怒髪天 @ 中野サンプラザ

怒髪天 @ 中野サンプラザ
怒髪天 @ 中野サンプラザ
怒髪天の新年一発目のスペシャル・ワンマン「謹賀新年 新春ドラゴン・ツイスト“俺達の琵琶ビリーナイト”」。入り口に「完売御礼!」の貼り紙が出された中野サンプラザホールは、物販エリアに新春手拭いやお守りといったお年賀グッズが並ぶなど、年明けから早2週間が過ぎたにもかかわらず、今日が元日の夜であるかのようなおめでたいムードに包まれている。ライブの方も、盛りだくさんの初売りセール状態! お年賀ライブにちなんだ演出はもちろん、懐かしい曲から渾身の新曲までもが披露され、2時間強どこを切っても鮮烈な興奮に満ちたエンターテインメントなアクトとなった。

まず驚いたのは登場シーン。お正月定番の琴の名曲“春の海”のSEと、「2012年、新年明けましておめでとうございます! 澄みわたる中野の空の下、怒髪天よりご来場の皆さまに新春のお喜びを申し上げます」という増子兄ぃのアナウンスが流れると、なんと2階席の袖より4体の獅子舞が登場。そのまま2階と1階の客席の間を練り歩いてステージに到達した獅子舞、勢いよく頭を脱ぐと、中からメンバー4人の姿が露に。大歓声に包まれる中、「明けましておめでとう! 今年も思いっきり行くぜー!」(増子)のシャウトとともに“俺様バカ一代”で華やかにライブの幕を切って落としたのだった。続けて“ロクでナシ”“宿六小唄”と連打すれば、いきなり揺れに揺れる中野サンプラザ。日の丸扇子を振り回しながら熱いボーカルをブチかましていく増子兄ぃが、初っ端から満場のシンガロングが乱発する熱狂空間と化した客席を力強く鼓舞していく。

その後も新春公演ならではのサービス精神と、結成28年目に突入したバンドの貫禄を見せつける楽曲を立て続けに披露。“生きててイイですか?”“N・C・T”では、うねるビートと鋭利なギターリフが轟々と燃え盛り、“喰うために働いて生きるために唄え!”では、軽快なハンドクラップに乗って増子兄ぃのキレッキレのダンスが炸裂。「せっかくだから今日はいろんな曲をやろうかな。久々の曲をやります」(増子)と“オオカミに捧ぐ”へ雪崩れ込めば、聴く者の心を奮い立たせ根底から揺さぶっていく灼熱の「リズム&演歌」が伸びやかに放たれる。もちろん「正月は何してた? 俺はカウントダウンをした後に具合が悪くなって。3日間、実家でビッチリ寝込んだね」「それにしても坂詰さん(Dr)には驚いた。この人、正月に鏡餅を買うの忘れて代わりに『サトウの切り餅』を2枚重ねて神棚に置いたって言うんだから。そんなのご利益ゼロだろ!」と、ここは新春の浅草演芸ホールかってぐらいの軽妙なトークで爆笑を誘う増子兄ぃのMCも冴えていた。

しかしメロディアスな熱唱バラード“旅路”で場内の浮かれムードは一変。さらに照明が落ちてメンバー4人だけが仄暗く照らされる中、「ドドド! ドドド! ドンと行け!」という力強いエールが送られた“ド真ん中節”がすごかった。曲終盤では、床をのたうち回りながら激情ほとばしるボーカルを解き放っていく増子兄ぃ。どうしようもない己とどうしようもない現実を克服するための正面突破のメッセージを、全身全霊で届けていくその気迫あふれるパフォーマンスに、思わず胸がジーンと熱くなった。そのまま“ギター・マガジンの歌”“吠-HOEROU-郎”を経て“GREAT NUMBER”へ流れると、再びライト全開の中で吹き荒れる「エンヤーエンヤーサ!」の大シンガロング! ラストは“NO MUSIC NO LIFE”“オトナノススメ”“ニッポン ラブ ファイターズ”“酒燃料爆進曲”と怒濤の大爆走ロックンロールを畳み掛けて本編フィニッシュ。ふらつきながらステージを後にする増子兄ぃとメンバーに、興奮と熱さで頬を紅潮させた満場の観客から温かな拍手が送られた。

今夜はアンコールでも度肝を抜く演出が。真っ暗なステージに舞い戻ったメンバー。「ジャジャジャン」とどこからともなく琵琶の音色が聞こえてきたと思えば、ステージ後方の黒幕がサッと開いて女性琵琶師が登場。そのまま「祇園精舎の鐘の声~♪」と弾き語り、趣深い歌声と琵琶の旋律をソロで響かせていく。しばらくして増子兄ぃの「ドロロデロデロオンドロロ」という語りがはじまり、バンド演奏が重なって3月14日にリリース予定の新曲“DO RORO DERODERO ON DO RORO”へ。琵琶の重厚な音色を織り交ぜながら、闇夜を妖しく疾走する赤黒いバンドサウンドがたまらなくカッコいい。さらにダブルアンコールでは、「今年の怒髪天の指針になる曲です。ひさびさに歌詞を書いているとき涙が出た。シンプルだけどすごくいい曲です」として、同じく3月14日リリース予定の新曲“歩きつづけるかぎり”を披露。「歩きつづけるかぎり、夢はちょっとずつでも続いていく」という、結成28年目を迎えた今まさに円熟の時を迎えようとしているバンドのキャリアを自負するようなメッセージが、爽快なロックンロールに乗って高らかに上り詰めた。最後はメンバーそれぞれが新年の抱負を語って一本締め。ひらひらと紙吹雪が舞う中、メンバーと観客の万感の思いが結実した2時間強のアクトは大団円を迎えた。
怒髪天 @ 中野サンプラザ
3月のシングルリリースを皮切りに、4月にはアルバムリリース、5月からは全国ツアー開催と、2012年も全力疾走していくことを最後に約束してくれた増子兄ぃ。「昔ライブハウスでFUCK OFFなんて言ってた頃には、中野サンプラザを満杯にするライブをやれるなんて全然予測していなかった」「曲できるたびに『これはいい! ヤバい!』って思いながらやってきたんだけど、全然ヤバいことにならなくて。でも最近は(周囲の評価も)ややヤバくなり始めてきたな」など感慨深い言葉を随所で口にしていたけれど、今の怒髪天を取り巻く追い風ムードは、他ならぬ彼ら自身が長きにわたって渾身の思いをぶつけてきた結果だということを、強く痛感されるアクトだった。「俺らは、できる限りバンドを続けていくことしかできないから」――そのシンプルだけど重みある言葉に、年明け早々目いっぱいの勇気と渇を入れてもらったような幸福な一夜だった。(齋藤美穂)

セットリスト
1. 俺様バカ一代
2. ロクでナシ
3. 宿六小唄
4. 生きててイイですか?
5. N・C・T
6. 喰うために働いて生きるために唄え!
7. オオカミに捧ぐ
8. 俺達は明日を撃つ!
9. 俺流
10. 旅路
11. ド真ん中節
12. ギター・マガジンの歌
13. 吠-HOEROU-郎
14. GREAT NUMBER
15. NO MUSIC NO LIFE
16. オトナノススメ
17. ニッポン ラブ ファイターズ
18. 酒燃料爆進曲
アンコール1
19. 祇園精舎(※琵琶ソロ)
20. DO RORO DERODERO ON DO RORO
アンコール2
21. 歩きつづけるかぎり
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