リンゴ・デススター @ 渋谷クラブクアトロ

リンゴ・デススター @ 渋谷クラブクアトロ - pics by 田村直希pics by 田村直希
リンゴ・デススター @ 渋谷クラブクアトロ
テキサス州オースティン出身の3ピース・バンド、リンゴ・デススターの来日ツアー初日をレポート、って、彼らは今年の春にも、そして夏のフジ・ロックにおいても日本国内のステージに立っているので、1年のうちに3度目の来日ということになる。なんとも嬉しい限り。14日には大阪、また15日には再び都内でのパフォーマンスが予定されているので、文末のセット・リストを含めレポート内でのネタバレには、どうぞご注意ください。

ツアー初日の渋谷クラブクアトロにゲストとして招かれたのは、日本勢から結成20周年の節目を迎えているCOALTAR OF THE DEEPERS。筆者は久しぶりに彼らのステージを見ることができてこれまた嬉しい。この日の公演の告知広告デザインでは『SHOEGAZE CHAMPIONSHIP / RINGO DEATHSTARR VS COALTAR OF THE DEEPERS』と銘打たれており、つまり真剣勝負なのである。フロントマン・NARASAKIは10月に大腿骨を骨折して椅子に腰掛けたままのパフォーマンスだが、序盤から被ったキャップを振り落としてしまうほど。シューゲイザーからノイズ・ポップ、メタルやハードコアまで視界に収めて積み重ねてきた音塊が次々に繰り出される。激しいバンド演奏とは裏腹に、その中に埋もれてしまうような、NARASAKIの細く少年性を宿した歌声もまたCOTDならではのもの。1時間を越える熱演によって、日本独自のシューゲイザー解釈とキャリアを見せつけてくれた。

リンゴ・デススター @ 渋谷クラブクアトロ
転換を経て、リンゴ・デススターの登場だ。スパンコールというかミラーボールのようにギラギラと照明を乱反射するドレスを身に纏った紅一点・アレックス(Vo./B.)が姿を見せるなり、女性オーディエンスの「かわいい……!」という溜め息混じりの声が漏れ聞こえて来る。彼女の美貌はそんな衣装が嫌味やジョーク混じりな印象を与えることなく、むしろ「これぐらいの衣装じゃないとダメ」なところがまた凄い。彼女が「How are you? 日本語が分からないの。How are you?は、日本語では何て言えばいいのかな」と告げると、エリオット(Vo./G.)が「コンバンハ! ハジメマシテ!」と助け舟を出して演奏がスタートした。彼はアレックスの衣装と似た色合いの、マフラーというかクリスマス・ツリーのリボン飾りのようなものを首に巻き付けている。

アルバム『カラー・トリップ』に収録された“YOU DON'T LISTEN”を皮切りに、キャッチーなメロディのシューゲイザー・ポップが響き始めた。ダニエル(Dr.)を含めた3ピースということで、さすがに音圧という部分では5人組のCOTDには及ばないが、それを補って余りあるフレッシュなバンド・サウンドだ。楽曲によってアレックスもギターをプレイするベースレス編成で音響に奥行きを与えたり、エリオットはトレモロ・アームや各種エフェクター・ペダルを駆使して一曲ごとに異なる表情のギター・サウンドを繰り出す。初期マイ・ブラッディ・ヴァレンタインを彷彿とさせるツイン・ヴォーカルのノイズ・ポップ・チューン“ソー・ハイ”の瑞々しい響きは最高だ。

ダニエルが鋭角なファンキー・ビートを叩き出してプレイされるのは、先頃リリースされたニューEPの“SHADOW”。エリオットのシャウティング・ヴォーカルと、アレックスの美しいウィスパー・ヴォーカルによるコーラスが交錯する。ここから白昼夢の中に身を置くような“PRISMS”の流れも素晴らしかった。「シューゲイザーをやるのが上手」なのではなくて、感情表現の手段として完璧にフィットしている。米・オースティンでシューゲイザー・サウンドを紡ぎ出すバンドはかなり少数派なのではないかと思うが、やるということはそれだけ必然があるのだろう。揺るぎない立脚点と、そこから自由に広がってゆく新しいアイデアが、振動として、感触として、伝わって来る。

「アリガトウ! ワタシノ日本語、ナオシテクダサイ……」とエリオット。いや、十分にうまいじゃないか。「次はデリケートな曲だからね。“DO IT EVERY TIME”だよ」と言い置いて、目一杯パンキッシュに振り切れてゆくさまには笑った。ステージ運びも飽きさせない。この後は終盤に向けて、エリオットの穏やかなギター1本に寄り添う形で披露される美曲“IMAGINE HEARTS”なども挟み、アレックスが「みんな、この曲は知ってるんじゃないかな」と告げてプレイされたのはラモーンズの“I WANNA BE YOUR BOYFRIEND”であった。リンゴ・デススターのサウンドに、キャッチーなメロディのフックが見事に映えていた。

アンコールではなんと、アレックスの「COALTAR OF THE DEEPERSに来てもらいましょう。ダイスキ! これ、クールなベースね」という呼びかけもあって、リンゴ・デススターとCOTDの共演が実現。曲は、TVアニメ『輪るピングドラム』にCOTDが提供した曲で、リンゴ・デススターもEP『SHADOW』でカヴァーしている“DEAR FUTURE”だ。ステージ狭しと立ち並んだメンバーから繰り出されるエッジの立った轟音と、歌詞のメモを片手に懸命に日本語詞を歌うアレックス&NARASAKIの美声デュエットなんて、レアすぎる。それぞれに握手を交わした後、エリオットが「これも新しい作品(EP)の曲だよ。僕ら、どうプレイしたらいいのかわからないんだ」と笑いを誘って突入した“NEW WAY”など3曲を披露。あわや2時間というワンマン並のステージを終えたリンゴ・デススターであった。

リンゴ・デススター @ 渋谷クラブクアトロ
さて、14及び15日の公演では、リンゴ・デススターはUKのジョニー・フォリナーと対バンする。これも面白い。音楽性は異なるがベーシストが女性の3ピースという編成の共通点があり、共にフレッシュで爆発力に満ちたパフォーマンスも堅い。筆者もなんとかスケジュールに折り合いを付けて観ようかと思ったが、15日の東京公演は既にソールド・アウト。しまった。参加予定の方は、どうぞ存分に盛り上がって頂きたい。(小池宏和)

リンゴ・デススター セット・リスト
01:YOU DON'T LISTEN
02:SOME KIND OF SAD
03:SUMMER TIME
04:KALEIDOSCOPE
05:CHLOE
06:SO HIGH
07:TAMBOURINE GIRL
08:SHADOW
09:PRISMS
10:DO IT EVERY TIME
11:TWO GIRLS
12:STARRSHA
13:SWIRLY
14:YOUR TOWN
15:IMAGINE HEARTS
16:IN LOVE
17:DOWN ON YOU
18:SWEET GIRL
19:I WANNA BE YOUR BOYFRIEND (RAMONES cover)
20:TILT-A-WHIRL
EN-1:DEAR FUTURE (with COALTER OF THE DEEPERS)
EN-2:EVERY TIME I LEAVE U
EN-3:NEW WAY
EN-4:WEEKEND DUDES
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