で、山中湖畔で行なわれるようになってからは今年で2年目を迎える『SWEET LOVE SHOWER』。昨年もあまり良い天気ではなく富士山の麓ながらも残念ながらその姿を拝むことはできなかった。そして、「富士山とロック。再び!!」と銘打って行われた今年。ここ数日、低気圧による不安定な天気が続いたけれども、昨日は見事、富士山が見えたそうだ。昨日、兵庫がレポートしているように普段からしても珍しいことなのだとか。そして、今日はと言えば最初こそ晴れたものの、富士山は雲に隠され見えず…。出て来るアーティスト、ほぼみんな「今日は富士山見えないけど、最後まで楽しもう!」っていうMCが多かった。まだ2回という歴史だけど、きっとその「富士山が見える、見えない」がこのフェスの今後の見所になるんではないかなと思う。
とまあ、天候によって色々と左右されるわけだけど、今日は、真夏のカンカン照りから、土砂降りの雨までをすべて網羅。網羅って変だけど。しかも、その天候がその時に出ているアーティストにピッタリあてはまるシチュエーションだったのだ。というわけで、天気&富士山がらみのMC集と各バンドのショートレビューをまとめました。
オープニングアクトで登場したlego big morlは、キラキラとしたギターサウンドを、会場の真上だけ見事にぽっかりと雲が開けた澄んだ青い空に突き刺すように放ち、ニューカマーバンドの勢いをこれでもかと言わんばかりに見せ付てくれた。
そして、THE BACK HORN。いつも変わらず激情溢れる熱い想いを届けて、「富士山が見えるように願って、最後までたのしんで行こう!」という松田のMCのとおり、念を送るような眼差しでオーディエンスは彼らのパフォーマンスに応えた。
the telephonesに至ってはラストの2曲で、「あと2曲で富士山、出しましょう!」ってな具合に半ば強引に!?いや、必然的に盛り上がらざるを得ない、“HABANERO”“urban disco”でガッツリ盛り上がり、ライブが終わる頃には本当に富士山見えるんじゃない?っていうくらいに分厚い雲が外へ追いやられ、熱い陽射しが照り始める。
NICO Touches the Wallsが始まる頃には、日焼け対策を怠った自分を恨むくらいのカンカン照りの陽射しの中、カラッとした青空に清涼感たっぷりの“broken youth”を注ぎ込み、夏休み最後のジリジリと迫りくる太陽とともにこのイベントで1番夏らしいステージを見せてくれた。
そう、あとこのフェスの面白いところは2つのステージが近くて交互にライブをやるから、1つのステージが終わると、もう1つのステージでリハーサルが始まるわけです。バンドによっては本人が出てきてリハーサルをするのです。で、SAKEROCKももちろん本人登場で「リハーサルやりまーす!」という堂々宣言。本編前にリハを楽しめるというちょっとお得なこともあるのです。で、気になる本編ではグッドラックヘイワの野村卓史(Key)、そして、後ほど登場するEGO-WRAPPIN’の中納良恵が飛び入り参加して“スーダラ節”をこれぞフェスの醍醐味という感じでゆるーく、穏やかに披露してくれた。
「山中湖といえば、ワタクシですよ」と自負する奥田民生。そう、山中湖を知り尽くした男の登場だ。というのも、ご存知「ガキつか」の釣り選手権で何度も優勝しているのです。それはそうと、夏フェス会場で観る奥田民生には、マジックがある。なんでも出来そうな気になれるというか。前に、キャプテンストライダムの永友君が「民生さんのライブをフェスで観て、バンドを始めようと思った」って言っていたのを急に思い出した。そういうマジックってフェスならではだと思う。
そして、生で観るのは初めての上原ひろみ。ピアノとキーボードを同時に操り、全身全霊を指先に込めた迫力満点の演奏でオーディエンスを魅了した。
と、ここまでは晴れていたのだが、いよいよ雲行きは怪しくなり、ついにBRAHMANが雨雲を連れてやってきた。激しく強烈なナンバーが放たれ、どんどん熱気が立ち込めると同時に、面白いようにどしゃぶりの雨が叩きつけられる。ラストの方でTOSHI-LOWは客席へ身を乗り出し、オーディエンスに支えられながら歌い続けた。「戦いながら生きる」っていう言葉が本当に良く似合う。
EGO-WRAPPIN’のステージでは、時に挑発的に、時に伸びやかに、ステージを軽やかな足どりで行き来しながら歌い続ける中納良恵が印象的だった。今度はSAKEROCKのハマケンがトローンボーンでゲスト参加。その頃には雨も小雨に。
「いいこともあれば、悪いこともある」「胸を張ってしっかり生きていこうぜ!」と1曲1曲オーディエンスに向けて語りかけ、熱い言葉で盛り上げていくエレファントカシマシ。小雨じゃ物足りなかったのか、バケツ一杯の水を自ら頭からかぶり「雨よ降れー!!」と雨乞いする宮本浩次。その気迫はさらにオーディエンスを焚きつけ、そのままの勢いで“ガストロンジャー”へと雪崩れ込む辺り、ロック以外の何物でもない。
くるり岸田は「雨の唄を歌ってもっと雨降らします」といって“ばらの花”を、「ラスト、渾身の1曲でもっと雨降らして、お前らを困らせてやる!」と憎まれ口を叩きながらも“東京”という鉄壁のセットリストで盛り上げた。
そして、ザーザー降りだった雨がラストでいつの間にか上がり、「雨が上がったね。だから、この曲を聴いてくれ!」といって“雨上がり”を空高く届くように高らかに歌い上げたレミオロメン。実は事前に配られていたセットリストではやる予定がなかったのです。この曲。急な天候の変化がもたらした奇跡的でドラマティックな展開に、天気に振り回されるのもなんか悪くないなと思える瞬間でした。
さて、来年は富士山が見えるのか!?見えないのか!?天気に振り回されても、やっぱり至福の瞬間ってたくさんあるものです。意外と雨の日のアクトっていつまでも思い出に残っているものだし。夏休み最後のイベントとして思いっきり楽しませてもらいました。(阿部英理子)