アンダーワールド @ 幕張メッセ

ニュー・アルバム『オブリヴィオン・ウィズ・ベルズ』を引っさげて、アンダーワールドがやってきた。「OBLIVION BALL」と題された今回のイヴェントは、そのアンダーワールドをメインに、120デイズ、シミアン・モバイル・ディスコ、ジ・オーブ、そしてDJにアンドリュー・ウェザオールという布陣で脇を固める構成だ。幕張メッセという巨大な会場で夜通し行われるダンス・ミュージックのイヴェントという意味では、エレクトラグライドに通じる雰囲気を持っていると言ってもいいだろう。

先陣を飾るのはノルウェー出身の4人組、120デイズだ。今回唯一のロック・バンドだが、エレクトロニクスを前面に押し出し、ビートとグルーヴで観客を巻き込んでいくその音楽性は、むしろダンス・ミュージックとして非常にすぐれている。今年のサマーソニックに続いて早くも2度目の来日で、そのルックスも含めて、着実にファンベースを拡大しつつあることがわかる、そんなステージだった。

インターバルのあいだはウェザオールのDJが入る(働き者です)。そしてステージにはシミアン・モバイル・ディスコが登場だ。ニュー・レイヴの流れで語られることの多い彼らだが、ジャスティスやデジタリズタムなど同時期に出てきたダンス・アクトに較べると、サウンド自体はむしろベーシック。それは言い換えれば普遍的なダンス・ミュージックということだ。シングル“ハスラー”などキラー・トラックを挟みつつ、1時間のセットをハイ・テンションに駆け抜けた。

さあ、いよいよ真打ちの登場である。アンダーワールドのライヴのクオリティの高さと安定感については、今さら書くまでもないだろう。しかも今回は原点回帰ともいわれる明快な新作を携えてのステージである。期待どおり、「これぞアンダーワールド!」といえるような、徹頭徹尾アッパーな、そして名曲続出の、あっぱれなパフォーマンスだった。ハイライトはやっぱり“ボーン・スリッピー”。あのイントロが鳴った瞬間、数えきれないほどの拳が突き上げられる。アンダーワールドの生み出した唯一無二のアンセムは、その求心力をいまだ失ってはいない。

そのアンダーワールドが去ったステージを、最後に再び盛り上げたのがジ・オーブ。アレックス・パターソン以下5人編成で登場したのだが、生のベースとドラムがデジタルなビートに慣れた耳に新鮮に響く。ファンク、レゲエとテクノを巧みに織り交ぜつつ、ユルめのグルーヴで見事に締めてみせた。アンダーワールドが終わった時点で帰った観客が少なからずいたようで、フロアに若干のゆとりができていたのが残念といえば残念だったが。

トイレがやたら混んでたり、飲食のブースに異常な行列ができていたり、イヴェントとしては問題点はなかったわけではないが、ライヴはひとつ残らず素晴らしかったし、一晩で90年代から現在までのダンス・ミュージック史を総ざらいするようなラインナップの中で、やはりアンダーワールドという存在の大きさがひしひしと伝わってくる、そんな夜だった。(小川智宏)
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