オレスカバンド@代官山UNIT

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2010年のオレスカバンドは、走っている。2月から行われていた全国行脚ツアー18公演を経て、4月には久々のシングルとなる『自転車』をTVアニメのタイアップ付きでリリース。そして今回の東名阪ワンマン・ツアー『ORESKABAND presents ei-ei-Oh!!! TOUR’10』である。で、これはタイミングとしては『自転車』のリリース・ツアーに当たるのかも知れないが、もうそれだけには留まらない、ある意味ではオレスカが「生まれ変わった」祝祭感すら受け止めさせる、素晴らしい突き抜けぶりを見せつけるものになった。東京・代官山でのツアー・ファイナルの模様をお伝えしたい。華やかなバンドのアレンジに、いかすの歌メロがくっきりと浮かび上がるオープニング。“Bouquet”のロック色の強いサウンドの中で切り込み隊長・サキのトランペットがオーディエンスを煽り立て、“爪先”のカラフルなシンガロングと印象的なハンド・クラップへと連なってゆく。観る度に強靭さを増す、彼女たちの年齢からは想像も及ばないような安定感のあるバンド・アンサンブルをステージ序盤から聴かせていた。「事件は会議室で起こってるんじゃない! 現場で起こってるんだ! 現場でいろいろ起こそうやー!」とリーダー改めハヤミ(tb.)が脳天を貫くような甲高い声で叫びを上げ、ここでニュー・シングル曲“自転車”が投下される。いかすのギター弾き語りで幕を開けるドラマティックなナンバーは、一度トチって仕切り直しとなるのだが、これがもう鮮やかに情景を喚起する、まさに新境地のポップ・ナンバーとして届けられていた。足の筋肉が緊張して力強くペダルを踏み込み、景色が背後にどんどん流れてゆくさまがありありと伝わってくる、生命の躍動感がそのまま歌として刻み付けられた名曲だ。そして続けざまに放たれたのはタイトル未定の新曲。《ハロー ハロー 悲しみから始めよう》(歌詞は筆者聞き取り)というフレーズが印象的な、力強いナンバーであった。入り組んだ感情を抱えながらも強い能動性が歌い込まれているという点では、“自転車”と対になるナンバーと言えるかも知れない。ポップなスカ・チューンを量産していたデビュー時期から、ワープト・ツアーと連動するように生み出された『What a Wonderful World』シリーズでのソウルやファンク、スウィングと表現の幅を広げていったオレスカ作品は、ここに来てネクスト・レベルのポップを捕まえた「歌」を核とする作風に劇的な進化を遂げている。曲調なんかは面白ければ何だっていいし、何でも出来る。それよりもエモーショナルでアクティブな、自分たちらしい歌としてのオレスカバンドを描き出すんだ、という強い意志が感じられるのだ。“ヘルプ!”や“ロング・アンド・ワインディング・ロード”がビートルズであるように、“ホワッツ・ゴーイン・オン”がマーヴィン・ゲイで“ノー・ウーマン、ノー・クライ”がボブ・マーリーであるように、“自転車”やこの新曲は、歌そのものがオレスカバンドなのである。「ワープト・ツアーでいろんなバンドと出会って、帰ってきてから、自分たちはなんでバンドやってんのやろ、とか、なんでスカが好きなんやろ、とか、いろいろ内に篭って考えてしまって。スタジオとかでたくさん曲を作ったりはしたんだけど、あまりライブはやってなくって。それこそ頭の中で会議ばっかりしてたんです。それが2010年、全国をツアーして回って、お客さんたちからいろんなものを受け取って。ああ、こんな簡単なことを見失ってた、って。うちら6人でバンドやって、楽しみたいだけやねん。元気になってまた明日頑張ろうって、それだけでええやん!」ハヤミはそう言っていた。それだけタフな、思い悩まされる時期だったのだろう。でも決して、その時期というのは無駄な時間ではなかったのだと思う。さまざまな思いを抱えながらそれでも意を決して前へ歩を進めるという姿勢が“自転車”や先の新曲に表れているのは明らかだし、リスナーは、オーディエンスは、そんなオレスカの姿勢に応えて声を上げ、跳ね回り、笑っているのだ。“ロコモーション”のカバーではたえさん(Dr.)と、とみ(B./Vo.)のグルーヴィーなボトムが大活躍し、他のメンバーは突き抜けるような笑顔でオーディエンスのシンガロングを促している。ライブが、バンドをやるということの喜びが、ひしひしと伝わってくる光景だった。もりこのテナー・サックスを始めソウルフルなホーン・アレンジがいかすの歌を支えていた“believe”ののちには、オーセンティックなスカの曲調で描き出されるもうひとつの新曲も披露される。これも切ない歌メロが際立つ、美しいナンバーになっていた。「彼氏にフラれたとかさ、誰かが死んじゃったとかさ、変えようのない事実ってあるけれども。そんなときこそ、エイエイオー! でしょ」。ツアー・タイトルに引っ掛けてハヤミがそんなメッセージを送る。これ、今のオレスカのムードを的確に捉えた、秀逸なフレーズだ。メンバーが目紛しく立ち位置を変えながら進められたステージから、キラー・チューン“PAPAYA”が沸騰させるフロアに無数のラムネがバラ撒かれている。生まれ変わった、しかしオレスカでしかあり得ないスペシャルな祝祭感に、会場内が満たされた瞬間だった。笑顔まみれのメンバーがステージを後にすると、アンコールの催促の代わりとばかりに、フロアからは「エイエイオー!」の声が自然に沸き上がっていた。来月、オレスカバンドはROCK IN JAPAN 2010に出演し、最終日となる8月8日、Seaside Stageの大トリを務める予定になっている。(小池宏和)
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