怒髪天@Zepp Tokyo

怒髪天@Zepp Tokyo
怒髪天@Zepp Tokyo
「明けましておめでとう! 最高だ! もう……グッときてますからね。まずいって! よくもまあこんな集まったよ、こんな遠いところにね! よく来た! 今日は年越し以外では今年初なんでね、今年の展望を見せるようなね! もう、今年1年の分全部使い切るぐらいに騒いで帰っていただければと、こう思っております!」……と序盤からヒートアップする増子兄ぃのMCが、満場のオーディエンスのむせ返るような熱気を物語っている。東京/福岡/名古屋/大阪を巡る、2011年一発目の怒髪天のツアー『44“R&E”MAGNUM tour』(4公演それぞれに『~湾岸ラプソディ~』『~長浜エレジー~』『~今池ララバイ~』『~なにわベイブルース~』とサブタイトルがついている)の初日・Zepp Tokyoは、ライブの冒頭からフロア渾身の大合唱が沸き起こる、全編クライマックスのようなアクトだった。

ツアー初日なのでセットリスト全掲載は控えるが、“オトナノススメ”や“ビール・オア・ダイ”、桃屋「味付搾菜」CMでもフィーチャーされている“キタカラキタオトコ”など怒濤の魂全開大爆走ロックンロールあり、“旅路”“つきあかり”などメロディアス熱唱系の楽曲もあり、日常に押し潰される少年のルサンチマンに手を伸ばす“夢と現”のようなヘヴィなバラードもあり、会場限定販売シングルの2曲“そのともしびをてがかりに”“男達のメロディー(SHOGUNカバー)”もあり……と、聴く者の心に片っ端から点火し鼓舞し根底から揺さぶっていく稀代の「リズム&演歌」「魂のハードコア」伝道師としての怒髪天のキャパシティとエネルギーを、本編20曲の中に全開放したような壮絶なステージ。上原子友康のリフが唸りを上げ、清水泰而のベースが突っ走り、坂さんこと坂詰克彦のドラムが空気を揺さぶりMCが苦笑失笑の嵐を巻き起こす。そして、炎のように歌う増子兄ぃ、とにかく弁舌爽やかにしゃべるしゃべる。

物悲しい上原子友康のアルペジオをバックに「2011年、今年の年明けぐらい寂しかった年明けはありませんでした……」という思わせぶりな前振りから「the pillowsのカウントダウン・ライブにトリで参加した時、スタッフ含め全員がステージでのピロウズのカウントダウンに駆けつけてしまい、O-EASTの楽屋でたった4人でクラッカー鳴らして新年を迎えた話」を朗々と語り、「……俺たちの年明けは今日だよ! 寂しかったなあ! 男には、男には、そんな、飲まずにいられない夜があるんです!」と“ビール・オア・ダイ”につなげたり、あまりのフロアの激情炸裂な盛り上がりっぷりを全身に受けながら「やべえな! ちょっとあのー、今日まで初日だよ? 完全にこれファイナルでしょ! まあ、人間的にはみなさん、俺たちと同じようにファイナルだと思いますけど」と毒蝮三太夫か綾小路きみまろかってくらいのMCでオーディエンスを心地好い共犯状態に引きずり込んでみせたり、他にも「実家の母親に『福山雅治に似てる』と言われ、『どこが?』と問い詰めたら『ああいうふうになってほしいの!』と逆ギレされた」話や「久しぶりに同窓会に出席。今まで声もかからなかったし名簿にも載ってなくて『行方不明』状態だった。他の人より見えやすいところにいたのにね?」話や「伊達直人」話でいちいち爆笑を誘って会場の温度をぐいぐい上げまくったり……と唯一無二のド根性ロック・アジテーターぶりを見せつけながら、Zepp Tokyoをぎっちり埋め尽くしたオーディエンスへの感謝を熱く語っていく。

「Zepp Tokyoなんてね、こんなとこでやれるなんて思わなかったからね! 感無量なんだよな。よく『お前らに会うために俺は生まれてきたぜ』みたいな……言わないか(笑)。まあでも、そういう気持ちちょっとわかるもんね。もう、虐げられてきた。先輩たちにもいろいろ言われる。『このCD売れない時代に動員伸びてきて。あの頃だったら億稼げたよ?』って。そんなわけないと思うんですけどね(笑)。でも俺らね、金もらったことほとんどなかったから、今のままで十分ですけどね。でね、『音楽業界不況で、食えなくなってバンドをやめる中堅が続々』みたいなニュースあったでしょ? アホかっちゅうの。音楽をメシ食う道具にするな!って」とタフな闘争心を覗かせる言葉に、割れんばかりの拍手喝采! とはいえ、「……まあでも、お金は大事だよ? お金は。よーく考えろよ! ここに来てるやつはみんなわかってる! 今回もシングル出して売ってますからね。2曲入りですから、これもね、繰り返し聴くと何曲も入ってるように聴こえますからね!」と照れ隠しのような笑いで包んでみせることも忘れない。

本編ラストのキメで高々と拳を突き上げ、顔をくしゃくしゃにして男泣きしながら退場した増子兄ぃ。ほどなく再びメンバーが登場、「いやあ、アンコールありがとうございます! うれP! ここまでこれたなあって感じです!」(坂詰)、「みんなの顔が拳のように固まって見えて。みんなカッコいい!」(清水)、「いやあ、Zeppでワンマンやってますね! お台場なんて、僕ら北海道の人間にとっちゃニューヨークみたいなもんなんで」(上原子)とそれぞれに感激の言葉を述べている中、すでにエネルギーを出し尽くしたはずの増子兄ぃがオンステージ。「ダメだ! もうワンマンやりたくない! グッときすぎる! 敵いないんだよ、1人も! 味方ばっかりこんなに集まって、みんなしていい顔してんだもん! しっかりできねえよ! 悪いのは俺じゃねえよ、お前らが悪いよ! なんかなあ、いいこと言おうかなと思ったけど、無理だもん。泣いてるもん! はははは!」。そんなMCに、雄叫びのような歓声がフロアに広がる。

「でもな、俺たちが今、手渡したい!と思うものは、一生懸命手渡した! 俺、いっつも思うんだよ。みんなにラブレター渡してるみたいなもんだと思うんだよ。破られて目の前で捨てられるかもしれないし、読んでくんないかもしれないけど、一っ生懸命書いてんだ! 俺らができることって、これしかないからさ。こんだけできればいいと思うんだ、別に。食えなくなったらまたバイトしてやるし。解散しないよ? いきなり脱退とかしないでね?(と上原子に)。いろいろ言いたいことはあんだよな、不況だなんだとか。でも、どうよ? バブルの時とか、俺ら何の恩恵もなかったよな? 今日、(お台場の)VenusFort見てゾッとしたわ。あれ、何回も来た! かなり作ったからね、俺ら(笑)。だけどね、VenusFortの隣にね、バンドでこうやって来れるようになるとはね! 嬉しい! ほんとはもう立ってんのもやっとだよ。首も痛いし。1曲だけやろうと思ってたんだけど、2曲やろう!」と、アンコール2曲でエモーション完全爆発燃焼! 

「さっき新曲(“そのともしびをてがかりに”)やったけど……みんなの握ってる拳はな、ライブ来たらみんなこうやってガッと上げてるわ。でも、仕事とか学校で悔しい時、下でこうやってグッと握ってるわ。その中にある、燃えてるものを、探してんだよ。勝手に消すなよ! 見つけらんなくなるから。ちゃんと灯してろよ!……やっとちゃんと言えたわ!」という兄ぃの魂のメッセージを残して、最高のアクトは幕を閉じた。3月23日にはライブ定番曲を集めた完全コンプリート・アルバム『D-N゚18 LIVE MASTERPIECE』リリース! そして5月14日からは『D-N゚18』を引っ提げて全国22公演の『LIVE LIFE LINE TOUR』開催!……と、今年45歳の兄ぃをはじめ怒髪天の勢いはどうにも止まりそうにない。(高橋智樹)
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