a flood of circle@恵比寿リキッドルーム

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「僕ら今23歳なんですけど、短い人生の中でも2009年は激動の一年で。僕は『PARADOX PARADE』というアルバムを出せたことを、一生忘れないと思う」。フロントマンの佐々木はそんなふうに話していたが、確かに「激動の一年」というフレーズは、あの1年間を乗り越えたa flood of circle(以下afoc)にこそ相応しい。デビュー・フル・アルバムのリリースとツアー、ギタリストの突然の失踪と、残されたメンバーが決断しなければならなかった彼の脱退。それをバネにするように多くのイベントやフェス出演、自主企画イベントの開催をこなし、デビュー・アルバムから僅か半年で『PARADOX PARADE』の制作/リリースまでやってのけた。正直、想像も及ばないような過酷さである。彼らのような若いバンドでなくとも、途中で活動が止まってしまっても仕方がないほどであるはずだ。だが彼らは、この新作ツアーのファイナルに辿り着いた。そして更に特筆すべきは、今回のステージがまるで「激動の一年」の感慨や感傷すらも追い越すような、凄まじくスリリングで熱い内容だったということである。

サポート・ギタリストとして苦難の時期を共にしてきた奥村大(wash?)のリフが掻き鳴らされ、“Forest Walker”の重厚な、迫力のバンド・サウンドを導き出してステージは幕を開けた。序盤は『PARADOX PARADE』の楽曲群を立て続けに、ほとんどメドレーのようにして放つ。エモやヘヴィ・ロックまでも食い散らかしつつ突進するような、異様なバイタリティのロックンロールに乗せて、“博士の異常な愛情”、或いは“Paradox”といった楽曲のアクロバティックな音の交錯を、佐々木の声と歌詞が縫い合わせる。「おはようございます! a flood of circleです! ようこそTOUR“PARADOX PARADE”へ!」と、字面ではなんて事ないが吐き出されたその言葉自体が牙を剥き出しにして噛み付いてくるような、佐々木の声である。

「今日は3月5日です。アルバムは冬に出したけど、春がやってきました」。ゆったりしたイントロから“春の嵐”の疾走が始まった。穏やかではないけれど南からの暖かい空気が流れ込むような、今回のライブにおいてもここでムードが変わった印象があった。冬を越えた今のafocのムードは今まさに、こういう感じなのかも知れない。続く“水の泡”の、儚くも美しい瞬間のドラマを永遠に封じ込めようとする世界観は、僕にとっては今回のステージのハイライトであった。この辺りを折り返し地点にして、後半戦はアッパーな楽曲群が次々に繰り出されてゆく。「まだまだいけますかトーキョー! バッファローの足音が……聞こえてくるぜ?」とスタートした“Buffalo Dance”では、奥村がネイティブ・アメリカンのような雄叫びを上げる。なんかいろいろ貢献度高いな。彼に倣って、オーディエンスも踊りながら雄叫びを上げるのだった。「人生で二回目の東京ワンマンなんですけど、こんな大袈裟なの(バックドロップ)も作ったし、タオルも作ったし、ツアー楽しいですよ。みんなもバンドやった方がいいんじゃない?」と佐々木。しかしそれは、バンドマンなら誰でも得られるわけではない経験を経てきたからこその、自信に満ちた言葉とも取れた。

afocは実に高性能なロック・バンドである。彼らが伝統的なR&Bをプレイするバンドだとは、誰も思っていないだろう。でも「僕らはブルース・バンドだと思ってやってきました」と言う。いいのだ。若いバンドが上の年代の人々に認められるためにブルースを、ロックを鳴らす必要は無い。仲間を探し、そして繋がるために、彼らにとってのブルースが、ロックが、鳴ればいいのだ。佐々木が曲にダイブするときに発するあの「イヤッ!!」という掛け声が、ロック・ファンにとっての何かしらのスイッチであれば、それでいい。本編ラストの、バンド・メンバー3人のみでプレイされる“月に吠える”では、ドラマーの渡邊が友人にスペインで買ってきてもらったというカホンを叩く。「アコースティックが似合わないバンドですけど」と佐々木は言っていたが、彼が爪弾くアコギのフレーズはとても良かった。

「皆さんは、悲しいことをすぐに忘れられる質ですか? 僕は楽しいことばかり写真に残すくせに悲しいことばかり思い出す質なんですけど、皆さんはどうなのかと思って」。アンコールで披露された“Flashlight&Flashback”の前に、佐々木が残したそんな言葉も印象的であった。消えない痛みを引き摺って転がり続けることを、彼はブルースと呼んでいるのではないだろうか。そのブルースなら、僕も知っている。きっとたくさんの人が、そんなブルースを知っているはずだ。(小池宏和)


セットリスト
1.Forest Walker
2.博士の異常な愛情
3.Ghost
4.Paradox
5.Thunderbolt
6.シーガル
7.春の嵐
8.水の泡
9.SWIMMING SONG
10.噂の火
11.Buffalo Dance
12.泥水のメロディー
13.プシケ
14.ロシナンテ
15.世界は君のもの
16.月に吠える

アンコール1
17.Flashlight&Flashback
18.象のブルース

アンコール2
19.ブラックバード
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