M.I.A. @ 渋谷クラブクアトロ

サマーソニックも含めると、通算3度目の来日公演となるM.I.A.だが、いやあ、これが素晴らしかった。ファースト・アルバム『Arular』のときは、彼女の音楽や存在の画期性と較べると、幾分ライヴは弱いかなあと思うところもあったのだが、セカンド・アルバム『KALA』を引っ提げての今回は、それを完全克服。

客入れ時からM.I.A.ゆかりのナンバーがかかる度に歓声が上がっていた勝手知ったる満員御礼の客席の力も大きかったが、さながら今日のクアトロは凱旋公演のよう。1曲目の“バンブー・バンガ”のイントロと共にM.I.A.が現れただけで、巨大な歓声が上がる。そして、M.I.A.の今日のファッションが強烈にカッコいい。白いフレームのちょっとビッチなサングラスに、光沢が鈍く光るフード、その胸にはド派手なフラッグが縫い付けられていて、下半身はまだら模様が目に飛び込んでくるスパッツという、まさに彼女ならではとしか言いようがない衣装。ちなみに、彼女自身がデザインしているマーチャンダイズも開演前の時点でかなりの数が売れてしまっていたようだった。

そうして始まったライヴだったが、ステージのバックの映像が今回は非常に効果的だった。Google Earthを自身仕様にカスタマイズしてマッシュ・アップした映像が流れる“XR2”、世界各国の国旗の色のラインがグラフィカルに流れ、強いメッセージを放つ“$20”など、M.I.A.自身が世界各地で録ってきた人々の映像も含め、それは『KALA』が持っているコンセプトと地続きのものになっている。

そして、そうした彼女がアーティストとして持っているメッセージはパフォーマンスにも落とし込まれていた。娼婦の視点から現実をシニカルに歌ってみせる“$10”では、女性だけをステージに上げ、“バッキー・ダン・ガン”では天井すれすれのスピーカーにまでよじ登る。セカンド・アルバムの『KALA』で彼女は、より大きなリズムを獲得した。そして、ライヴではその大きなリズムが持つスペースを使って、めいっぱいにコール&レスポンスを楽しんでみせる。アンコールも含めて、この日のクアトロには、今の時代の空気をしっかりと吸い込みながら、最前線へと飛び込んでいく原始的な力があった。(古川琢也)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする