[※なお、以下のテキストにはセットリスト含め演奏内容に触れている部分があります。ツアー・ファイナル=沖縄公演のネタバレ回避希望の方は3月25日のファイナル公演終了後にご覧戴ければ幸いです]
暗転した場内で、ステージを覆う白いスクリーンに映し出されるコンセプチュアルな映像。スクリーン越しに響く、光村のアコースティック・ギターと口笛……最新アルバム『HUMANIA』の静謐なオープニング・ナンバー“Heim”で、記念すべき一夜は始まった。そして、アルバム通りの流れで、古村大介のギター・サウンドが赤黒く渦巻くロックンロールの世界へ! さらにヘヴィ・メタル〜インダストリアルな硬質サウンドを轟かせる“業々”で、女性率高めのアリーナも客席もヘッドバンギングの嵐に叩き込んでみせる。『HUMANIA』のハード・エッジ・サイドの象徴のような2曲と「幕張! NICO Touches the Walls、ここ千葉県に帰ってきました! 遠慮なしにこいよ!」(光村) 「最高の1日にしようじゃないか!」(対馬祥太郎)とアグレッシブに会場に呼びかけながら挑んでいく4人+サポート・キーボード野間康介のモードが、身震いするほどの高揚感を生み出していく。そのエネルギーを“友情讃歌”の会場一丸の高らかなクラップ&シンガロングへとつないでみせた後は、キラー・アンセム“ホログラム”の切れ味鋭いサウンドが響き渡る!……という序盤だけですでにクライマックス状態の熱気だ。
「いやあ、これ一瞬で仲良くなろうと思っても無理な話だよね?」と、巨大な空間を見回しながら光村は上気した顔で笑ってみせる。「千葉県出身の人、どれだけいますか?(観客が挙手)……結構いるね! さわやかハートちば!(笑)。それ以外の人は『アン千葉県』ですか?」とさらに呼びかけながら、「全国回ってきて、バンドの演奏は最高にあったまっております!」とこの場の熱気を全身で謳歌した後で、対馬&坂倉心悟が繰り出す“Endless roll”のタイトで清冽なビート、“恋をしよう”のスロウ&メロウなポップ感……といった『HUMANIA』の多彩な音世界を、“泥んこドビー”のロックンロールや、アコギの響きが胸に迫る“波”といった楽曲群と織り交ぜながら次々に披露していく4人。アルバム・タイトル通り、喜怒哀楽その他すべてが渾然一体となった「人間」そのものに真っ向からフォーカスしたアルバム『HUMANIA』。それは取りも直さず、衝動とともに叩きつけるダイレクトなロックンロールの極致と言うべき前作『PASSENGER』を完成させられたからこそ、4人で踏み出すことができたさらなる音楽的冒険の産物でもあった。『PASSENGER』のストレートなロックンロールがNICOならではの華麗さとポップ感を帯びていたのと対照的に、ヘヴィ・ロックから穏やかなポップ・ナンバーにダンス・ビートまで凝縮した『HUMANIA』から浮かび上がってくるのは、楽曲のジャンルやスタイルを問わず、そのメロディと4人のアンサンブルが持っている強靭なロック感そのものだった……という「今」のNICOそのもののロックンロール・マジックが、ツアーを回ってさらに鍛え上げられた演奏の表現力と訴求力によって、圧巻のエネルギーを放っていく。
「ツアー本編とはセットリストの趣向も変えて、『HUMANIA』のみならず、NICO Touches the WallsとしてのHUMANIA化を目指してセットリストを組んでみました。すべて千葉に捧げる想いで……最高に楽しみにしてきたライブなんで」と光村もMCで語っていたように、この日のライブが提示していたのは、『HUMANIA』という作品世界そのものというよりは、より「何をやってもNICO」な状態へと踏み出した彼ら自身を、過去曲も含めたプレイやサウンドスケープでもって体現していく、とでも言うようなアクトだった。だからこそ、ミラーボールきらめくエレクトロなダンス・ロック・ナンバー“カルーセル”、古村のギター&坂倉のベースラインが激しくうねる荒馬ロックンロール“THE BUNGY”を経て、この日が初披露となった新曲“夏の大三角形”のどこまでも爽快でダイナミックな世界へ――と目まぐるしく楽曲の色合いが変わっていっても、そこには紛れもない「NICO Touches the Wallsのロックンロール」が息づいている。しかも、それを「たまたま」とか「結果的に」ではなく、自分たちの意志で鳴らしていることが誰の目にもわかる。そんなステージだった。
特に光村。序盤から1曲1曲全力で生き急ぐような絶唱を聴かせながら、“Broken Youth”で高々と拳を突き上げるオーディエンスを「その上げた拳で、つまんねえもんは全部ぶっ壊していけ!」と鼓舞し、自らも負けじと全精力を絞り尽くすような壮絶な歌声を響かせる。「この幕張公演がやれて、本当によかったと思ってます。本当にありがとう!」というありったけの感謝の想いに、ひときわ熱い拍手が広がる。ラスト・ナンバー“バイシクル”ででっかい歓喜の光景を描き出し……本編終了。アンコール待ちの間、ステージ頭上のヴィジョンに浮かび上がる「ここで皆さんに協力してもらいたいことがあります」の文字。「皆さんの拍手を録音し、その拍手を次の曲で使わせていただきます!」という案内に合わせて5000人で大迫力のクラップを無事録音&サンプリングーーしたところで、なんとメンバーがアリーナ後方から、高校生の吹奏楽部女子8人とともに「鼓笛隊NICO」的な編成で、通路を練り歩きドンチャカドンチャカと入場してくる。やがてステージに到達した5人+8人が演奏するのはもちろん“手をたたけ”。「今日しかやれないスペシャル・バージョンでやりたいと思います! みんなの手が、真っ赤っ赤を通り越して、紫色にうっ血するまで叩いてもらっていいですか!」というコールから、ただでさえ目映く勇壮なナンバーである“手をたたけ”が、パワフルなブラス・サウンドと大音量クラップ轟く音の巨砲となって幕張メッセ イベントホール狭しと響き渡る! 誇らしさにも似た充実感と多幸感が胸に広がる。
「今日はこの場所でライブができて……胸がいっぱいです」と、今この瞬間の感慨を再び語り出す光村。「この4月でNICO Touches the Wallsは結成8年になろうとしてるんですけど……ようやくこういうふうに、故郷に錦を飾る想いでライブができて嬉しいと思うし。8年間、僕らとしては短い時間ではなかったし、たくさんつまづいて、『俺、音楽じゃねえんじゃねえかな』ってくらい落ち込むこともありました。でも、1歩1歩の積み重ねでここまで来たんだなと思うと、その1歩1歩は無駄じゃなかったんだなって思います」。ステージを見つめその一言一言に聴き入るオーディエンスに、さらに続ける光村。「1mmずつかもしれないけど、今日という日があれば、まだまだ頑張れる気がします。一緒に頑張ろうね幕張! もっともっといいバンドになって、日本を代表するバンドって思ってもらえるように……俺らの時代が来るように頑張ります! 今日は本当にありがとうございました!」。彼らがこの日の最後の曲に選んだのは、『HUMANIA』の“demon(is there?)”。《夢抱いて 不安抱いて 最期を迎えるまで ただ 歩く今日を 向かう明日を 愛したくて 僕らは生きるだろう》……真摯な決意を刻んだこの曲の最後、「どんだけ神様に嫌われようと、自分の足で頑張って生きろ!」と光村は叫んでいた。すべての音が止み、野間を讃えつつ送り出し、ステージには光村/古村/坂倉/対馬の4人が残る。「俺ら頑張って、千葉県の星になるかんな!」というメッセージとともに深々と一礼する4人に、惜しみない拍手と歓声が広がる……あまりにも感動的なステージの、あまりにも感動的な終幕。2012年の、そしてこれからのロックを背負い前進させていく覚悟がそのまま音になったような、最高のステージだった。(高橋智樹)
[SET LIST]
01.Heim
02.衝突
03.業々
04.友情讃歌
05.ホログラム
06.泥んこドビー
07.Endless roll
08.波
09.恋をしよう
10.極東ID
11.トマト
12.カルーセル
13.THE BUNGY
14.夏の大三角形
15.妄想隊員A
16.Broken Youth
17.バイシクル
Encore
18.手をたたけ
19.demon(is there?)