MTV Unplugged:9mm Parabellum Bullet @ Billboard Live TOKYO

MTV Unplugged:9mm Parabellum Bullet @ Billboard Live TOKYO - pics by Yoshiharu Otapics by Yoshiharu Ota
 全席着席スタイルの「Billboard Live TOKYO」の、いかにも「紳士淑女の社交場」的なアーバンな佇まい。一面ガラス張りになったステージ背後から見渡せる六本木の夜景……そんな会場に響き渡る、「さあ始まった。みなさんこんばんは! もう、会場中から伝わる……緊張感? みんなのこの『観慣れねぇ』感? 俺たちも、こんなのをバックにやるのは初めてなんで。初めて同士、仲良くしましょう!(笑)」の声の主は9mm Parabellum Bullet・菅原卓郎! それこそエリック・クラプトンからオアシス、ニルヴァーナなど大物バンドもそのラインナップ名前を連ねる、MTVの人気企画『MTV Unplugged』。日本でも宇多田ヒカル、平井堅、布袋寅泰、KREVAなど錚々たるアーティストが出演してきた、アコースティック・アクト&ステージとの密接距離感で唯一無二の音楽空間を生み出す『MTV Unplugged』に、普段は日本屈指のエクストリームなサウンドをぶん回しまくっている9mm Parabellum Bulletが見参である。この日のプレミアムなステージを観覧できた75組・150名の観客のみならず、それこそライブハウスから武道館や横浜アリーナといった大会場まで圧倒的な熱量で沸かせてみせる彼らにとっても、極めて異例の、そして貴重な体験だったに違いない。

 「『MTV Unplugged』をやらないかと声をかけていただいたのは、たぶん……横浜アリーナで僕らがアコースティック・セットをやった時に、『tvk(テレビ神奈川)Unpluggedだよ、横浜だし』って言ったのを真に受けてくれたからだと思うんですけど(笑)」と卓郎も言っていた通り、昨年6月に横浜アリーナで開催したワンマン・ライブ『Movement YOKOHAMA』でも、“Sleepwalk”“Living Dying Message”“The World”の3曲を『tvk Unplugged』コーナーとして披露する一幕があったのだが、今回は晴れて本家(?)『MTV Unplugged』での、1ステージ丸々、全曲アコースティックでのライブである。通常の彼らのライブとは異なり、ステージ手前の向かって左側に菅原卓郎・右に滝善充、ステージ奥の左に中村和彦・右にかみじょうちひろ、という立ち位置でのステージング。卓郎:フォーク・ギター/滝:ガット・ギター/和彦:アコースティック・ベース/かみじょう:この日のために特別に組んだというアコースティック仕様のツーバス(!)ドラムセット……というビジュアルだけでも、通常の9mmのステージとはまるで異なる。が、しなやかで豊潤なアレンジの“The Revolutionary”から始まったこの日のアクトは、鉄壁の9mmナンバーの数々が内包している楽曲としての奥深さを、アコースティック・サウンドの新たな装いによって見事に証明していた。

MTV Unplugged:9mm Parabellum Bullet @ Billboard Live TOKYO
 スパニッシュ・テイストあふれまくりの滝ギター・プレイ&最後に添えたマイナー6thのコードによってムーディーな響きを幾重にも増幅させていた“Living Dying Message”。スリリングな5拍子のビート感をアコギの響きと巧みに織り合わせた“Sleepwalk”。「9mmの生粋のファンでも『これは新曲じゃないか』と思うような『様変わりコーナー』の曲」(卓郎)という説明通り、爆裂メタル・ディスコからゆるやかな3拍子ロック・バラードへまさかの変貌を遂げた“Discommunication”。卓郎の弾き語りからしっとりスタートしつつ悠久の広がりを見せる“The World”。ギターのボディをパーカッションよろしく叩いてリズムに彩りを添える滝。途中、スティックの代わりにハンガーでドラムを叩いてみせ、客席を「?」と「!」で包んでみせたかみじょう。音量的には静かなステージの中にも、一筋縄ではいかない9mmのバイタリティは脈々と息づいているのがわかる。「次の曲はカバー曲です。インストゥルメンタルで、下の世代になってくるとちょっとグッとこない曲ですけど……」という卓郎のMCとともに、滝が鍵盤ハーモニカで奏でたメロディは、かつて『金曜ロードショー』のオープニングを飾っていたピエール・ポルト・オーケストラの“フライデーナイト・ファンタジー”! 続けて披露した“どうにもとまらない”カバーでの歌謡魂炸裂っぷりとはまた違った表情を垣間見せた瞬間だった。

 そして。1つ1つの音の響きがクローズアップされるこの『MTV Unplugged』にあって、格段に表現力を増した卓郎のヴォーカルがひときわ伸びやかに響き渡っていたのが印象的だった。アンプラグドとは思えないほどに会場一丸の高らかなクラップが沸き上がった“Black Market Blues”はもちろん、「夜景の似合う曲になったのではないかと……」(卓郎)という“キャンドルの灯を”のミステリアスな8ビート・アレンジと響き合い、“カモメ”の2本のギター・フレーズの絡み合いの上を高らかに飛翔する卓郎の歌声(そして滝とのオクターブ違いのハモリ)が、ゾクゾクするほどの美しさを伴ってこの独特の空間の隅々まで広がっていった。

 原曲のメタリックな性急なコード・ストロークを滝がスパニッシュ・ギターの如き艶やかな指弾きで奏でた“Punishment”。「今日は来てくれて本当にありがとうございました。またどこかで会いましょう! こういう形じゃなくて、普段のライブでも!」という卓郎の言葉から流れ込んだラスト・ナンバーは、9mmの衝動結晶盤とも言うべき1stミニアルバム『Gjallarhorn』(2005年)の幕開けの曲“(teenage)Disaster”! 至って軽やかに、しかしタイトに、ほぼ原曲通りのアレンジで楽曲を再現する1音1音の確かさが、彼ら4人がこの6年半で鍛え上げてきた「9mmのロック」の強度をリアルに物語っていた。この日のステージのMTV初回放送は6月30日(土)20:00~21:00!(高橋智樹)

MTV Unplugged:9mm Parabellum Bullet @ Billboard Live TOKYO
[SET LIST]
01.The Revolutionary
02.Living Dying Message
03.Sleepwalk
04.Discommunication
05.次の駅まで
06.The World
07.フライデーナイト・ファンタジー
08.どうにもとまらない
09.Black Market Blues
10.キャンドルの灯を
11.悪いクスリ
12.カモメ
13.Punishment
14.(teenage)Disaster
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