MXPX @ 恵比寿リキッドルーム

MXPX @ 恵比寿リキッドルーム
MXPX @ 恵比寿リキッドルーム - pic by ZIZOpic by ZIZO
この日は奇しくもグリーン・デイも赤坂BLITZで渾身のアクトを繰り広げていたのだが、ここ恵比寿リキッドルームでも負けじとばかりにオーディエンスの熱気がもうもうと渦巻いている。そう、USポップ・パンク・シーンが生んだ不屈のメロディック・クリスチャン・パンクの雄、MXPX! 3月にリリースされたカバー・アルバム『オン・ザ・カヴァーII』では、ザ・クラッシュ、ラモーンズからクイーン/U2/ベリンダ・カーライルまで幅広いレパートリーに加え、日本盤ボーナス・トラックではブルーハーツの“リンダ リンダ”を日本語で熱唱していた彼ら。約1年ぶりの来日で横浜/大阪/名古屋とサーキットしてきた2009年ジャパン・ツアーも、ここリキッドルームでいよいよファイナル!

19:00、まずはオープニング・アクト=大阪発のメロディック・パンク3ピース=SECRET 7 LINESが登場。シンプル&ダイレクトなメロディ、ソリッドなコードワーク、そして8ビートから超速ブラスト・ビートまでタイトに乗りこなしていくそのバンド・サウンドには、ピッカピカのアメ車がF1のエンジン積んで軽快にハイウェイを爆走しているような驚きと快感がある。すでにMXPXとは中国も一緒に回ってきたというS7L。「ここにいる人の99%は俺らのこと知らないと思うけど、間違いなくみんなと同じくらいMXPXのことが好きです! それで十分じゃないですか!」というRYO(G/Vo)の煽りに、熱い歓声が湧き上がる。ダニエル・パウター“Bad Day”の爆音パンク・カバーも披露してみせる演奏のキャパの広さと、「日本のパンク魂を見せてくださいよー!」というSHINJI(B/Vo)の叫びからほとばしる熱血エモーションが、アウェイな空気を徐々に自分たちの色に塗り替えていく。30分弱のアクトながら、アメリカのマッチョなポップ・パンク勢に劣らぬパワフルな演奏をアピールしていた。

そして19:53、いよいよMXPX登場! 結成から実に17年、眼鏡姿のドラム=ユーリはすっかり人のよさげな学校の先生的な風貌だし、マイクもトムも見た目すっかり恰幅よくはなっている。が、マイクの「コニチワー、トキオー!」という声をきっかけに、1曲目の“Tomorrow’s Another Day”で3人が渾身の音を鳴らした瞬間、その鋭利なパンク・アンサンブルが一気に灰色の日常を切り裂いて、リキッドルーム中を歓喜のるつぼへと叩き込んでみせる。速攻フロアはモッシュ&ダイブ芋洗い状態になり、大合唱は起こるわ手拍子は起こるわ、まさにメーター振り切れっ放しの高揚感に包まれている。

続く“Doing Time”の頃の後での「帰ってきたぜ!」的なマイクの熱く誇らしげなMCに、さらに熱いコールで応えるオーディエンス。「夏にぴったりな曲をやるよ」という言葉とともに放った“Southbound”も、「お前こそがお前自身の秘密兵器なんだ。全部お前次第だ!」というメッセージをハード・エッジにぶち上げる“Secret Weapon”も、アドリブで歌詞を「Kids In Tokyo!」とアレンジしてみせたキム・ワイルドのカバー曲“Kids In America”も、すべてが眩しいくらいのパワーに満ちあふれている。極めてタフに、かつ軽快に歌っているマイクだが、よく見るとベースのネックから汗がしたたっている。彼らのライブはいつだって笑顔で全力闘争だ。

そして……終盤、「ディス・イズ・ザ・ラヴ・ソング・フロム・MXPX・トゥ・ジャパン!」というマイクの言葉の後に響き渡ったのは、「どぅぶねぇーずみぃ、みとぅわぃにぃー……」という聞き覚えのあるフレーズ! “リンダ リンダ”いや“Linda Linda”だ! 1コーラスを英語で披露したあと、《ドブネズミみたいに誰よりもやさしい/ドブネズミみたいに何よりもあたたかく》以降の2コーラス目をマイクが日本語で絶唱! 改めて逆輸入的に気づかされるヒロトの歌詞のインパクトと、MXPXのタイトで図太いサウンドが一体となって、熱風のように鼓膜を支配する。最高だ。

“Shut It Down”“The Next Big Thing”“Chick Magnet”と必殺ナンバー惑星直列状態の終盤戦、ラストを飾ったのは、日本ではCM曲にも使われた“Broken Bones”! 火傷必至の灼熱アクトを「ドモアリガトゴザイマース」と軽やかに締め括ったマイク。アンコールでは、もはや定番となったクラッシュのカバー“Should I Stay Or Should I Go”をトムのボーカルで披露し、“Responsibility”“Punk Rawk Show”でステージもフロアも衝動炸裂大団円! 外の冷たい雨をものともしない心地好い熱気が、いつまでもフロアから消えなかった。(高橋智樹)
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