日本マドンナ@新宿紅布

日本マドンナ@新宿紅布
日本マドンナ@新宿紅布
7月7日、JACKMAN RECORDSからリリースとなった初の全国流通音源『卒業制作』のレコ発ライブ。といっても、自分たちの企画ではなく、シリーズ・イベント『共振』に誘われて、それへの出演をレコ発ということにしたようです。と知って、正直、ほっとしました。日本マドンナのレコ発のために集まったとしたら、ちょっと畏れ多いメンツなので、今日のこのイベント。出演順に書きますね。

1.うつみようこGROUP
2.三上寛
3.日本マドンナ
4.遠藤ミチロウ

一応ちょっと説明すると、1はうつみようこ(vo&g)、鈴木純也(g/OHIO101、フラカン鈴木圭介の弟)、調先人(b/ザ・ハイロウズ)、森信行(ds/そう、もっくんです)、という錚々たるメンバーによる、ブルージーかつシャープなロックンロール・バンド。2は、知らないって方は各自調査していただきたいが、簡単にいうと、日本のフォークの生ける伝説です。4は、ご存知ですよね、ミチロウさんです。もうすぐ還暦だそうで、三上寛さんよりも数ヵ月だけ年下だそうで、「日本マドンナ3人足しても、自分より若い」というMCで大ウケしておられました。

で。当然というか、やはりというか、どのアクトもすごかった。2と4はギター1本弾き語り、どちらもそこらのバンドなど軽くふっとばすくらいの恐ろしいテンション。特にミチロウさん、“お母さん、いいかげんあなたの顔は忘れてしまいました”や“仰げば尊し”などの、それこそ今41歳の僕が高校生の頃よく聴いていたミチロウ・クラシックスを連打。やられました。日本マドンナのギター、まりながフロアで狂喜してました。彼女とあんな(vo&b)はこの春高校を出たばかり、ドラムのさとこは高2です。
三上寛の、語りのような唸りのような叫びのような歌もすごかったし、うつみようこGROUPの「各人死角なし」「でもそれをたばねるようこさんに最も死角なし」な鉄壁さもすごかった。

で。三上寛と遠藤ミチロウの間に登場した日本マドンナ、実は普段から、ライブは百発百中いい、というバンドじゃなくて、はずす日もあって、そして、はずすと目も当てられないほど落ち込んでしまったりする人たちでは、あるのですが。
今日は、よかった! めちゃくちゃよかった。なんで150人とかそれくらいしか観てないんだ(ほぼ満員だけど。あと私の目算だけど)、1000人とか5000人とか10000人に見せたい、見せないと! 知らしめないと! という、ステージでした。
後半、あんなのベースが壊れてしまい、演奏に支障をきたしてたけど、そんなん関係なかった。もともと演奏力は、限りなく素人に近いバンドだし。
ただし、素人に近いが、というか素人だが、この人たちほど、バンドをやる必然、音を鳴らす必然、音楽をやる必然だけでもって、ステージに立っている人たちはいない。ヘンな言い方だけど、「音楽好きだから」とか、「バンドやりたいから」みたいな、ぬるい理由で客前に立っていない。
ってぬるいのか? それ。ぬるいんだと思う。やりたいからじゃなくて、やらざるを得ないからやっている、音楽を作りたいんじゃなくて、作らなくてはもうどうしようもないから、やむなく作っている。そんな、ぬきさしならない切迫感が、このバンドにはある。なので、逆にいうと、普段の、若いアマチュア同士でやってる対バンとかで日本マドンナを観ると、一緒に出ている他の人たちが「ねえ、やめたら? 別にやんなくても人生困んないと思うよ、きみたち」みたいに見えて、困ってしまうことがよくあります。
という意味では、今日くらいすさまじいメンツで、ちょうどいいのかもしれない。

ベース・プレイは「弾く」ってより「叩く」みたいだし、ボーカルも一見「壊し型」の歌い方に思えるけど、実は歌詞がとてもはっきりと聴き取れるし言葉もメロディも独自の文体を持っている、そんな歌を歌うあんな。技術はないし、フォーム、よけいな力が入りまくりだし、フレージングも「なんでそこでそれ?」みたいな感じなんだけど、だからこそめちゃめちゃ面白いし観ているとアガる、そんなドラムを叩くさとこ。そして、たとえ音を消して弾いている姿だけ見ても「ああ、この人、ギター弾かなきゃいけない人だわ。『あなたはギターを弾きなさい』ってことが生まれた時から決められてる人だわ」ってわかるくらい、フォームやたたずまいや動きがいちいちもう異様にかっこいい、そんなギターの弾き方をするまりな。
よくまあ、こんな3人が揃ったもんだと思う。どうか、もめたりしないで長く続けてほしい。代わり、いないと思います。

きっと誰もが感じていることだけど、ネットって、生活をものすごく便利にした代わりに、これまでで最も、言いたいことを言えない世の中を作ってしまった。これまでの歴史で、人が言いたいことを言えない状況になった場合、その「言えなさ」を作っているのは、政府だったり警察だったり放送コードだったり各種団体だったりしたわけだけど、今がイヤなのは、その「言えなさ」を作っているのが普通の人たちである、ということだ。
不用意なことを書くと叩かれる、クレームつけられる、それで炎上したり、それにさらに油を注がれたりする。いちいち「CM上の演出です」とテロップを入れないといけない時代。街中のロケで、いちいち通行人の顔にボカシが入っている時代。
明らかに異常だと思う。で、イヤな時代だなあと思う。

それこそ、僕だって同じだ。昔なら平気で書けた言葉が、どんどん使いにくくなっている。少し前に、「死ねばいいのに」っていう言葉をちょっと使ったら、読んだ人たちから「引きました」というリアクションをもらったばかりか、知り合いから「大丈夫ですか?」みたいなメールが届いてしまった。
大丈夫だっつうの。っていうか、ふとそう思うことぐらい、誰だってあるでしょ? それも言っちゃいけないの? 息苦しくてやってられません、そんなの。

言いたいことを言わせろ。極論や暴論を吐かせろ。汚い言葉だって使わせろ。総じて、そうやって生きていく、という自由を返せ。
日本マドンナがやっているのは、そういうことだ。それは、そもそもの自分たちの表現欲求に素直に従ったらそうなった、というものだと思うけど、それと同時に、そんなふうにどんどん不自由になっていく世の中への反逆でもあると思うし、やさしくて心地よくてきれいであったかい言葉一色にどんどん塗りつぶされていく、今の日本のポップスやロックに対する警鐘でもあると思う。
そして、それを今、この国で、ここまでのレベルでやれているのは、神聖かまってちゃんと日本マドンナだけだと、僕は思っている。絶対支持します。(兵庫慎司)


セットリスト
1.村上春樹つまらない
2.よごしたい
3.ちきしょう
4.生理
5.墓場にブチ込んでやりたい(新曲)
6.クツガエス
7.幸せカップルファッキンシット
8.田舎に暮らしたい
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