ジェット @ 新木場STUDIO COAST

ジェット @ 新木場STUDIO COAST
ジェット @ 新木場STUDIO COAST - pic by Yuki Kuroyanagipic by Yuki Kuroyanagi
昨年のアルバム『シャカ・ロック』でロックンロール回帰どころかいきなりハイパーな新次元ハード・ロックの扉をどかーんと開放してみせたオーストラリアの精鋭=ジェット。昨年7月のフジロック以来の来日となった今回のジャパン・ツアーは、1月5日=東京・新木場スタジオコースト、7日=名古屋・CLUB DIAMOND HALL、8日=大阪・なんばHATCHとただでさえハードな日程にさらに新木場スタジオコースト追加公演が挿入された4日間連投の強行軍! だが、そんな状況すら笑っちゃうくらいの爆裂ロックのエネルギーに変えてしまうあたり、さすがジェットとしか言いようがない。

というわけで、結果的に新木場スタジオコースト2Daysとなった東京公演の2日目にして追加公演のこの日。まだ名古屋/大阪があるので曲順の詳細には触れないが、基本的には“ビート・オン・リピート”“セヴンティーン”はじめ『シャカ・ロック』の楽曲を中心にした強気のセット。本編/アンコール合わせて前日より2曲ほど演奏曲こそ少なかったものの、その分だけ逆にジェットの「今」の爆発力により焦点を絞った内容だったと言える。そして、前日の公演との最も大きな違いは、ジェット新章の狼煙的ナンバー“K.I.A”! 極限まで吟味されたニックのギター・ストローク1つにクリスのタム使いに……といったプレイの1つ1つをあたかもすぐそこで鳴ってるようにリアルに伝えるPAのサウンド(新木場スタジオコーストで観たライヴでは最上級の出音だった!)と相俟って、高揚するよりも先に震えがきた。

それにしても。ニックの世界屈指のハード・ロック爆唱ぶりはもちろんだが、今のジェットに圧倒的な推進力を与えているのはやはりドラムのクリスだ。とにかくキック1つ、スネアの1ショットの迫力が段違いな上に、単純な8ビートがほとんどないくらいに変幻自在なオカズが乱れ飛ぶ。単純に「重戦車」と呼ぶにはしなやかで知的すぎるし、「阿修羅」と呼ぶにはダイレクト&ダイナミックすぎる。そんなプレイが、ニックの内省の産物にしてビートルズ的な名曲探究アルバムだった『シャイン・オン』に豊潤さを与えていたのも確かだが、やはりその本領を発揮できるのはこの、『シャカ・ロック』の疾走ロックンロールの世界でこそ、だ。それこそギターだけでなくリズムにまでジェット・エンジンを搭載したバンドの音が、スタジオコーストのオーディエンスを揺さぶらないはずがない。もう、最高だ。

終盤の必殺曲“アー・ユー・ゴナ・ビー・マイ・ガール?”も、「みんなが盛り上がるからとりあえずセットに盛り込んでおく」のではなく、世界最大級の破壊力を持つ自分たちの武器として再定義した上で叩きつけているようなポジティヴなパワーにあふれていたし、オーディエンスをステージに上げて踊りまくらせながらコースト狭しと爆音リフをぶん回す図は爽快以外の何物でもなかった。“~マイ・ガール?”で弾けすぎたのか、さすがに連戦の疲れからか、その後はニックの声が多少つらそうだったが、それでもクライマックスへ向けて怒濤の進撃を見せるには十分だった。

そして。今回のジャパン・ツアーにはサポート・アクトとして、UKマンチェスターのロックンロール忘れ形見3ピース=ツイステッド・ウィールが参戦している。70年代ロックンロールをカラッカラに乾燥させてガソリンぶっかけて火ぃつけたというか、新しい要素は何もないはずなのにそれが21世紀の音として響いてしまうというか、とにかくロック・バンドとしてのマジックそのものみたいなサウンドでぐんぐんかっ飛ばしていく。ロデオ・ビートもダムド風8ピート・パンクも「乗りこなす」というにはぶっ壊れすぎなグルーヴで体現しているのは、オカズのたびに勢いにまかせて突っ込んだり走ったりするドラム=アダムのせいだろう。ジョニーのささくれた歌とギター&アダムのはっちゃけドラムをがっつり背負って、生真面目そうなベース=リックがひとり単車をぶいぶい突っ走らせていくような3人の構図が、後のジェットとは対称的で可笑しかった。

そんな2組のジャパン・ツアーはなおも続く。今日は名古屋に上陸!(高橋智樹)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする