「2バンドでがっつりツアーを回るっていうのは、長年やってなかったことなので。馴れ合いにならず、ケンカしながら回っていきたいと思います!」(ストレイテナー・ホリエアツシ) 「今日はどうもありがとう! 『BRAIN ECLIPSE TOUR』、いってきます! 人生でいちばん楽しい2ヵ月が始まろうとしています!」(the HIATUS・細美武士)……といったMCだけでも、両バンドの気合いのほどが窺えることだろう。そう、今の日本のロックの中でも最高峰のスケールとダイナミズムと輝度と熱量を誇る2バンド、ストレイテナーとthe HIATUSによるガチンコ対バン・ツアー、いよいよキック・オフ! それこそ武道館あたりで対バンしててもおかしくない顔合わせの2組が、キャパ1300程度のここ横浜BLITZを皮切りに、12月12日の新木場スタジオコーストまでライブハウス・ツアーを回る!とあって、その決定的瞬間を目撃しようと集まった超満員のオーディエンスの熱気は尋常ではない。
19:00ほぼオンタイムで先攻・ストレイテナーが登場。そして……1発目のサウンドから、銀色の光がごうごうと音をたてて渦を巻いていくような、あるいは星の粒子を身体いっぱいに浴びながら1300人一丸となって光速宇宙旅行をしているような、鮮烈なサウンドスケープが出現! ホリエ/大山/ひなっち/シンペイそれぞれの鳴らす音が、いきなり楽器音を超えた波動として飛び込んでくる。最初は圧倒されたようにステージを凝視していたオーディエンスが、曲が終わると我に返ったように大歓声! 「ライヴをやるのは2ヵ月半ぶりぐらいなんですが……」とホリエはMCでも語っていたが、そのブランクと一緒にこの世の濁りや澱みまでごっそり一掃しようとするかのように、4人のアンサンブルは1音ごとにその眩しさと逞しさを増していく。
テナーが「4人バンド」として生まれ変わって初めてのツアー『Hello Miss Weekend』からちょうど1年になるが、今年2月のアルバム『Nexus』や最新シングルの曲はもちろん、『Immortal』以前のアルバム曲、そして“SIX DAY WONDER”や“KILLER TUNE[Natural Born Killer Tune Mix]”といったライヴの軸を成してきた楽曲まで1つ1つ、1年にわたってアレンジ/アンサンブルを再検証・再構築してきた彼ら4人の音の切れ味はすごい。さらに、「新曲やります!」といって披露した、ピアノなアルペジオとともにロックンロール激流下りをするようなナンバーの清冽な快感! 「2ヵ月半ぶりで緊張したよね? 自信あったけど(笑)。気持ちよくなってます」と息を弾ませながら話すホリエも満足そうだ。約1時間の渾身のアクトに、フロアも魂の限りを尽くした歓声と拳で応えている。
約30分の転換を経て、後攻・the HIATUS! テナーとは対照的に、いきなりダークなサウンドのカオスで会場を満たしてみせると一転、そこから太陽めがけて超音速急上昇するかのように5人のアンサンブルが炸裂! 「ツアー初日へようこそ! とりあえず、今日は俺たちは自由だ!」「考えるなよ! 何も考えるな!」とエモーション全開の細美の絶叫に、ここまで昇り続けてきた会場の熱気がさらに限界オーバーなレベルまで高まっていく。アルバム『Trash We'd Love』の楽曲群に加え、レディへもポスト・ロックも00年代のその先へ向けて更新していくような“Antibiotic”、そして堀江博久のシンセ・ストリングスとともに真っ白にスパークしていくような“Insomnia”など、まさに今日発売になったばかりのEPの新曲も披露。ロックすら超越して全方位的に進化する音と衝動を100%見せつけていた。
それにしても、この日の細美のテンションはすごい。「前のツアーが終わって1ヵ月ライヴなかった! ずっと灰色だった! 今日、久しぶりに色がある感じです」とフロアに呼びかけ、エネルギーの最後の1滴まで振り絞るように絶唱し、髪を振り乱し、ギターを一刀両断するような鋭いストロークをかます細美。ますます獰猛なパワーを獲得しつつあるmasasucks/ウエノ/堀江/一瀬のプレイをがっちり受け止めてバンドの怒濤のダイナミクスとしてまとめあげていく、壮絶なまでにタフな佇まい。「俺たちが音楽をやる理由はすげえシンプルで。お前らがちょっとでも幸せになればいいと思ってるんで。それができなきゃダメだと思ってるし。そのためにテナーも俺たちも音出してるんで」……このツアーの核心を言い当てたような細美の言葉に、感極まったような歓声が広がっていった。最高だ。
まだまだ公演が続くので曲順などの詳細は割愛するが、ロック史に深々と刻まれる「名勝負」ツアーであることだけは間違いない。次は11月20日、Zepp Fukuoka公演!(高橋智樹)