シンプルで、大げささやカマシや装飾などが一切ないし、サウンド・スタイルもオーソドックスだし、音像も「厚い」「薄い」でいうと後者だし、全体に「過剰」か「淡々」のどっちかと問われるなら明らかに「淡々」だし、バンドもヴォーカル&ギターの本人以外はギターとベースとドラムというごくあたりまえなフォーマットだし、ステージでの本人、特にアクションがあったり饒舌にMCしたりするわけでもないし。むしろ、MC、おぼつかなくて、しゃべり終わったところでバンマス(ベースのキダタマキ)に「今日は、どうでしたか?」とかきいてたし。
そんな人がやっているそんな音楽なのに、すごいのだ。簡単で、聴いたまんまで読んだまんまなのに、1ライン1ラインが、ひとことひとことが、いちいち「言い得ている」「核心を突いている」歌詞。日本語がのっかるものとして、無理のあるところや不自然なところが1ヵ所たりともないのびやかなメロディ。すんごいハイトーンだったりすんごい個性的だったりするわけじゃない、どっちかというとヴォーカリストっぽくない普通の子っぽいそれなのに、耳に入ってくることそれ自体が異様に心地いい歌声。
誰もが理解できる、誰もが思いあたる、誰もが共有できることを歌う。というのは、多くの人に共有され愛される、普遍的なものになる場合もごく稀にあるが、「普通」「あたりまえ」「言われなくてもわかっている」「そんなみんなが言えそうなことあなたが言わなくてもいいじゃん」という結果になってしまう場合もある。というか、ほとんどがそうだ。この宇宙まおという人が、なぜ「ごく稀に」の側なのか、何をもってそんなことが可能になっているのかは、何度観ても、何度聴いても、よくわからない。わからないが、パッと聴くと最もキャッチーで最もおいしい曲である(と僕は思う)“ロックの神様”よりも、“バイバイ”と“満月の夜”の2曲の方に、その底知れぬ威力が、より濃く、より強く表れているように思う。
この2曲が持つ普遍性はすごい。特に“満月の夜”は、もう、シャレになっていない。「満月の夜 空も飛べる気がしたよ 物語を はじめよう はじめなきゃ」。ね。誰でも書けそうでしょ。でも、書けないのだ。そして、聴いていると本気で「物語をはじめなきゃ」と思ってしまうのです。何を始めんだおまえが。終わりかけのくせに。という話ですが、それは置いといて。「100年後も歌い継がれる歌」とか、よくある言い方すぎて好きじゃないが、でもこの曲、本気で、そのレベルだと思う。
セットリスト
1.穴だらけ
2.バイバイ
3.みじめちゃん
4.満月の夜
5.逢瀬
6.新曲
7.ロックの神様