ザ・ホラーズ @ 渋谷duo Music Exchange

ザ・ホラーズ @ 渋谷duo Music Exchange
ザ・ホラーズ @ 渋谷duo Music Exchange
ザ・ホラーズ @ 渋谷duo Music Exchange
ザ・ホラーズ @ 渋谷duo Music Exchange - pic by Mitch Ikedapic by Mitch Ikeda
それこそカルチャー・クラブとヴェルヴェット・アンダーグラウンドを最短距離で結んだまんま暗黒と轟音と電子音の彼方へ墜ちていくような、驚愕の音楽体験。duo超満員のオーディエンスの中に潜む背徳のエネルギーを心の奥底からずりずりと引きずり出してスパークさせ、「高揚感」とか「歓喜」とはまったく違うパワーでもって沸点を軽々と超えていく5人の、ホラーどころかカオスそのものの佇まい……UKシーンの異端児にして怪童=ザ・ホラーズの、サマーソニック09以来となる来日公演は、彼らの末恐ろしいほどの開眼ぶりをまざまざと見せつけるに十分すぎるアクトだった。

暗転したステージにジョシュア(G)、トム(Syn)、リース(B)、ジョセフ(Dr)、そして身長2m近いファリス(Vo)が勢揃いし、十分広いはずのduoのステージが下北沢CLUB Queかと錯覚するくらいに観ているこっちの視界を埋め尽くす。そして、昨年5月の2ndアルバム『プライマリー・カラーズ』のオープニング・ナンバー“ミラーズ・イメージ”で口火を切ると、“スリー・ディケイズ”の轟々と鳴り渡るギター&シンセが会場の空気を赤黒い焦燥色に塗り替え、軽快なはずの“プライマリー・カラーズ”のビートがその不穏さをさらに煽るように響き……と、開けてはいけない扉が次々に開いていくような悦楽感が全身を支配する。そして、何かを振り払うようにマイク・スタンドを振り回し、恐怖に追い立てられたデヴィッド・ボウイのような調子っぱずれの歌い回しで、力の限りの絶唱、いや慟哭を響かせていくファリスの姿は、戦慄の表現としてのロックそのもの、としか言いようがなかった。

その後も“アイ・キャント・コントロール・マイセルフ”や“ニュー・アイス・エイジ”、“アイ・オンリー・シンク・オブ・ユー”など2ndの世界観で本編を押し切り、ゴス・エレクトロ・グランジ的な1stのイメージをきれいに刷新してみせた彼ら。とはいえ、アンコールではスーサイド“ゴースト・ライダー”の爆裂カバーに加え、もちろん1stの大人気曲“カウント・イン・ファイヴス”“シーナ・イズ・ア・パラサイト”も披露していたし(1st当時の、トムがベース、リースがSynを担当する編成も!)、そこではduo全体が呪術が解けたような高揚感でもって弾けまくっていた……のだが。本編で見せた彼らの堂々たる暗黒配達人っぷりは、あまりに鮮烈すぎた。というか、00年代ロックがポップやダンスと密約を結んだ結果として置き去りにしてきた「歓喜」や「熱狂」以外の不穏でどろどろした要素を丹念にかき集め、見事に結晶化したホラーズの在り方が、ロマンチックなくらいの切実さに満ちて胸に響く。最高だ。

ちなみにこの日、そんなホラーズに最高のバトンを渡したのが、オープニング・アクト=Optrumの2人。蛍光灯を改造した楽器(?)「Optron」(古い蛍光灯がブィーンって音を立てる、あのノイズを極限まで増幅してエフェクトかけてゴリゴリにしたもの、と思っていただければ)を駆使する伊東篤宏、そしてソリッドなハードコア・ドラマー=進揚一郎の2人から成る「インプロヴァイズド・エクストリーム・オプチカル・コア・ユニット」。メロディの欠片も存在しない轟音ノイズと放電と閃光とリズムの中から異世界を描き出す2人の混沌開拓者。その音圧と明滅のあまりに強烈なブレインストーミング感に観ていてくらくらしたが、観終わった今、不思議ともう1回あのくらくらを味わいたくて仕方がない。(高橋智樹)
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