ハナレグミ@日本武道館

ハナレグミ、ニュー・アルバム『あいのわ』のリリース・ツアーのファイナルにして、初の武道館ワンマン。『「タカシにはその器はないんじゃないかしら…」と母は言ったのであった。』というタイトルが付いている。つくづく、家族ネタが好きな人だと、いつも思います。
チケットは即日完売、9000人びっしり。急遽、この日に先がけて10月23日ZEPP TOKYOにて、追加公演も行われた。

ステージは、床一面に大小の、そしてさまざまな色や模様の布が敷きつめられていたり、モニターなんかの機材が同じくいろんな布で包んであったり、天井から色とりどりの……なんていうんだあれ、ジャパンのブログを見たら小松は「リボン」って書いてるけど、リボンでいいのかな、えーと、なんかこう、布をロープ状に丸めたみたいなのが釣り下がっていたり、と、店主が自分で内装を手がけた吉祥寺のレゲエ飲み屋みたいな、カラフルかつハンドメイドなことになっている。

今回のツアーのバンドメンバーは、
ギター:石井マサユキ(The Changというすばらしいバンドをやっていた人。その後TICAをやりつつセッションや作曲やプロデュース等で活躍中)
キーボード:皆川真人(YUKIやレミオロメン等あちこちでプレイ中)
ブルース・ハープなど:曽我大穂(他のメンバーは代わってもこの人はずっと在籍。いつも「僕の高校の先輩」と永積に紹介される)
ベース:真船勝博(エゴ・ラッピンやケミストリー等でもプレイ中)
ドラム:楠均(くじらのドラマー。他の活動も多数)

という布陣。で、豪華ゲスト多数。以下、セットリストとゲストたちと、その参加曲です。

1 360
2 あいのわ
3 愛にメロディ
4 音タイム
5 PEOPLE GET READY
6 弾き語りメドレー
7 踊る人たち
8 …がしかしの女
9 あいまいにあまい愛のまにまに
10 Peace Tree
11 マドベーゼ
12 家族の風景
13 大安
14 レター
15 明日天気になれ

アンコール
16 光と影
17 うららかSUN
18 あいのこども

ゲスト
スカパラホーンズ(NARGO、北原雅彦、GAMOU):2,3,14
マダムギター:8
BOSE(スチャダラパー):9,10
AFRA:10
徳澤青弦カルテット(4人編成のストリングス・チーム):16
スペースドーターズ(4人のコーラス):16
茂木欣一(東京スカパラダイスオーケストラ):16


という人たちが、曲ごとに入れ替わりたち替わり、加わったり去ったりする構成。
BOSEが、“あいまいに~”にのっけて“ブギーバック”を披露して超盛り上がったのと、16曲目は大人数で華やかにプレイされたのを除けば、「ゲストを入れて豪華にします」というよりも、「その曲でアルバムに参加してもらった人をそのまま呼びます」みたいな、音楽的な理由によるゲストの加わり方だった、と言えます。

だからなのか、このようにゲストが多かったり、ステージのデザインが(というか色彩が)派手だったり、客席が超満員だったり、永積本人が客席を見渡しながら「びっくり! 今日、9000人だって、すごいなー」と感嘆の声をもらしたり、アンコールではステージ両脇上方に星空が現れたりしたにもかかわらず、なんというか、全体に、特別な一夜である、という感じがしなかった。
過去の、小金井の公園や、お台場の潮風公園や、代々木第二体育館でやった時の方が、スペシャルな感じがあったかもしれない。いつものライブを、いつものように、いつもな感じでやりました。今日は、全体にそういう印象だった。

で、それがなんだか、すごくよかったのだった。というか、本来ハナレグミの歌自体が、「こういう規模でやるのがあたりまえ」なスケールの歌だということが、バレてしまっていた。本人はそんなこと思っていないだろうけど。あと、お母さんはもっと思っていないだろうけど。
それは、1対何千、とか1対何万、に向いている、という感じではない。基本的には1対1だ、この人の歌は。ただ、その1対1を、同時に何千何万という数で実現させるような、そんな届き方をするのだ。そういえば、画面がなくて、僕の席は2Fスタンドだったんだけど、「遠いなあ」「観づらいなあ」と感じたことは、一度もなかった。終始、すぐそばで、目の前で歌ってくれているように感じる2時間20分だった。

最近よく思うんだけど、しゃべっている時と、歌っている時のトーンに差がない人が、つまりしゃべるように歌う人が、ボーカリストとして一番強いんじゃないか。ラップってことではありません。日常であんなしゃべりかたをする人はいないので。
じゃなくて、歌を聴いていると、まるで話しかけられているような感覚に陥る、そういう歌を歌う人が、一番すごいのではないかと。

って、嘘です。そう簡単には言い切れません。清志郎だって桑田だって、しゃべる時と歌う時の声、違うし。ただ、個人的に最近、UAの歌と永積崇の歌を聴いている時に、そう思うことがよくある、という話です。あと井上陽水もだ。
「じゃあしゃべればいいじゃん」ではない。そういう人って、逆にすさまじく歌の技術が高い。というか、高くないと、そういうふうに届けられないのかもしれない。
というようなことを、ぐるぐる考えながら観ていました。

アルバムを聴いた人はご存知だと思うが、アンコールでにぎやかにプレイされた“光と影”という曲は、「光」と「影」のうち、「光」に重きを置いていない曲だ。「闇のむこうの 光を見にいこう」というフレーズがあるが、「光の先の 闇を見にいこう」というフレーズもある。この人の音楽を信用できるとこって、こういうとこなんだよなあ、と、この日聴きながら、改めて思ったりもした。(兵庫慎司)
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