TOTALFAT @ 下北沢シェルター (2公演)

TOTALFATの『全部見せます10周年!!4本見るまで帰れま10!!!』、2日目のレポートをお届けします。今回のワンマンがどういう趣旨のものなのかについては、前日に行われたver.1およびver.2の、兵庫さんによるレポート(http://ro69.jp/live/detail/33144)に詳しく書かれておりますので、その続編としてお読み頂ければと思います。この2日目は、まずver.3として2008年のアルバム『ALL THE DREAMER,LIGHT THE DREAM』の楽曲に絞られたステージが行われる。Shun(Vo./B.)が「おしゃれ激戦区」と呼んでいた下北沢だが、ここシェルターのチケットも当然、大激戦の末4公演すべてがソールド・アウト。ぎっちりと過密状態のフロアである。

ステージの幕が開くと同時に、Kuboty(G./Cho.)のスラッシーなギター・フレーズが轟き、Shunのスクリームが上がる。“I’m not”だ。後になって「一曲目にメタルをやるというところにね、本気、を感じて頂ければ」とか言っていたが、良い意味で後先考えない、攻めのオープニングだ。そしてメロディアスなシンガロング・ナンバーが畳み掛けられてゆくわけだけれども、Kubotyのメタル魂炸裂ギターがグイグイ引っ張ってゆくのがいい。パンクとメタルの垣根を踏み越えてゆくような、楽曲に絶妙にフィットした独特のギター・ワークは、TOTALFATの歴史が育んだ個性豊かな財産だろう。

「俺は、TOTALFATの歌詞がどんなふうに聴かれて、どう解釈されても構わないと思っていて。俺たちがいろいろなものに刺激を受けて、それをライブでわーっと吐き出すから、みんなはそれを好きなように受け止めて欲しいんだ。そうすることで俺たちの歌は初めて、みんなの歌になるんだと思う」。Shunがそう語る。それはロックが、ポップ・ソングが最も大きな力を発揮するときの、極めて理想的なコミュニケーションの形だ。Shunの説明も見事だが、TOTALFATは自らのキャリアの中で、それを体当たりで学び取り、体現している気がする。理想が空論になっていない感じ。ステージが始まると同時に、いきなり理想の形がどん、と目の前に置かれる感じがするのだ。

ミディアム・テンポで披露される、もはやパンクでもメタルでもダンス・ロックでもない珠玉の名バラード“The Last Moment”は、間違いなくこのver.3におけるハイライトであった。Jose(Vo./G.)の情感が込められたハイトーン・ボイスも冴える。パーティー・バンドには留まらない、自分たちの使える手段をすべて使って想いを届けようとするTOTALFATの足跡が、そこにはあった。一曲一曲を噛み締めながら披露してゆくようなステージは意外と言えば意外だけれども、“The Last Moment”を歌い終えて照れるShunとJoseの脇で、Kubotyが他人事のように「良かったよー」と告げてしまうくらい、それは素晴らしかった。まあ、その湿ったムードで終わるわけがなくて、ラストは「まだまだ足んねえよー!」と“DA NA NA”の連発披露で爆発したわけだけれども、これはちょっと照れ隠しのようにも見て取れたのだった。

1.I'm Not
2.Balance
3.Light a Fire
4.Lonesome Young,Worst Night?
5.Tonight
6.The Day While Been Greenhorn
7.It's Not Just Like Love Comeday
8.The Last Moment
9.Stating New Life
10.DA NA NA


21時にver.4がスタートするまでの空き時間は、近くのファーストキッチンでポテトとコーヒーをちびちびやりつつ、レポート用のメモを書いて時間を潰す。今日のシェルターはさすがに、ライブを観ながらメモを取れるような状況じゃないのだ。店内には同じようにver.3~ver.4の待ち時間を過ごすキッズも多くいたが、みんなぐしょぐしょのTシャツは着替えているのだろうか。風邪などひいてくれるなよ。

というわけでいよいよ『For Whom The ROCK ROLLS』縛り、ver.4の幕開けである。「ファイナルへようこそー!」とShunが叫んでいたが、メンバーやスタッフや2日間参加のオーディエンスからしてみれば、ツアーのような感覚なのだろう。あ、前日のステージに登場したかつてのTOTALFATのギタリストYasushiは、この日のステージもフロア後方から見守っていた。「ラストスパートいくぞシモキター!」というShunの言葉を合図にするように、いきなり大きなシンガロングが弾ける。“Just for What”ではまるで躁状態の阿修羅の如きBuntaの凄まじいビートが繰り出されていった。Ver.3とは打って変わって、ひたすら右肩上がりの上昇線を描いてゆくver.4である。

Shun:「さっき袖で待ってるときに、一口ゲロが3回ぐらい出ました。でもつらい訳じゃなくて、楽し過ぎて胃がヤバい」
Jose:「楽しゲロ?(笑)」
Shun:「楽しゲロ(笑)。TG。TG禁止(笑)」

満場のオーディエンスが小気味良くハンド・クラップを決める“Life like Movies”、Kubotyが足元のモニターに乗り上がって流麗なギター・ソロを弾きまくる“Driving Force”、そしてハイパーなダンス・ロック“I Wanna Make You Feel Alright”と、この辺りの楽曲は昨年以降ツアーなどでプレイされていたこともあって、バンドもオーディエンスも鉄壁の盛り上がりを見せる。それでも時折は10周年が思い返されるらしく、Shunは「いろんなことがあって。ケンカも2万5千回ぐらいしたし」と、メンバーとの出会いについて語り始めた。マクドナルドの店内でJoseとギターやベースを鳴らして怒られた、とか。「俺たちパンク好きだったけど、そこは大人しく楽器をしまって」。そして一方Joseは、こんなことを語っていた。「本当にいろんな人に支えてもらって、スタッフも多くなって一台の車じゃ乗り切れなくなったし。シェルターさんなんか凄いんだよ、こんな無茶な企画、快くやってくれてさあ。15年やってきて初めてだって、こんなジャニーズみたいなことやるバンド。今日は俺たちがおめでとうを言われる側かも知れないけど、ありがとうを言わなければいけないのは俺たちの方です。本当にどうもありがとう」。

辿り着いたのは『For Whom The ROCK ROLLS』のオープニング・ナンバー、“Good Fight & Promise You”。エネルギッシュで、そして美しい光景だ。熱気も湿度もサウンドの振動もリアルに肌に伝わってくるのに、何かドキュメンタリー・ドラマを観ているような、そういう感覚に陥る一夜。“Life like Movies”がプレイされ始めるとき、Shunが「俺たちの人生は映画よりドラマチックだ!」と叫んでいたけれども、まさにそれを垣間みるようなステージなのであった。「最後ぐらいアンコールやろっか」と披露されたのは、来るニュー・アルバム収録の、カリフォルニアにいるShunの友人に捧げられた一曲。そしてメンバー全員で、普段はライブ終了まで禁止されているという酒、スパークリング・ワインのボトルを回し飲みで空けてしまった。おめでとう。TOTALFATの10周年に、そして11年目からもまた彼らと共に歩んでゆくすべての人々に、乾杯。(小池宏和)

1.Highway Part2
2.Just for What
3.The Kidnap Show
4.Anthem of The Bedroom
5.Life Like Movies
6.Driving Force
7.I Wanna Make You Feel Alright
8.Story Teller
9.Dear My Empire
10.Good Fight & Promise You
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