話を戻す。そんなわけなので、アジカンやストレイテナーの時には感じなかった空気が、客席にあった。いつもと違う。バンドTシャツやフェスTシャツを着て、首まわりにタオルをまいた、いわゆる「完全装備」の子が、普段より少ない。代わりに、ちょっと大人っぽい、落ち着いた格好の人が多い気がした。で、モッシュの代わりに、曲に合わせての手拍子が多かった気もした。9mmに「ホールじゃなくてライブハウスを選んで行く」客層がいるのは想像範囲だったけど、「ホールなら来る」という客層もいる、という事実は、ちょっと新鮮でした。
ただ、バンドは、いつものままだった。19:09頃、客電が落ち、おなじみの、ズタズタにひずみすぎてて曲の輪郭がわからないSEが鳴り響き、4人が登場し、ジャーン! と音を鳴らしたと思ったら滝がすっ転び、「まだ1曲目に入ってもいないのに……」という思いを超満員のホール全員の胸に去来させたオープニングから、卓郎がマイクをはずして生声で「ホール、マイクなしでもしゃべれんだよね、これね!」と叫んだアンコールまで含めて、笑ってしまうほど、いつものままだった。
「なんでそんなんでギターとベースからちゃんと音を出せる? なんで??」と襟首つかんで問いただしたくなる、例の「ギターやベースを弾きながら暴れる時はこういう動き」というセオリーを完全に無視した滝&中村和彦のアクション。ライブを観るたびに「叩きながらスティックをクルッと回す回数」が増加傾向にある気がしてならない、かみじょうちひろのドラム。そして、あまりにぶっとんでいるがため天高く散り散りバラバラに飛んでいってしまっても不思議はないそれぞれの音を、ぐいっとつかまえて地べたに押さえつけ、楽曲としての形に持っていく機能をはたす卓郎の歌。
どれもいつも通りだ。どれもいつも通りだけど、ただ、異様にレベルが高い。音響がいいせいかもしれないが……えー、なんていうんでしょう、この4人の出す爆音のどれもが、美しいフォルムを持っている感じなのだ。「爆発させっぱなし」「出しっぱなし」「鳴らしっぱなし」みたいな形じゃなくて、「この爆音は、このタイミングで、こういう音色で(※「ねいろ」ではなく「おんしょく」です)、こんな形で空中に飛んでいくように鳴らされなければならない」というプレイヤーの意志が、音のすみずみにまで行き届いているような、そんな、完璧で緻密で精密な感じなのです。
エイフェックス・ツインのノイズって、すごく気持ちいいじゃないですか。音の形がきれいじゃないですか。似ても似つかないけど、それをちょっと思い出した。
というふうにですね。9mmって、ロック・バンドじゃないんじゃないか、と思うことがある。いや、マインドとしてはロック以外の何ものでもないんだけど、そもそもの音作りの発想が、「ロックってこういうもの」「ギターの音ってこういう感じ」という既成概念を超えている気がする。曲や詞の話ではありません。曲も詞もロックの王道だけど、それを形にする楽器の音が、そのロックの常識の範囲に、囚われていない気がする。
特に、滝のギター。彼の足元にある、あの無数のエフェクター、「自分が好きだったギタリストに追いつくために」とか、そういう目的で並べられていないと思う。「ジャンボジェットが火災で大爆発する音」とか、「古いビルをダイナマイトで破壊した時、コンクリが一瞬で瓦礫になる音」とか、そういうものと張り合うために、並べられているんだと思います、私は。
本編とアンコールを合わせて23曲。で、始まったのが19:09で、終わったのが20:45。ほんっとに、濃密な時間でした。堪能しました。(兵庫慎司)
1 Lovecall From The World
2 光の雨が降る夜に
3 Invitaton
4 Cold Edge
5 Psychopolis
6 Hide&Seek
7 3031
8 Battle March
9 どうにも止まらない
10 Trigger
11 interceptor
12 命のゼンマイ
13 Butterfly Effect
14 Finder
15 キャンドルの灯を
16 Living Dying Message
17 Black Market Blues
18 marvelous
19 sector
20 The Revolutionary
アンコールあり