京都音楽博覧会 @ 京都・梅小路公園

京都音楽博覧会 @ 京都・梅小路公園
京都音楽博覧会 @ 京都・梅小路公園
今年で3回目にして、天気予報を裏切って、初の「途中で大雨が降ってえらいことにならなかった」開催となったくるり主催フェス、京都音楽博覧会。今年の出演アーティストと、タイムテーブルは以下の通り。

12:00 くるり 挨拶
12:05 ふちがみとふなと
12:40 BEN KWELLER
13:30 矢野顕子
14:40 BO GUMBO 3 feat.ラキタ
15:25 奥田民生
16:40 石川さゆり
17:50 くるり

という予定だったのですが、矢野顕子あたりから時間が巻き始め、その後も全体に巻いたまま進み、石川さゆりのセッティングでやや時間を食い、結局くるりのアンコールが終わってフェスが終了したのは、19時の10分くらい前でした。こういうフェス、押すのは普通だけど、巻くのってとても珍しい。

で。それぞれのアクトに関しては、観ながらリアルタイムで自分のブログに書いてしまったので、一部かぶるかもしれませんが、ざっと簡単にレヴューします。

1.ふちがみとふなと
一昨年の1回目にもトップで出演した、歌やピアニカの女性(ふちがみ)とウッドベース(ふなと)の2人ユニット。1回目の時、歌とウッドベースだけで音楽として全然成立していて驚いたのを、2年ぶりに思い出す。普段は酒場なんかでライブ活動をしていて、お客さんに合唱とかを求めたりすることはないんですが、今日はこういう特別な場なので、ぜひ……と前置きして、ロールケーキの歌(ごめんなさいタイトル忘れました。公式サイトのディスコグラフィーを見てもそれらしき歌が載っていない)を歌ったら、シンガロングに加えて手拍子まで巻き起こり、渕上さん、いたく感動しておられました。
にしても、このユニット、演奏とメロディもだけど、歌詞が本当に独特。「歌詞って普通こういうもの」というセオリーに全然囚われていないオリジナリティで、驚きます。

2. BEN KWELLER
去年までは何組かいたが、今年は唯一の海外勢。ひとりでアコースティック・ギター弾き語りの曲と、鍵盤とのふたりでプレイする曲を披露。朗々とよく通る声、というのは他にも例があるけど、だけじゃない、なんというか「よく通るメロディ」が、この広い空間を満たしていく、そんなマジカルな時間でした。アコギなんだけど、何度か、間奏なんかでギターにディストーションかけて「ジャーッ!」って歪ませていたのが、さらにそのマジカルさに拍車をかけていました。

3. 矢野顕子
毎年声をかけてもらってたんだけど、なんせ遠いところに住んでいるもので、なかなかスケジュールが合わなくて、今年やっと出られてうれしいです。というようなMCと共に、「ごはんができたよ」「ひとつだけ」などの名曲を惜しげもなく連打。この方に対しては、いつ、どこで、どんな状況で観ても「すげえ……」と絶句しなかったことがないので、なんかもう、特に書くことがありません。ただ「歌ってほんとはすごいもんなんだなあ」とか「ピアノってすごい楽器なんだなあ」とか、そういうバカみたいな感想しか出ませんでした。くるりの「Baby I Love You」もやってくれました。もうすぐ出るくるりのトリビュート・アルバムにも入っています。

4. BO GUMBO 3 feat.ラキタ
BO GUMBOSの、亡くなったどんと以外の3人(ギター&鍵盤:Dr.kYon、ベース:Dr.TOSHこと永井利光、ドラム:岡地曙裕)に、どんとのご子息ラキタが加わったユニット。高校生・大学生の頃、BO GUMBOSもローザ・ルクセンブルグ(どんとと永井がいたバンド)も大好きだったもんで、思わずブログに全曲セットリストを書いてしまいました。基本、ボーカルは永井、ラキタはギター。「ゆ~らゆら祭りの国へ」の1曲のみ、ラキタが歌う。
20年くらい前、BO GUMBOSを京都会館第二ホールで観たことのある元ファンとしては、大変にしみじみするものがありました。ラキタ、初めて観たんだけど、お父さんにもお母さん(ゼルダの小島さちほ)にもとても似ていて、さらにしみじみするものがありました。

5. 奥田民生
この人も、やった曲全部ブログに書きましたが、後半、岸田が出てきて、ふたりで「息子」「ばらの花」をやったのがハイライトでした。でしたが、個人的には、2001年だったっけ、その頃に続けて出したシングル、民生にしては珍しい直球のラブソングと直球の本音ソング、「The STANDARD」と「CUSTOM」を両方やったのが、大変にもう、きました。
それにしてもこの人、ほんっと声でかい。歌、すごい存在感。ってことがよくわかるライブでした。

6.石川さゆり
これもブログに色々書いてしまったけど、10人編成のさゆりバンド(というそうです、後半ご本人がそう紹介しておられました)と共に、1曲目からいきなり「津軽海峡・冬景色」が始まった時の、会場全体の「おおおおおーっ!!」っていうあがりっぷりは、ちょっとすごかった。自分もですが。やっぱりというか想像以上というか、歌、すごい。あと、まるでラジオのような、自分のペースとグルーヴを持ったしゃべりもすごいなあと思った。「津軽海峡~」と「天城越え」は誰もが知っている、つまりそれ以外の曲はみんな知らないわけだけど、歌のすごさにやられて、みんなものすごい集中力で聴き入っていた。ものすごい数の現場を踏み、ものすごい数の修羅場をくぐってきたであろう人ならではの凄みに満ちたステージでした。なお、「天城越え」は、今イチローが試合の時に自らのテーマソングとして使っているそうで、その「イチローバージョン」でした。

7.くるり
フェス前に石川さゆりと食事をして、「何か一緒にやってもらえないですかね」と頼んだら、「じゃあそのために曲を書いてください」と言われ、「おいおいおい」と思ったが、引っ込みつかないので書きました。というような前置きをして石川さゆりを呼び込み、ほんとにこのためだけに書いたという「夜汽車はいつも夢を乗せて」という曲を、一緒に歌う。画面で、歌う石川さゆりがぬかれるたびに、後ろでドラムを叩いているBOBOも映りこむわけで、「これすごい絵だよなあ」とか思いました。
これも昨日も書いたが、「太陽のブルース」で始まり「さよならリグレット」や「三日月」を経由して「魂のゆくえ」で終わる、基本的に最近のアルバムの曲が中心のライブ。
全体に、過去3回中最もしっとりと落ち着いた、そして地に足のついた、すばらしいステージだった。
アンコールで「虹」「宿はなし」をやって、最後に出演者全員を呼び込んで挨拶。石川さゆり、矢野顕子、くるり、奥田民生が横一列に並ぶさまを観て、また「これすごい絵だなあ」と思いました。

終わって思ったこと。去年までは、ウィーンのクラシック系のアーティストや、コーラスグループや、沖縄のアーティスト大工哲弘を呼んでいた京都音博だけど、今年はその役割が、石川さゆりだった、ということだ。つまり、普段ロック・ファンが触れない音楽に触れる機会になる、この場で違う価値観が混じる、いや混じらないかもしれないけど、少なくとも同じ場に存在する。そのことのおもしろさが京都音博の魅力のひとつだとするなら、それ、もしかして、過去3回で最も成功していたかもしれない。おもしろかった、とにかく。で、それをめいっぱいおもしろく受け入れた参加者(自分を含む)にも、ちょっとびっくりした。

なんか、とても、刺激を受けました。この場で終わる刺激じゃなくて、今後の音楽生活に影響を与えそうな刺激でした。(兵庫慎司)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする