マリリン・マンソン @ 新木場スタジオコースト

約2年半ぶりの来日公演。今回のジャパン・ツアーは、『HEY CRUEL WORLD…TOUR』の導入部に置かれていて、5月の新作『BORN VILLAIN』(日本盤の発売日は後日発表されるはず)リリース・タイミングからは米本国~ヨーロッパ諸国と日程が続く。つまり本格的な新作ツアーの助走という意味合いを持つ公演でもあるのだろう。レポートするのは東京・新木場スタジオコースト2デイズの初日で、今後は名古屋、大阪とステージが続くため、以下のセット・リストなどネタバレを含む本文の閲覧には、どうぞ十分にご注意を。

翌10日、スタジオコースト2デイズの2日目は既にソールド・アウトと報じられていたのだが、初日もほぼそれに近い状態だったのではないだろうか。フロアから2階席まで、熱気ムンムンのオーディエンスが詰めかけている(雨でびしょ濡れになりながら駆けつけるTシャツ一枚の外国人ファンもいた)。開演前に流されていたクラシック・ロック~ニュー・ウェーヴ~オルタナティヴ/ヘヴィ・ロックを見渡すSEが物語るように、多彩な嗜好のオーディエンスによる重層的な支持基盤を持つマンソンの強みが具現化した光景だ。すごい。

開演予定時刻から30分ほど焦らしてくれたところに、いよいよメンバーが登場。“アンチクライスト・スーパースター”のイントロを、爆発的なクラップ&シャウトで一斉に迎え撃つオーディエンスである。サイドの髪を刈り込み、前回来日時よりもさらに丸みを帯びたシルエットのマンソンが、ステージ中央からせり出した花道で大歓声を押し返すように芯の強いスクリームを放つのだった。周囲のオーディエンスを睨め付けるながら指差し、“ディスポーザブル・ティーンズ”では尻の穴を見せつけるような素振りを見せ、或いはギターを掻き毟るツイギー・ラミレズの肩を抱き寄せる。“ザ・ラヴ・ソング”は煙幕放射装置付きのライトを振り回し、コーラスでオーディエンスによる怒号のような掛け合いも決まった。

昨年、15年に渡ってマンソン・バンドのビートの屋台骨を担ってきたジンジャーが離脱してしまったけれども、新ドラマーのジェイソンはベーシストのフレッドと共に、コンパクトながら破壊力のあるリズム・セクションを形成している。タメのあるビート感が気持ち良く、小回りも利くプレイだ。あと、2年前にはなぜパートを変えたのかな、と思っただけだったけれど、ツイギーのギターがかなり良い。“ザ・ドープ・ショウ”のスモーキーで妖艶なフレーズから、“ロック・イズ・デッド”や“パーソナル・ジーザス”カヴァーなどにおけるマンソン印のヘヴィ・インダストリアル・ブギー・リフまで、ばっちり決めてくれる。“トゥーニキット”のパンチの効いたベース・ラインをフレッドに任せてしまうという画ヅラはなかなかシュールだったりもするのだけれど、そのぶんツイギーもギターで魅せてくれるのでOKだ。

マンソンもまた、今回もことあるごとに、ツイギー超ラヴな態度でステージを進めていた。ツイギーをコールして背徳的な猥雑グルーヴが火を噴く“モブシーン”の後には一転、“スウィート・ドリームス”カヴァーで悲しげなギター・フレーズとエモーショナルな歌唱が寄り添う。そして2人で「Fuck You」の応酬を繰り広げるという、ほとんど持ちネタと化した一幕もあった。後に記載するセット・リストをご覧頂ければ分かると思うが、今回の選曲はいわゆる3部作のベスト・ヒット+定番カヴァー・レパートリーといったところなのだけれど、でもこれってつまりツイギー万歳セットでもあるだろう。

「We Love Hate, We Hate Love!!」の大コールを巻き起こして“イレスポンシブル・ヘイト・アンセム”。大観衆のレスポンスは一貫して良かったし、新メンバーを含めたバンドの演奏もソリッドに纏まっていた。それでも、マンソンは何か焦燥感に駆り立てられるようにもっと、もっとと声を求め、ナーヴァスな部分を必死に押しとどめようとしながら、時折は集中力が途切れてしまっているように見えた。記載したセット・リストの終盤には“1996”が入っていて、確かにプレイしようとする素振りも見せたのだけど、結局止めてしまい、ツイギーとエグめの下ネタで絡んでいたりする。

ここ数年のマンソンの活動を振り返ってみると、自らが監督を務める映画の製作がビジネス面で頓挫してしまったり、音楽的な活動についてもメジャー・レーベルの契約を解除されてしまったりと、厳しい事柄が続いていた。新作そしてツアーにかける意気込みとプレッシャーは並々ならぬものがあるはずだ。楽曲を並べるだけで熱狂が確約されてしまうような今回のセット・リストは、そんな意気込みの表れでもあるだろし、プレッシャーがマンソンをナーヴァスにさせるのも分かる。前回来日時に見たゴキゲンぶりとは明らかに違っていた。

でも、だからこそ、既にインターネット上で公開されている“No Reflection”あたりの新曲を披露して欲しかった。それだけで、バンドにとっても、オーディエンスにとっても、今回の来日公演におけるフォーカスがより明瞭になったはずだ。《俺がお前にしようとしていることを、お前は知ろうとさえしないんだ》。まさに、そんな歌が歌われるべきステージだったではないか。

とか思っていたら、公演終了後に行われたロッキング・オン誌のインタヴューについて、こんな編集部日記が(こちら→http://ro69.jp/blog/rockinon/65125)。新曲、もしかすると……だと!? ぐぐぐ。約束されたわけではないけど、今後の日程に参加予定の方は、ぜひぜひ新曲の予習を。あと、「今日の僕のミッションは、マンソンの写真を撮ることです」と意気込んでいたロッキング・オン編集部・松村氏だったが、すごくスッキリとした顔でカッコよく写ってますね、マンソン。(小池宏和)

セット・リスト
01:Antichrist Superstar
02:Disposable Teens
03:The Love Song
04:Little Horn
05:The Dope Show
06:Rock Is Dead
07:Tourniquet
08:Personal Jesus
09:mOBSCENE
10:Sweet Dreams (Are Made Of This)
11:Irresponsible Hate Anthem
12:1996
13:The Beautiful People
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