中央道の怒濤の渋滞を抜けてなんとか間に合ったオープニング・アクト=S.R.S.の時点から会場は大盛況! 富士山こそ見えないものの、この時点ではまだ快晴と言っていい陽気だ。「朝イチ踊ってこうぜ! アー・ユー・ディスコ? カモン山中湖!」という石毛の金切り声に始まったthe telephonesのアクトでは“Urban Disco”“sick rocks”連打でのっけからLAKESIDE STAGEの地面が揺れるし、ステージ途中でどピンクTシャツに着替えたKey・岡本を見て思わず「……光GENJIか何かだよね?」と呆気にとられるし、ラスト“Love&DISCO”までバキバキの選曲でオーディエンスを踊り狂わせるし、とトップバッターから見せ場十分。一方、Mt.FUJI STAGEで骨太なロックンロールをぶん回していたTHE BAWDIESは「新曲でも狂っちゃうくらい踊ってくれますか!」というROYのしゃがれた絶叫をきっかけに、それこそストーンズ“ジャンピン・ジャック・フラッシュ”をさらにストレートかつどす黒くしたような新曲“IT'S TOO LATE”で目の眩むような加速感を見せつけてくる。Nothing's Carved In Stoneは冒頭の“Isolation”からシリアス&ストイックなロック巨大絵巻を描き出しつつ、村松の「みんな、しっかり水分補給してね!……俺らは、水分補給してるから大丈夫」という変に朴訥としたMCには軽やかな笑いが湧き起こっていた。
「『SWEET LOVE SHOWER』っていうと、下ネタみたいな気がして。愛をかける、っていう……昼1時からごめんなさいね(笑)」というMCの主は、Mt.FUJI STAGEに登場したBase Ball Bear・小出。しかし、“BREEEEZE GIRL”や“ELECTRIC SUMMER”のサウンドはどこまでも清冽でクリアで、その音の一つ一つから青春の風が吹いてくるのはさすが。そしてACIDMAN! 今シーズン最後のフェスということで、全7曲の中に“CARVE WITH THE SENSE”“ファンタジア”“Under the rain”と新作『A beautiful greed』の曲をがっちり盛り込んだ最強のセットリストでオーディエンスを圧倒する。特に“ファンタジア”の、山中湖の空気に人生の幸福と奇跡が充満していくような感覚は、今の彼らの表現力の豊潤さをリアルに実証していた。と……ここでにわかに空が曇り出す。そして、その後の「真っ黒に染めちゃいます? 真っ黒に染めちゃってさ、雨降らせちゃおうよ! カモン雨!」という髭(HiGE)・須藤の縁起でもないMCから“黒にそめろ”“ハリキリ坊やのブリティッシュ・ジョーク”“溺れる猿が藁をもつかむ”とアンセムを畳み掛けた後、新曲“青空”を披露したのだが、これがいい。すでにCMでオンエアされているのを聴いて、髭歴6年の自分もつい「誰だこの声? いい歌だなあ」と不覚にも一瞬思ってしまったくらいの、髭にしては超シンプルでメロディアスなスロウ・ナンバーだ。しかし……その曲名とは裏腹に、さっきのMCをお天道様が聞いてたかのようなタイミングで、ポツポツと雨粒が落ちてくる。やがてそれは大雨となって、山中湖の風景を塗り潰していった。
雨が降ってもレインウェアやカッパを着て何事もなかったように楽しんでいるのは、他のフェスも『SWEET LOVE SHOWER』も同じ。そんな中迎えた、夕方のブレイク・タイム。ボードウォークに設けられた廃墟小屋みたいなステージに、sister jetがアコースティック・セットで登場。雨脚が強くなる中、「このステージはsister jetが一番手で、同時にトリでもあるんで、今日は『sister jet STAGE』っていう名前にします!」というWATARU.SのMCや、ザ・タイマーズ“デイ・ドリーム・ビリーバー”のカヴァー、そして“カウント2”などの楽曲でじっくりしっかりアゲまくっていた。一方、会場内の仮設スタジオでは『スペチャ』VJの臼田あさ美やぺっちゃん(番組キャラクター)、ゲスト・THE BAWDIESが勢揃い。プレゼント・コーナーなどの時間を、参加者はずぶ濡れになりながらも楽しんでいた。
雨も弱まってきたところで、いざ後半戦! 10-FEETの3人は登場と同時にEXILEの舞い(?)を披露、そのまま“STONE COLD BREAK”“VIBES BY VIBES”を連射すると、オーディエンスのジャンプでLAKESIDE STAGEの地面が面白いように揺れる。「雨、全部よけろ!」「遠足とか、文化祭とか、コンディション悪いほうが思い出に残ってんのと違うか! でも、できれば晴れてほしかった(笑)」と、MCでTAKUMAは軽やかに言っていたが、濡れた舞台やモニター・スピーカーの配置など、ステージにも雨の影響は相当残っているようだ。が、さすがは歴戦の猛者。それを自ら吹っ切るように、さらに“super stomper”“RIVER”“2%”で大団円! その直後、いよいよ雨も上がったMt.FUJI STAGEには怒髪天が! 「やってきました山中湖! SWEETでもなければLOVEでもない、ましてやSHOWERでもない我々! どうせみなさん雨でずぶ濡れでしょうからね、やけっぱちで頼んますよ!」とのっけから増子兄ぃはパワー全開! “NO MUSIC, NO LIFE.”に始まって“ロクでナシ”“ドンマイ・ビート”“酒燃料爆進曲”と渾身の酔いどれアンセムを畳み掛けつつ、「『今日初めて怒髪天観る』って人、どれだけいる? 誘われて観たっていう人も、これで今日ハマっちゃってね。1年後ぐらいに振り返った時に『去年の夏頃、夫に勧められて』とかね……これ絶対放送できないですからね(笑)」など、時事ネタ混じりの名調子は途切れることを知らないのだった。
2日目も終盤戦に差し掛かり、LAKESIDE STAGEには9mm Parabellum Bulletがオン・ステージ! “Vampiregirl”“Keyword”“Living Dying Message”といった『VAMPIRE』の必殺曲はもちろん、最新曲“Black Market Blues”に至るまで、もはやそのモンスター・ロックの肉体の一部になっているのが、堂々とした演奏からも伝わってくる。でも、「今日はお足下の悪い中……」という卓郎の朴訥MCが相変わらずなのも、なんかいい。あと滝。黒ポロ&短パンで超絶フレーズを弾きまくり暴れまくる滝の姿は、もはや同じ短パン・ギタリストのAC/DCアンガス・ヤングとともに世界に誇ってしまいたいくらいの、神々しいブチキレっぷりを見せていた。「俺たちの曲が初めて(スペシャで)かかってびっくりした曲です」と披露したのは“The World”だった。続いて、Mt.FUJI STAGEのラストを飾るTHE BACK HORN……の前に、再び雲行きが怪しくなってくる。が、「また怪しい空模様になってきてますけど……これはバックホーンのネクラ感が作用してると思います。この場を借りてお詫び申し上げます(笑)」という松田のMCのおかげで、その不穏な空模様もバックホーンのダークでシリアスなロックンロールの舞台装置の1つへと姿を変えていたし、 “空、星、海の夜”で空にくっきりと月が見えていたのはできすぎなくらいにドラマチックだった。“無限の荒野””刃“の切れ味と爆発力には思わず戦慄が走った。
そして……すっかり夜の闇に包まれた山中湖に、ヘッドライナー=ASIAN KUNG-FU GENERATION登場! “アフターダーク”から“Re:Re:”“アンダースタンド”、そして“惑星”へと、今のアジカン・アンサンブルの完成度とスケール感の粋を集めて鳴らしたような展開で、鮮やかにLAKESIDE STAGEを掌握してみせる。おそらくTV撮影用の演出の一環なのだろうが、ライブハウスで言う客電にあたる照明がずっとフィールドを照らしているのも、なんだか妙な高揚感があって逆によかった。「スペースシャワーTV20周年、おめでとうございます」という祝辞から「みんなは明日、選挙行くんかい?」と、翌日の衆院選を突如MCのネタにするゴッチ。「俺、フェスでもこういうサブいこと言うぜ?(笑)。ロック好きは投票に行かない、みたいなのは逆にカッコ悪いと思うんだよね。俺らが学生の頃は、『政治とか興味ない』っていうのが流行ってたけど……じゃあ、アジカンの曲の中でも比較的サブくない曲をやります!」と“ループ&ループ”で地面を揺らし、そのまま“リライト”“君という花”で会場のエモーションをMAXに炎上させたところで、本編終了。アンコールで登場したゴッチの「次、30周年の時にも、また来たいと思います」の声に、大きな拍手が広がっていく。最後は“新しい世界”で圧巻のフィナーレ!
ステージ終了後、ぞろぞろと会場を後にしようとするオーディエンスに向けて、なぜか『ドラゴンボール』のテーマや『古畑任三郎』の曲が仮設スタジオ・コーナーから高らかに鳴り響く。そう、さっきのライブ中は1滴も飲んでなかったという増子兄ぃが、なぜかアラレちゃんの帽子をかぶった泥酔王子と化して「クリリン1回死んでる!」とかつぶやきながら超勝手流な選曲でDJを繰り広げていたのだ。明日はいよいよ最終日!(高橋智樹)