキを弾き、暗転の中で歌い始めたのは“通り恋”。《追伸「あなたが好き」》という最後の一節が広いホールに響く。

indigo la End/中野サンプラザ
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ストリングスのSEが鳴るなか、「次で最後の曲になります」と川谷が観客に告げた。ここでこの日初めてのMC。川谷は、セットリストが進むにつれて蒼色がどんどん濃くなるようなイメージで曲を選んだこと、特に本編最後の4曲は彼の思うindigo la Endの「蒼」にあたる曲だということを語ったあと、今年でバンドが結成10周年を迎えることにも触れた。「特別なことを盛大にやるバンドではないけど、今日のセットリストにはこの10年間が詰まっていて。区切りというか、また良い音楽作っていこうよっていう中野サンプラザ2日間だったので、たくさんの人に観ていただけて嬉しいです。ありがとうございます」と川谷。この日のライブは言うなれば、豊潤なバンドサウンドと質の高い楽曲群に根差した、ひたすらに濃密な音楽体験。その演奏は積み重ねた月日の価値を、そして今現在のバンドの充実感を確かに物語っていた。メンバーと観客は直接言葉を交わしたわけではないが、それぞれが今ここで鳴る音楽を静かに愛でることにより、バンドの10年を祝い合っているようだった。演奏自体はストイックなものだったが、それでも場内には温かな時間が流れていた。

“幸せが溢れたら”で本編を終えると、アンコールでは、セットリストを考えた時に最初に浮かんだ曲だという“抱きしめて”、そして“Play Back End Roll”を演奏。メンバーが退場したあと、映像演出で以ってメジャー6thフルアルバム『夜行秘密』のリリースが発表された。気になるリリース時期は「涼しくなる頃」とのこと。季節の訪れとともに彼らの新作が楽しめる日のことを心待ちにしていたい。(蜂須賀ちなみ)

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