オリアンティ @ 赤坂ブリッツ

『マイケル・ジャクソン THIS IS IT』でリード・ギタリストを務めていたことにより広くその名を知られ、今年の夏にはサマーソニックのマリン・ステージにも堂々登場したオーストラリア出身のシンガー・ソングライター、オリアンティ。日本でのフルサイズのライブとしては初となる東名阪ツアーの初日である。つまり公演日程をまだ残しているので、今後のショウにお出かけの方は、以下どうぞご注意ください。月曜日の夜であるにも関わらず、赤坂ブリッツのフロアは一杯。学生と思しき若者から、ギターには一家言持ってそうなお父さんまで、広い層のオーディエンスを集めているのも特徴的だ。オープニング・アクトのシンダー・ロードがメロディアスで力強いアメリカン・ハード・ロックで場内を沸かせ、クイーン“ウィー・ウィル・ロック・ユー”のコール&レスポンスまで使ってきっちりと温めてくれた。

ヴァン・ヘイレンの“ジャンプ”をフル・コーラス聴かせるオープニングSEで登場したオリアンティ。おお、『THIS IS IT』で“今夜はビート・イット”をプレイしていたときと似た感じの、黒を基調にしたロッカー・スタイルにブロンドの髪が映えている。4ピースのバンド編成で、ワイルドなロックンロール“ホワッツ・イット・ゴナ・ビー”をスタートさせた。ギターの演奏テクニックに関しては既にとても高い評価を得ている彼女だけれども、自身のステージとなると決して上手に奇麗に弾く、という印象ではなくて、感情の籠った前のめりでエキサイティングなプレイになることが分かる。“バッド・ニュース”のエモーショナルな歌メロに至っては、ソングライターとしての力量もまざまざと見せつけていた。

セカンド・アルバムに多くの楽曲が追加収録された『ビリーヴ(II)』から、“カーリッジ”なども披露される。大振りなハンド・クラップをフロア一面に巻き起こしてスタートするメロディアスなミドル・テンポのナンバーであり、オリアンティの歌の存在感もググッと増していった。3か月前に書かれたという新曲なども出し惜しみなく聴かせる。これまた晴れやかなコーラスへの展開が美しい曲であり、ギタリストとしてよりもシンガー・ソングライターとしての彼女の資質に注目せざるをえないほどだ。

“サフォケイテッド”など、時折プログラミングされた同期サウンドが挿入されるものの、パフォーマンスは全体的にオリアンティ含めた4人のシンプルなバンド・サウンドによるものであり、それが情感を帯びたオリアンティのギター・プレイを引き立ててもいた。ソロ・アーティストとバック・バンドというより、ひとつのバンドとしてしっかり成立しているのだ。今回のステージで唯一披露されたデビュー・アルバムからの楽曲“ヒーズ・ゴーン”は、ミニマルで沸々としたファンク・グルーヴにソウルフルな節回しのボーカルが絡むという、バンドの多彩な演奏スタイルを証明するのに効果的なパフォーマンスとなっていた。ときにファンキー、ときにメロウ。稲妻のようなギター・ソロだけがオリアンティではないのである。

ふと、オリアンティがひとりギターを爪弾き始める。この優しく穏やかなメロディは……マイケルの“ユー・アー・ノット・アローン”だ。ここからインストのMJメドレーが始まり、エディ・ヴァン・ヘイレンが弾いた“今夜はビート・イット”、当時ガンズ・アンド・ローゼズだったスラッシュ参加の“ギヴ・イン・トゥ・ミー”とバンドで繋いでいった。さすがにフロアは大盛り上がりである。個人的には、この追悼メドレーを単音メロで温かく豊かにスタートさせた“ユー・アー・ノット・アローン”に強く胸を打たれた。『THIS IS IT』のステージではあり得ないはずの、とてもオリアンティらしい追悼パフォーマンスに思えたからだ。世代的にも彼女は、『ヒストリー』あたりでリアルタイムのマイケルに親しんでいたのではないだろうか。

そしてクライマックスは、熱くエキサイティングなロック・ナンバーの数々が畳み掛けられる。日本でのセカンド・シングルである“シャット・アップ&アンド・キス・ミー”では、オリアンティの扇動的なギター・フレーズに合わせてオーディエンスが一斉にスクリームする。そして最後には彼女のギタリスト魂が炸裂するダイナミックなインスト・ナンバーへと突入。作品としては未発表の曲だしライブの間はいろんな持ち味を見せてくれたが、やはり最後にはこのギターなのだ。オリアンティは。

ハットを被ってアンコールに応じた彼女は、“アコーディング・トゥ・ユー”のイントロほんの1秒というところで、オーディエンスの大歓声を浴びる。華やかに走るコーラスが場内を満たしていった。更にはジミ・ヘンドリックス“ヴードゥー・チャイル”を披露。爆発的なバンド・グルーヴの中、オリアンティはステージ下に降りてまで弾きまくる。ステージ奥にまるで壁のように積まれたアンプの前に跪いてフィードバック・ノイズを振りまき、アタシのギターを聴きに来てくれた人もこれで文句ないでしょ、と言わんばかりの狂騒を巻き起こして彼女は去っていった。楽曲バリエーションにパフォーマンスのクオリティ、そしてさまざまなアイデアが盛り込まれて「これがオリアンティ」という像が結ばれるという、実に見事なステージだった。(小池宏和)
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