mudy on the 昨晩 @ 渋谷O-WEST

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冒頭の“PERSON! PERSON!!”から最後の一音まで、縦横無尽に暴れ回り冴え渡る3ギター+ベース+ドラムのビートとアンサンブル! 歌詞を乗せないことによって逆に言葉の制約から解き放たれ、「インスト『なのに』エモーショナル」ではなく「インスト『だからこそ』エモーショナル」と言うべきサウンドを実現した、どこまでも獰猛で、緻密で、ダイナミックで情緒的な音世界! 8月31日にストレイテナーをゲスト(!)に迎えて行われた渋谷クアトロ公演での爆演をここでもレポートしたが、対バン形式での『mudy in squall リリースツアー 「ファインディング・アディ」』のフィナーレを飾る東名阪ワンマンの最終日となったこの日の東京・渋谷O-WESTでのライブは、その爆演の地点をーー他でもないフルサワヒロカズら5人の切磋琢磨によってーー越えたものだった。

祝祭感からカオスの果てまで3分あまりの楽曲展開に凝縮し、1曲の中でクラップとヘッドバンギングを巻き起こした“PERSON! PERSON!!”。ハード・ロック風シャッフル・ビートから16ビートにスイッチする瞬間に不穏なスリルを立ち上らせる“BEA”。動と静の強烈なコントラストがO-WESTのフロアを狂騒へ煽る“Your entrails and laughter.”。フルサワのカッティングから熾烈なインスト・ディスコ空間へと雪崩れ込む“lookilus”……最新作=2ndフルアルバム『mudy in squall』でのバンドの進化を全身で謳歌するように、爆発的なキメと轟音と畳み掛けていく5人。フルサワ/桐山良太/森ワティフォの3ギターが寄せては返すギター・ロック・オーケストレーション、朴木祐貴&伊藤浩平のドラマチックなリズムワークことだけでも圧巻の迫力だが、ステージ中央で終始ストイックに弾き続ける桐山に対し、フルサワ&ワティフォがあたかも楽曲と呼応するかのように跳び、身体を引き攣らせ、それこそギターを放り投げんばかりに振り回し(これは主にフルサワ)、アンプに昇り(これはワティフォ)何度も何度もガッツポーズをきめ(これはフルサワ)……という姿の躍動感も含め、CDには到底入り切らない「全身芸術」としての衝撃でもって、フロア狭しと詰めかけたオーディエンスを早くも序盤で掴みきってしまった。

“IDEA”など1stフルアルバム『pavilion』の楽曲や“ニュータイプ理論”(1stミニアルバム収録)も盛り込みつつ、「大事なアルバムができました。1曲ずつ、ぶち上げますんで!」というフルサワの言葉通り、本編16曲の中に『mudy in squall』全10曲を織り交ぜてその音世界を余すところなく展開してみせた5人。「ようやくきましたツアーファイナル! 8月にアルバムが出て、ようやくです! 『mudy in squall』というアルバムを出しまして。ツアーファイナルの東名阪なんですけど、名古屋と大阪では見事に……降りまして(笑)。東京も降るかな?なんて言ってたんですけど……いや、晴れの方がいいもんね?」とにこやかにフロアに語りかけるフルサワの顔にもすぐに笑みがあふれていく。特に、ニューウェーブとヘヴィ・ダブが地下300mでとぐろを巻いた果てに閃光を放つ“gellar / sun / flight”や、「言葉を持たないバンド」としてのメッセージの在り方を葛藤と逡巡の果てに純白の轟音として描き出したような“メッセージとは”は、ありとあらゆるロック・ミュージックに存在理由を問うて回るような戦慄を孕んでいた。が、そんな壮絶な音を鳴らした直後に、「ツアーずっとやってる気がするんですよね。濃くて……初めて台湾でライブやったりもして。僕、25なんですけど、身体とか痛くなってきて……テレビで見たんですけど、『8の倍数で身体に変化が』って……これツアー・ファイナルでやるMCかな?(笑)」とフロアを思いっきり脱力させてみせるギャップもmudyのライブの醍醐味、だろう。

「次は32歳……ハゲるかな?(笑)。でも、32の時には何曲できてるだろう?とも思うし」と続けるフルサワ。「1年5ヵ月ぶりのアルバムで。すごく『出しきった感』があって、『次どうしようか』と思ってるんですけど……頑張ります!」とさらなる「その先」への意欲を覗かせる。熱い拍手喝采が巻き起こる。「……とか言ってる間にもう終盤なんですけど(笑)。ここからノンストップですけど、大丈夫ですか?」と、キラー・チューン“YOUTH”から息つく間もなく“ユアイへ”“moody pavilion”を連射し、最後は“this squall”でO-WESTどころか東京丸ごと土砂降りの轟音で埋め尽くすような激烈なサウンドを響かせて本編終了! すぐさま割れんばかりのアンコールの声が沸き上がったが……えー、ここから先は現場で見た人だけのお楽しみとさせていただきたい。ストイックにロックの極致を目指す探究心も、ダンス・ミュージックとしてのロックの快楽も、すべてを驚愕のプレイアビリティでもって貪欲に取り込みながら、着実に前進を続ける5人。その歩みの確かさを、この日集まった誰もが感じたに違いない。そして、12月30日にはmudy on the 昨晩が『COUNTDOWN JAPAN』に登場!(高橋智樹)
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