スクール・オブ・セヴン・ベルズ @ 渋谷WWW

このスクール・オブ・セヴン・ベルズはNYブルックリン発、元シークレット・マシーンズのベンジャミン・カーティスと、オン!エア!ライブラリーのアレハンドラとクラウディアのデヘーザ姉妹(双子です)によって結成された3ピース・バンドである。ベンジャミンとデヘーザ姉妹の出会いはインターポールのライブだったというエピソードも、プレフューズ73の『プレパレーションズ』でデヘーザ姉妹のボーカルがフィーチャーされたというエピソードからも、このバンドのだいたいのイメージ、骨格はご理解いただけるんじゃないだろうか。

4ADの遺伝子、もっと端的に言えばコクトー・ツインズからの影響を感じさせる幽玄の女声ボーカルに、ネオ・シューゲイズの中でも異様なほどクリアで、ポスト・ロック的アプローチを取りながらも異様なほど具体的なポップネスが跳ねる彼女達のサウンドは、現ブルックリン・シーンにあっても突出した、そして「分かりやすい」個性だと思う。

今回の来日は2009年のサマーソニック以来、今年リリースされた新作『DISCONNECT FROM DESIRE』を引っ提げての単独ショウである。来日の前にクラウディアの脱退が伝えられるなど混乱もあったが、サポート・ドラマーを率いての3人編成でステージに立った。姉妹の絡み合うコーラスが大きな個性だったバンドだけに、アレハンドラひとりでいかなるボーカリゼーションで魅せてくれるのかにも注目が集まっていた。

会場となった渋谷WWWは11月にオープンしたばかりの新しいべニュー。渋谷シネマライズの地下階を改装して作られたライブハウスだけに、シアター時代の設計を有効活用したフロアには段差がそのまま残され、段々と後方にむかってスタンディング・エリアがせりあがるというユニークな構造。自ずとステージを見下ろすような劇場的な視野が生まれる会場であり、これがスクール・オブ・セヴン・ベルズのパフォーマンスには凄く似合っていたようにも思う。

暗闇の中で逆光のダウンライトが点滅し、ショウが始まる。さざめくハイハット、ゆらゆらと徐々にかたちを成していくディスト―ション・ギター、そしてそれを再びブチ壊すようなバスドラの強烈なアタックと、ノイズの隙間を縫うようにしなるハイトーンな単音ギター。2分以上に及んだそんなイントロが途切れたところで意外なほどシンプルなエイトビートが切り込んでくる。激しく点滅するライトがモノクロの切り絵のように3人を浮かび上がらせる。

新作『DISCONNECT FROM DESIRE』を中心に、デビュー・アルバム『ALPINISMS』からのナンバーも数曲インサートされるというセットリストだった今夜だが、やはりキーを握っていたのは『DISCONNECT FROM DESIRE』のナンバーだ。ボーカルがアレハンドラひとりになったことによって、浮世離れした天空ドリーム・ポップの側面が薄まり、代わりに強調され始めたのが一気に多様性を増したリズムや、ギターをビート&打ちこみのように使うダンス・ロック的アプローチであり、より具体的でマスキュリンな音世界に転じたように感じられた。“Heart Is Strange”や“Babelonia”のようなポップ・チューンがどこまでも開放的に轟き、走り抜けていく。体内回帰的、ミクロコスモス的な音世界を旨としていたのが『ALPINISMS』だったとしたら、『DISCONNECT FROM DESIRE』に導かれた今夜のパフォーマンスは、よりマクロで開放的な音の洪水のカタルシスに満ちていた。

姉妹のユニゾンやコーラスの調和を美徳としてきた歌唱から一転、アレハンドラの歌声は腹の底から湧き出るような力強さを全面的に押し出すようになり、『DISCONNECT FROM DESIRE』の一聴して無機質にも感じられるエレクトロ処理に改めて血肉を与えていく。ベンジャミンのギターもゆらゆらした音波至上主義から脱却、細かく鋭く降り注ぐ音粒の製造マシーンみたいなことになっている。加えてこのバンドがユニークなのはドラムスで、バカテクというわけではないのだが妙に存在感のある演奏で、こんなにハイハットを多用するドラマーも珍しいのではないか。ハイハットを叩くのではなく撫で擦るようにして常に高音をパフォーマンスに付加していくことで、ダークなエレポップ調のナンバーにすら躁気味な味わいを感じさせるのだ。

この日のクライマックスになったのはトライバルなリズムが猛烈にカッコ良かった“Dust Devil”、アレハンドラのボーカルを思いっきり堪能できる甘美な“I L U”あたりだろうか。段々の階段のフロアゆえに暴れづらい環境ではあったけれど、オーディエンスひとりひとりの脳内でじわじわと1時間をかけて興奮が沸騰していくようなライブ・パフォーマンスだった。(粉川しの)
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