凛として時雨/ミドリ/9mm Parabellum Bullet @ 新木場スタジオコースト

凛として時雨/ミドリ/9mm Parabellum Bullet @ 新木場スタジオコースト - 凛として時雨 pic by 橋本塁凛として時雨 pic by 橋本塁
凛として時雨/ミドリ/9mm Parabellum Bullet @ 新木場スタジオコースト - ミドリ pic by 橋本塁ミドリ pic by 橋本塁
凛として時雨/ミドリ/9mm Parabellum Bullet @ 新木場スタジオコースト - 9mm Parabellum Bullet pic by 橋本塁9mm Parabellum Bullet pic by 橋本塁
「今年5月にミドリのハジメ君とライブハウスで飲んでいて、久しぶりに対バンしたいねということで、時雨も誘って今回の3マンが実現しました」。9mm・卓郎がそう告げていたように、デビュー時期を同じくする3バンドが一堂に会して行われた「新木場クライシス」。単なる同世代バンドとして括るにはいささか気がひけるほど、いまや時代の先端をぶっちぎるバンドとして異彩を放ちつづける3バンドの競演である。その衝撃を目撃しようという血気盛んなオーディエンスで、フロアはギッチギチに埋め尽くされている。

●凛として時雨
トップバッターは凛として時雨。客電が落ちて幕が開き、逆光に照らされた3人のシルエットがステージに浮かび上がるとフロアを凄まじい歓声に。1曲目“J POP Xfile”から、鋭い殺傷力と美しさを兼ね備えたハイブリッドな轟音を叩きつけていく。TKが掻き鳴らす氷の刃のようなギター、345のしなかやなベースライン、ピエール中野の研ぎ澄まされたビート、そのどれもが気持ちいいほど振り切れていて、ものすごい勢いでフロアに襲いかかってくる。TKと345のツインボーカルも気合い入りまくり。感情の底からてっぺんまで歌い尽くすかのようなエネルギーと、ピンと張りつめた緊張感をたたえて鳴りひびく。1曲1曲のイントロが鳴るたびに大きな歓声があがるフロアも、しょっぱなから大揺れに揺れている! そんなウナギ上りのテンションと反比例するように、体感温度がみるみると下がっていくように感じられるのが、たまらなくスリリング。アンサンブルが激しさを増すほど、歌声が激情を露にしていくほど、ひんやりとした冷気を帯びていく時雨サウンドのマジカルなエネルギーが、いつも以上に冴えわたっている。

深い海をたゆたうような“illusion is mine”のメロディで会場を酔わせ後は、ピエール中野のMCタイム。「せーの!」「てやんでぇ!」のコール&レスポンスを繰り広げたり、「ピエール中野改め市川ピエ蔵です」と時事ネタを盛り込んだりしながら場内の空気を温めていく。そして「最高の夜にピッタリな激しい曲を持ってきたぜ!」と“nakano kill you”へと突入。ドシャメシャなビートやTKの高声ボイスに刺激されて、怒り、興奮、救い、希望などさまざまな感情が立ち上っては消えていく爽快感! そのままラスト“感覚UFO”へと雪崩れ込み、騒然とするフロアに残響をひびかせ放題ひびかせてステージを去っていった。

●ミドリ
阪神タイガースの“六甲おろし”で颯爽と登場したミドリは、しょっぱなから全開! 「おう!」という後藤まりこの怒号を合図に鍵盤、ウッドベース、ドラムが堰を切ったように走り出すと、後藤まりこが破天荒に暴れまくる。ステージの端っこ、モニターの上、バスドラの上……と次々と居場所を変えながら、時折指揮するようなそぶりでバンドを鼓舞していく。卓越した演奏力でそれに応えるハジメ、小銭、岩見のとっつぁんによるアンサンブルも素晴らしい。決壊寸前のギリギリのラインを突っ走りながら、決して破綻することなく色彩豊かな音のタペストリーを広げていく。時折すさまじいデス声をひびかせながら煌びやかな旋律を奏でているハジメなんて、どうやって感情をコントロールしているのか不思議なほどである。そんなアグレッシブな彼らのパフォーマンスを受けて、はじめは呆然と立ち尽くしていた観客も思い思いにカラダを揺らしはじめる。

「いちばんハードコアな曲します」としてムーディーな世界が築かれた“スピードビート”では、マイクを思いきり頭にぶつけたからか、後藤の頭からダラダラと赤い血が。しかし、シーンと静まり返ったフロアをよそに、「毎月オンナは下から血ぃ出してるから、これぐらい大丈夫やで」と何事もなかったようにライブを続行。野性味あふれるパフォーマンスでフロアと裸のコミュニケーションを図っていく。さらに“どんぞこ”では思い余って客席へダイブ! ラストはそれまでの狂気がウソのようにイノセントな歌声を“POP”で披露して、戦慄ほとばしる40分間のステージを締め括った。

●9mm Parabellum Bullet
そしてアンカー、9mm Parabellum Bulletの登場! いつものSEに乗ってメンバーがステージに現れると、イベントが開演して2時間が過ぎているとは思えないほど威勢のいい歓声がフロアのあちこちから沸きあがる。そして“Psychopolis”のザクザクとしたカッティング・ギター投下! 残されたエネルギーをすべて出し尽くすかのようにもみくちゃになって踊りまくるフロア、ギターをぶん回しながら暴れまくるメンバーの狂気はそのままに、どこかオープンで享楽的な空気が流れていることに気づかされる。「新木場クライシスへようこそ。これで皆も立派なクライシスの仲間入りだね」といつもながらのシュールなMCを飛ばしながら伸びやかな歌声を届ける卓郎も、メロディアスにギターを奏でる滝も、重厚なビートを走らせる中村&かみじょうも、いつも以上に肩の力が抜けているように見えた。もしかしたら、久しぶりに旧知のバンド同士で対バンができる嬉しさや安心感みたいなものが5人のプレイに影響していたのかもしれない。「まりこちゃんは元気です。ついでにピエ川ピエ蔵も元気です」と告げた卓郎に、関係者席でライブを観ていたピエールが茶々を入れるという一幕があったのだが、そんなさりげないやり取りからも、今夜のイベントのリラックスしたムードが伝わってきた。

しかし、ライブ終盤へ突入すると状況は一変! それまでのマイペースぶりとは打って変わって力の入った演奏がフロアの殺気を高めていく。滝&卓郎の轟音ギター、中村のバッキバキのベースライン、そしてかみじょうのキレのある爆音ドラム……それらがうなりを上げて場内の空気を切りさいていくさまを見て、はじめて「そうだったのか」と気づかされた。単にイベントのムードに影響されていたのかに思われた序盤の演奏は、終盤の爆発力を高めるための布石だったということを。もちろん序盤は手を抜いていたわけではない。短いライブの中で最大限のカタルシスを生むためのテクニック。デビュー当初から数限りない対バンを重ねることで、よりハイブリッドなライブ・バンドへと成長した彼らの「今」が、その弾けまくったクライマックスからは見て取れた。

もちろん、それは凛として時雨とミドリにも言えること。本編終了後、6分以上にわたって止むことのなかった喝采は、今夜圧巻のライブを見せつけてくれた3バンドに同時に向けられたもののように思う。(齋藤美穂)

セットリスト
凛として時雨
1.J POP Xfile
2.telecastic fake show
3.I was music
4.想像のSecurity
5.DISCO FLIGHT
6.illusion is mine
7.nakano kill you
8.感覚UFO

ミドリ
1.あんたは誰や
2.うわさのあの子。
3.ゆきこさん
4.スピードビート
5.さよなら、パーフェクトワールド
6.エゾシカダンス
7.どんぞこ
8.POP

9mm Parabellum Bullet
1.Psychopolis
2.Caucasus
3.Discommunication
4.エレヴェーターに乗って
5.次の駅まで
6.キャンドルの灯を
7.Termination
8.Black Market Blues
9.marvelous
10.sector
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