THE BACK HORN @ JCBホール

昨年、バンド結成10周年を迎えた節目の年として初の武道館公演を実現させたTHE BACK HORN。その後、この節目に立って自分たちが鳴らしたい音楽を素直にアウトプットしたことで限りなくリスナーに向けて開かれたアルバムとなった『パルス』をリリースし、そのアルバムを携えて、THE BACK HORN史上最長の52公演にわたって行われた怒涛のツアー『THE BACK HORN「KYO-MEIツアー」〜創造のパルス〜』を全国各地で繰り広げてきた。本日はその最終日。JCBホールにてファイナルを迎えた。

18:00スタートだったが、やや押して18:14、場内暗転とともに厳かなオープニングSEが鳴り響いた。暗いステージにぼんやりと青い光が揺れる中、メンバーがゆっくりとステージに現れると場内は大歓声に包まれ、すし詰め状態のフロアから溢れんばかりの熱気が立ち込めた。そして、SEが鳴り止んだ後の一瞬の静寂を突き破るように栄純が張り裂けんばかりにギターをかき鳴らした。“世界を撃て”だ。バックホーンのライブはいつだって、どの曲だって鬼気迫る山田の歌声と張り詰めた緊張感に覆われたバンド・アンサンブルでもってオーディエンスの目と耳を一瞬にして奪い、離さない。どこまでも真摯に、どこまでも熱く、いつもと変わらず我々を圧倒してくれることに変わりはないのだけど、怒濤のツアーの集大成となる今夜はやはり違った。百戦錬磨で叩き上げてきた4人の無敵のプレイがいつに増して凄まじい勢いを放っている! 奏でる音にどんどん求心力が強まっている! “グラディエーター”での巨大な音の塊が体中にぶち当たってくるような感覚はハンパなかったし、“ブラックホールバースデイ”で《手を伸ばせ 一人消えてしまう その前に》と将司が手を伸ばし歌えば、オーディエンスも同じように光を求めるように手のひらを掲げて爆音に心酔していく。最初の3曲でもう泣けてくるほどにバックホーンの音が真っ直ぐ、そしてクリアに届いていることが感動的だった。

「全国各地で素晴らしい『パルス』が生まれてきたと思うんですが、今日も素晴らしい『パルス』を生み出して帰ろうと思います!」という松田による挨拶の後、“白夜”“フロイデ”“赤い靴”と毒々しい狂気に満ちた攻撃性が爆発する楽曲群をノン・ストップで披露。特に衝撃的だったのは“アカイヤミ”での、フロント3人の暴れっぷり。岡峰は地面を這うように横たわりながらベースを叩き鳴らしたり、しまいにはベースを客に触らせて完全に預けてしまったり、山田は栄純のギターのネックをガリガリかき鳴らし2人で狂ったように1本のギターをプレイ。しまいに栄純は山田にギターを預けて、完全に踊り狂っては「アカイ!アカイ!アカイ!アカイ!」と大絶叫を繰り返し、最後はフロアへドーンとダイブ! 本当に凄まじかった。その後に続いた“人間”も“罠”も激しく攻撃的だったのは言うまでもないが、バックホーンの場合、それが視覚的なものに留まらないところが素晴らしい。痛みを伴わずしては聴けない、どこまでもリアルな感情を突きつけては、汚くて、醜くて、でも、美しくて、優しくて、儚い…そんな人間の本質に正面突破で迫り、心と心をぶつけ合う。ステージを通してそんな心の共鳴を体感できるライブはそうそうないよなと改めて思う。

人間のあらゆる感情を、魂を、ぶつけ共鳴し合ってきたこのライブの中で最終的に見出されたもの。それは、まるでエンディングを飾るかのように優しく力強く奏でられた“生まれゆく光”だ。会場いっぱいに眩いライトが広がり、山田の心からの歌声がオーディエンスを導く救いの手となって響き渡る。ここまでの流れで本編終了といってもいいくらい、アルバム『パルス』の世界観が完璧に表現された瞬間だった。この時点で時間はまだ1時間ほどしか経っていなかったけど、それだけでも充分満足できるくらい濃厚で重厚な時間だった。

今回の52本にわたるツアーで今までにやっていないことをやろうということでなぜかグダグダなMC(ほぼ松田の一人しゃべり&山田の「今日は何を食べたんですか?」という突然のフリに岡峰と栄純がライブ前にくいしん坊でステーキを食べた話などなど)を挟みつつ、「このツアーを回って感じることもたくさんあったので、今後を楽しみにしていてください!」という力強い宣言も飛び出し、ここから一気に畳み掛けるように後半戦へと突入した。定番曲“サニー”“声”“コバルトブルー”と力の限り精一杯の声を振り絞って歌い叫び、オーディエンスも狂喜乱舞でクライマックスを迎えた。

ダブルアンコールで山田は「やっとこの『パルス』っていうアルバムが今日のライブで本当の意味で完成したんだなと思っています。これからもこのアルバムをよろしく!」と締めくくった。『パルス』は、迷いも疑いもなくストレートに今想うことを突き詰めていった結果、最終的に光射す方へとリスナーを導いてくれるような美しいアルバムだ。それがこのツアーを介して、本当にオーディエンスに生きる意志みたいなものを与えてくれるかのようなラストを見せてくれたことが素晴らしかった。山田は最後に「明日からも頑張ろうな」と優しく語りかけると、壮大なバラード・ナンバー“泣いている人”を披露したのだ。《どうか明日は 幸せでありますように》という心からの願いと希望はこのライブ空間にいた一人一人に明日へ向かう活力を与えてくれたに違いない。

7月にはこの怒濤のツアーの模様を収めたライブ&ドキュメンタリーDVDの発売が決定したことも発表され、バックホーンは止まることなく私達に「パルス」を発信してくれそうだ。ステージ去り際に見せてくれた清々しい表情は、バンド史上最長となったこのツアーが新たなるバックホーンを呼び覚ますための大きな意味を持ったツアーになったことを物語っていた。(阿部英理子)

1.世界を撃て
2.グラディエーター
3.ブラックホールバースデイ
4.白夜
5.フロイデ
6.赤い靴
7.アカイヤミ
8.人間
9.罠
10.生まれゆく光
11.蛍
12.サニー
13.声
14.コバルトブルー

アンコール
15.無限の荒野
16.刃

アンコール2
17.泣いている人
18.覚醒
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