フジファブリック @ Zepp Tokyo

フジファブリック @ Zepp Tokyo
「僕らがCDを出して、こういうふうにツアーができて、東京でライブができたことを嬉しく思ってます」。本編ラストの“ECHO”前、熱気渦巻くZepp Tokyoのフロアに感慨深げに語りかける山内総一郎。「こんなにたくさん……ほんと嬉しいです。ありがとうございます!」。満場のオーディエンスから沸き上がる高らかな大歓声!……9月21日にリリースされたアルバム『STAR』を引っ提げての全国ツアー『ホシデサルトパレードTOUR 2011』のセミファイナル会場=Zepp Tokyo。「山内総一郎/金澤ダイスケ/加藤慎一の3人体制(+サポート・ドラム=刄田綴色from東京事変)で臨む初めてのツアー」という以上に、この日のライブは「新しいフジファブリック」の可能性そのもののようなアクトだったし、その「新しさ」をステージとフロアが一丸となって謳歌するような、最高にポジティブなモードの一夜だった。

開演と同時に会場をコズミック&サイケデリックなサウンドスケープで満たしてみせた“STAR”“理想型”の連射! そして、『モテキ』経由で今や国民的ナンバーと化した“夜明けのBEAT”炸裂! 「始めからこんなにドーンと盛り上がっていただいてありがとうございます!」と思わず山内も顔を上気させる勢いで、フロアの温度ががんがん上がっていく。かつては志村正彦の妖気あふれる歌をエースとして編成されていたフジファブリックというフォーメーションを、歌とギター/キーボード/ベースが全員フォワードの3トップ体制(あるいはドラムも含めて4トップ体制)に再編したようなフジファブリック最新型の音は、びっくりするほどのダイナミズムとスケール感、そしてアンサンブルとしての伸び伸びとした自由度をもって響いている。そして、新たにヴォーカリストとなった山内のエモーショナルに弾む歌が、アンサンブル全体にフレッシュな高揚感を加えている。ちなみに、山内は“夜明けのBEAT”の♪バクバク鳴ってる~のところを、ドレミ表記でいうとミミミミレーレドーと歌っていたのが、志村のミ♭ミ♭ミ♭ミ♭レーレードーとはひと味違ったストレートな快感を描き出していたのも面白かった。

 本編18曲を『STAR』ほぼ全曲と“パンチドランカー”“会いに”など『MUSIC』の楽曲と“B.O.I.P.”“TEENAGER”(『TEENAGER』)、“地平線を越えて”“虹”(『FAB FOX』)といったライブ・アンセム群を織り重ねながら3人の「今」を描き出したアグレッシブなセットリスト。“B.O.I.P.”のエンディングからそのまま山内ギターと金澤キーボードの超絶バトルへと突入したり、山内のリフから雪崩れ込んだ“Splash!!”が高らかな♪オッオッオッオッオーのシンガロングを巻き起こしたり、加藤作曲の“アイランド”がオーディエンスで埋め尽くされたフロアにあったかく染み渡ったり……それらひとつひとつの場面が、志村亡き後「『別バンド』として」ではなく「すべてを背負って『新たなフジファブリック』として」リスタートすることを決めた3人の決意あふれる佇まいと相俟って、でっかい感激を生んでいく。そんな情熱に応えるように、オーディエンスは力いっぱい拳を掲げ、跳び、踊り、歌い、今この瞬間を全身で楽しんでいる。
フジファブリック @ Zepp Tokyo
フジファブリック @ Zepp Tokyo
フジファブリック @ Zepp Tokyo
「いやいやいや、東京、いいっすね! こんな特別な夜に……加藤くん!」と山内に話を振られた加藤が「最近めっきり寒くなってまいりまして。寒くなってくると、麺類が食べたくなってくるわけでして。あー寒い寒い……お、屋台があるじゃねえか!」と落語を一席やりかけて慌てて止められたり、「『クリスマスに食べたいもの』とかけまして、『日本の未来』ととく。そのココロは?……『ケーキ(景気)がよいでしょう』」の謎掛けをやっとのことでひねり出した加藤を「このコーナーやると、ちょっと疲れるよね?(笑)」と金澤がいじったりーーといったMCまでもが、いちいち嬉しい。

中盤のアコースティック・コーナーの途中、デビュー7周年記念で完全受注生産で販売されたミニギター「FAB GUITAR」を手にした金澤。「このギターで演奏するために、3曲用意してきたんですけど。“禁じられた遊び”、“アルハンブラ宮殿”、それからフラメンコ。この中のどれをやるでしょうか? 『オーディエンス』を使ってもいいし、『テレフォン』でも『50:50』でも……」(金澤) 「じゃあ『50:50』で!」(山内)といったトークを経て、金澤がいかにもフラメンコ調なコード進行を奏で始めた……と思ったら、「なーんでか!」と堺すすむの“なんでかフラメンコ”状態へ! 3人それぞれが「音楽」だけでなく「ライブ」を、「フジファブリックという空間」を自分の手で作っていく、という想いが伝わってくる。

そして何より、フォークロアとスペース・ロックが先を競って駆け出すような“君は炎天下”、高速マーチング・バンド的なビート感と3人のコーラスがめくるめく高揚感を生む“パレード”、轟々と吹き荒れる“アンダルシア”の極彩色のサウンドスケープ……などなど、3人で作り上げたアルバム『STAR』の楽曲のポテンシャルの大きさが、この日のライブのエネルギーの源になっていた。09年12月24日に突然世を去った志村正彦が遺した楽曲を、山内/金澤/加藤の3人で形にした『MUSIC』。そして、3人で「新しいフジファブリック」として再び歩き始めることを決めた彼らが、ついに完成させた『STAR』。3人が「これまでのフジファブリックを模倣する」のではなく「己の音楽的衝動と可能性の赴くままに楽曲をほとばしらせる」ことに専念した結果、これまでとはまったく異なる、それでいて紛れもないフジファブリックそのものである音楽が生まれた。そんなマジカルな変化を現実のものにしたのは、ひとえに3人の努力と才気ゆえだ。「フジファブリックはこれからも休むことなく活動していこうと思うので。よろしくお願いします!」という山内の言葉に導かれて演奏されたハード・バラード“ECHO”の真摯でハートフルな音に、思わず胸が熱くなった。
フジファブリック @ Zepp Tokyo
鳴り止まないアンコールの声に応えて再び登場した3人+1人、“星降る夜になったら”と“TAIFU”で、むせ返るようなZeppの熱気をあれよあれよという間に沸点へと導いていく。速弾きギター・ソロを背面弾きで披露する山内に、ステージ前面から逆向きで鍵盤を弾き倒して対抗する金澤。最後の一音を、刄田のドラムから勢いよくジャンプしてキメる山内。すべての音が鳴り止み、手を取り合って深々と頭を下げる4人に、惜しみない拍手喝采がいつまでも降り注いだ。18日・仙台公演まで続いた『ホシデサルトパレードTOUR』でもって、最高の形で2011年を締め括ったフジファブリック。『COUNTDOWN JAPAN 11/12』初日=12月28日EARTH STAGEで、そして2012年のアクションで、着実な歩みを進めていくであろう3人の「その先」が、今から楽しみで仕方ない。(高橋智樹)


[SET LIST]

01.STAR
02.理想型
03.夜明けのBEAT
04.スワン
05.B.O.I.P.
06.Splash!!
07.地平線を越えて
08.パンチドランカー
09.アイランド
10.MUSIC
11.Drop
12.君は炎天下
13.パレード
14.TEENAGER
15.アンダルシア
16.会いに
17.虹
18.ECHO

アンコール
19.星降る夜になったら
20.TAIFU
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