トミ、前よりよくなってないか?
トミのドラム、なんかやたらかっこよかったのです。こちとらエレカシのライヴ、もう20年以上観ているわけで、そりゃあ時期によっていい時もよくない時もあったとは思うが、その歴史をふり返っても特筆したくなるくらい、よかった。ひたすらに重たい、どすんと体当たりするようなあのトミのドラムの最強ポイントが、これでもかってくらい全編に出ていた気がする。復帰できてうれしい、みたいなこともあったかもしれないけど、それだけでこんなに変わるかなあ? と、不思議になるほどでした。単に、トミが得意なタイプの曲が多かったとか、そういう理由もあるのかもしれませんが。言っておきますが、快気祝いに誉めてるのではありません。事実です、少なくとも私にとっては。いや、私だけじゃないです。「でも、そう感じてるの俺だけかも」と思い、隣にいたジャパン編集部井上貴子にきいてみたところ、「そう! 私もそう思ったの! なんでだろうね?」と、同意されたので。
で、セットリストは、ツアー中なので全部は書けませんが、でもレーベルには「何曲か程度なら」と許可をいただいたのですが、えーと、じゃあ、自分で書いてもいいと思う範囲で書きますね。まず、“東京からまんまで宇宙”“ワインディングロード”などの、ニュー・アルバム『MASTERPIECE』の曲を中心に……というか、「中心に」じゃないか。全曲やってたな。『MASTERPIIECE』を全曲、あと、“珍奇男”や“悲しみの果て”などの過去の代表曲たちを、全体の1/3くらいの曲数やってました。いや、代表曲だけじゃなかった。ここ数年、どのツアーでも必ずやっているような定番の曲もやったけど、「えっマジ?」みたいな、めったにやらない昔の曲も、2曲くらいやった。「うわ、レア!」と、大変にうれしいものがありました。
そして。このツアーを何本か観ている熱狂的エレカシファンの知人にきいたんですが、今回、毎日同じセットリストではなく、しかも「セットリストが2パターンあってそのどっちか」みたいなことでもなく、1本ずつ、ちょっとずつ、違うそうです。だから、このツアーにおいて、昨日初めてプレイされた曲もあったという。じゃあ、このあと新たにこのツアー初お披露目の曲もあるかもしれないってことか。ないかもしれないけど。あと、『MASTERPIECE』の曲を全曲やる、というのも、今後もすべてのツアーでそうなのかどうかはわからないけど。でも、うわ、そうかあ。うー、また行こうかなあ、このツアー。今日(Zepp Tokyoの2日目)は無理なんだよなあ、俺。じゃあそのあとは……と、思わずこのあとのスケジュールを凝視してしまいました。
って、また観たくなっているのは、レアな曲を聴けるかも、というだけではなく、トミがよかったからというだけでもなく、ライヴが、全体に、本当に、めったやたらとすばらしかったのだ。MC、後半に1箇所(といってもほとんどメンバー紹介しただけ)と、アンコールでちょっとだけしゃべったのの、2回のみ。あとはひたすらがんがんどんどん曲をやっていく、という構成で、それがなんだかもう「攻めまくり!」みたいなテンションで大正解。でまた、『MASTERPIECE』の曲たち、どれもいちいちいいし。
本当にテンションが上がったし、本当に元気になった、このライヴを観たことによって。本編は、「落ち込んでいる自分を鼓舞してくれる」みたいなウェットな感じじゃなくて、バカ高いドリンク剤とかイリーガルな何かのように、身体に直接ガツンと効いてくる。で、アンコールでは、うって変わってウェットに大感動、大感涙。そういうライヴでした。というのは私にとってだけで、もちろん観る人によって受け取り方はいろいろ違うだろうが、でも、「今回のツアー、なんかいまいちだったよね」って人はいないんじゃないかと思う。特に、長年観慣れている人であればあるほど。
そういえば、今回のツアーから、サポートメンバーも、長年活動を共にしたヒラマミキオミッキー(ギター)と蔦谷好位置(キーボード)という編成ではなく、今回からギターはフジイケンジ(The Birthday)、キーボードはなし、楽器は一応置いてあるんだけどたまに宮本が弾くだけ、というふうに変わったし。どっちも超いいプレイヤーだし、そのままでもいいじゃん、と思ってたんだけど、ライヴを観て、「ああそうか、そういうことか」と、そうした理由がわかった気がした。このソリッドでミニマムな編成が、今のエレカシには合っているんだろうなあ、と。
実際、フジイケンジ、いいギター、弾いてました。あと、メンバー紹介の時、宮本に「最近ちょっとしゃべりました。打ち合わせとかで」と言われてました。あれどういう意味? と、前述の熱狂的なファンにきいたところ、それまでのツアーでは「ギター、フジイケンジ! かっこいい!」とか「日本のスーパーギタリスト!」とか紹介したあとで、「ほとんどしゃべったことありません」とひとこと足していたそうです、宮本。だから、前回のライヴとこのライヴの間で、ちょっとしゃべった、ということですね。