『UKFC on the Road 2012』@新木場スタジオコースト

『UKFC on the Road 2012』@新木場スタジオコースト - pic by 石井亜希pic by 石井亜希
インディ・レーベルでありマネージメントオフィスである、UKプロジェクト所属のPOLYSICS、The telephones、BIGMAMA、THE NOVEMBERS、[Champagne] の5バンドによるイベント・ツアーとして、昨年夏、仙台・新潟・福岡の3都市を回った「UKFC on the Road」。その昨年夏は、確か、フェスやイベントで行かない場所を回る、というような趣旨で、ゆえに東京や大阪では行われなかったが、今年は大阪・名古屋・新潟・仙台・東京・福岡の6ヵ所に拡大。さらに、セミファイナルにあたるこの東京公演は、上記の5バンド+6バンドの計11組が出演。14:00開演で21:30終演・新木場スタジオコーストで、普段のステージと外のテントステージを使った2ステージ制(FRONTIER STAGEとFUTURE STAGE)、という、ちょっとしたフェスのような形式で行われた。1つのステージでライヴが終わってもう1つのステージでライヴが始まるまで、5分もしくは10分のインターバルが設けられているので、観ようと思えば全アクトを観られるタイムテーブル。
なので、全部観ました。以下、時間軸に沿って、セットリストとショート・レヴューです。


『UKFC on the Road 2012』@新木場スタジオコースト - pic by 古渓一道pic by 古渓一道
14:00 the telephones (FRONTIER STAGE)
1.Love&DISCO
2.I Hate DISCOOOOOOO!!!
3.A A U U O O O
4.Yeah Yeah Yeah
5.HABANERO
6.D.E.N.W.A
7.Monkey Discooooooo

「体力を最後まで残さないで俺たちで使っちまえー! 踊ろうぜー!」という石毛の雄叫びでスタート。バンドも、お客さんも、もういきなりすごいアガり方。2Fは関係者・出演者席になっていたんだけど、その2Fまでが振動でぐらぐら揺れるほど。セットリストも、バンドのパフォーマンスも、本当に、全部が1曲目もしくはラストの曲みたいなテンションだった。それは言いすぎだが、3曲目と4曲目は違う気がするが(telephonesのレパートリーの中ではミドルテンポだし)、でもそれ以外は全曲本当にそんな感じだった。で、バンドが意識してそういう曲を並べた、というところもあったと思う。で、演奏もいい。音もいい。ノブのMCが、テンション上がりすぎたせいか、後半ちょっとヘンな感じになっていたのも、いい。5曲目でノブがカウベル叩きまくったあと、石毛がギターを置いたと思ったらいきなり側転をキメたのも、いい。文句なし。最高のスタートダッシュでした。


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14:40 RIDDLE (FUTURE STAGE)
1.MISTAKE
2.another wish,another future
3.starfield
4.G.D.C.P
5.DRUM SESSION
6.DANCE WITH MY SECRET
7.OPEN YOUR EYES

約半年間の休止を経て、7月に再始動したRIDDLE。ベースSHUNSUKEのMCによると、バンド存続の危機だったようで、でも復活、ということで、彼は「RIDDLE STRIKES BACK!」というロゴが入ったTシャツを着用、物販でも販売していた。1曲たりとも、一瞬たりともたるんだりゆるんだりする瞬間のない、はりつめっぱなしのテンションで、全7曲をプレイ。今、バンドの調子がよいことがよくわかるステージ。あっという間だった。あと、超満員でいきなり入場規制。この日、このバンドを観ている間が、私、この夏で最も短時間でたくさん汗をかいた時間でした。


『UKFC on the Road 2012』@新木場スタジオコースト - pic by 古渓一道pic by 古渓一道
15:20 LOST IN TIME (FRONTIER STAGE)
1.夢
2.バードコール
3.列車
4.ひとりごと
5.希望
6.あしたのおと

大岡源一郎の担当楽器がドラムなのは変わらないが、1曲目は海北が歌とキーボードで三井律郎ベース、2曲目は三井がギターで海北は歌とキーボードのまま、3曲目から海北が歌とベース、三井がギター、という本来のフォーマットに戻る。でも、それが「本来の」とか思ってるのは、俺みたいに古くからライヴ観てる奴だけか、と思う。「人間はこれ以上大きな声は出ません」とか「これよりもエモーショナルな歌い方はできません」という生物学的な限界をすべて超えていくような海北のヴォーカル、やはり、何度聴いても、何年経ってもすごい。いや、年が経つごとにどんどんすごくなっているような気もする。あと、後半で披露された、大岡源一郎の「ドラムを叩きながら落語家のような口調でしゃべるMC」、効いていた。海北の歌にじいっと聴き入って、しーんとシリアスになっていたフロアの空気が、あれでほぐれた。あと、選曲と曲順もばっちり。このイベントでこの尺、ということを考えると、完璧と言ってよいのでは。


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16:00 きのこ帝国 (FUTURE STAGE)
1.退屈しのぎ
2.夜が明けたら
3.WHIRLPOOL
4.足首

さっきまでおそろしく暑かったFUTURE STAGEの体感温度が、音によって、歌によって、下がった気がした。このひんやりした存在感、稀有だなあと思う。三拍子を多用した、そして淡々とした、感情やテンションの揺れが表に出ないステージング。でも、その音や声やたたずまいから伝わってくるものの情報量は、すごいものがある。3週間前にヴォーカル&ギターの佐藤が、フジロックの木道亭で、ひとりで弾き語りをやっていたのを観た時にもそう思ったが。あと、この人、実は、自分ができること、あるいはやりたいことの、まだほんの一部しか稼働させてないんじゃないか、という気がする。それでこのステージでこの音楽。すごい才能だと思う。


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16:40 POLYSICS (FRONTIER STAGE)
1.Heavy POLYSICK
2.カジャカジャグー
3.Shout Aloud!
4.Young OH! OH!
5.ムチとホース
6.Lucky Star
7.シーラカンス イズ アンドロイド
8.How are you?
9.Let’s ダバダバ
10.Electric Surfin’ Go Go

実質的な1曲目が“カジャカジャグー”だったところに顕著なように、「フェスで勝てる鉄板の選曲」「でも曲順や構成は『いかにもフェス』な定番の流れじゃない」というステージ。もうおそろしく盛り上がる。ラストの10曲目なんて、2F席、地震のようだった。あと、4曲目でハヤシのアオリでフロア一面でタオル回しが起こったが、そしてタオル回しってどこのライヴでもよく見る定番ではあるが、そこらじゅうのタオルがあんなにも高速回転するさまを見られるのは、ポリのこの曲と、RIP SLYMEの“JOINT”だけだと思う。タオル、ちぎれそう。
6曲目は、8月22日リリースのニュー・シングル。これぞポリのシングル、しかもポップ度倍増みたいな理想的な仕上がりの、フミとハヤシのツイン・ヴォーカル曲。これ、今後、フェスとかでの鉄板曲になると思う。あとハヤシ、「どうだいみんな。今日は…フェスみたいだろ? 祭りみてえじゃん! ♪祭りだ祭りだ~」と、ことあるごとに北島三郎を歌っておられました。


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17:20 武藤昭平 with ウエノコウジ (FUTURE STAGE)
1.キリンの首 
2.ブエナ・ビスタ 
3.スウィート・タウン 
4.リデンプション・ソング 
5.サルー
6.アミーガ・アミーゴ 

武藤昭平は歌とアコースティック・ギター、ウエノコウジはアコースティック・ベース(という呼び方でいいんだろうか。セミアコとかじゃなくて、でっかいアコースティック・ギターに無理やりベースの弦を張ったような楽器です)、2人で座ってプレイ。ちなみに、2人とも、呑みながら。元々そうだけど(特にウエノコウジは)、2人ともギターやベースをまるで打楽器みたいに弾く、そのアタック音の強い感じが新鮮。と思いながら観ていたら、ラストの曲の途中で武藤、立ち上がって前へ出て、アコギをパーカッションのように叩き始める。ウエノ、「これ、ドラムソロね」と解説。すると、ブチッ!とすごい音がして。ギターのシールドがぬけてしまう。「あっ!……」と固まる武藤。ウエノ「負けるな武藤さん、そのまま続けるんだ。誰かが差してくれる!」。ローディが差してくれて、ドラムソロ続行。さらに歌に戻ったあと、ウエノ、演奏しながら「武藤さん、今の歌詞の間違いはひどいですよ」などとツッコミ。「演奏しながら解説やツッコミを入れる」というこれ、かなり斬新でした。笑った。


『UKFC on the Road 2012』@新木場スタジオコースト - pic by 石井亜希pic by 石井亜希
18:00 BIGMAMA (FRONTIER STAGE)
1. beautiful lie,beautiful smile
2. 荒狂曲"シンセカイ"
3. #DIV/0!
4. Mr. & Mrs. Balloon
5. Paper-craft with 川上洋平
6. I Don't Need a Time Machine
7. 秘密
8. until the blouse is buttoned up

「わかってたけど、わかってたけど、最高ですね」。1回目のMCで金井政人(vo&g)が思わずそう言ってしまうほどのオーディエンスのアガり方だった、頭から最後まで。おそらく全出演アーティスト中で最も、フロアの肩車率、高し。肩車イコール盛り上がっている、ということではべつにないけど、でも何か、すごい眺めだった。
ただしバンドは(特に金井は)、それにあおられてどんどんテンションを上げていく、というだけでなく、その反面でじゃあここで何をやればいいのかを瞬間瞬間で考えて実行に移しているみたいな、そんな冷静さやシビアさが、表情から垣間見える。
4曲目のニュー・シングルをやる前のMC。「新曲持ってきました。あんまりむずかしいこと考えないで、頭の中からっぽにして、勝手に楽しんでください」。「勝手に」が入るところが、金井だなあと思う。で、いいなあと思う。
5曲目、「今日のライヴをみんなとの特別な思い出にしたくて、今日はスペシャルゲスト呼んでます」という金井の呼び込みで、[Champagne] の川上洋平が登場。金井に合わせたのかスカート姿、ギターは持たず、スタンドマイクでヴォーカルをとる。ラストの“until the blouse is buttoned up”、後半で「♪おおお~」の大シンガロングが巻き起こったところで、金井、「『ディスコ!』よりでかい声がききたいな」と、トップのtelephonesが「ディスコ!」コールをやってたのをネタにしたりもしていました。


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18:40 paionia (FUTURE STAGE)
1.スケールアウト
2.浪人
3.ステージ
4.夜に悲しくなる僕ら
5.東京
6.素直

1,2曲ちらっと観たことがあった程度で、ちゃんと観たのはこれが初めてだった。で、とっつきやすくて日常的で、いかにも下北な感じの3ピースのギター・バンド、みたいなイメージを勝手に持っていたので、ちょっとびっくりした。サイケだ。特にヴォーカル&ギターの高橋勇成の声、発した瞬間に聴き手をあらぬところへ連れていくような響きを持っている。その声で発される歌詞そのものは、日常的な感じなのに。というか、さっきから日常的という言葉を使ってるけど、そもそも日常的とか非日常的ってなんだっけ? 何が前者で何が後者なんだっけ? というような根本的なところまでさかのぼって考えたくなる、そういう歌を歌う人だと思った。「故郷の福島を歌った歌です。タイトルは”東京”だけど」という前置きで演奏された5曲目が、特にキた。


『UKFC on the Road 2012』@新木場スタジオコースト - pic by 石井亜希pic by 石井亜希
19:20 THE NOVEMBERS (FRONTIER STAGE)
1.Stay Away
2.永遠の複製
3.dysphoria
4.彼岸で散る青
5.holy

サイケといえばこのバンド。と決めつけてはいかん気もするが、でも、いわゆる昔からあるサイケデリック・ロックではなく、2012年の今を生きている人たちがそういう思想性の音楽をやるとこうなります、という意味でのサイケだと思う。ステージ後方の壁、全面をスクリーンとして、だからその前にいるメンバー4人もスクリーンの一部みたいになって、映像を投影しながら進んでいくステージ。音楽性としては、今日のこのFRONITER STAGEの並びでいうと、LOST IN TIME以上に浮いている。というか、それ以前にそもそも、この「UKFC on the Road」のメンツの中で浮いている。単に、ワーッと暴れられるような音楽性ではない、ということだが、だからフロアは、これまでともこれ以降とも、明らかに違う雰囲気だった。みんなじいっと固まっていた。ただし、固まってはいるんだけど、ホールを出ては行かない。満員のまま。ちゃんと届いている感じがとてもした。
あと、「『UKFC on the Road』の、『on the Road』って何かなと思っていて。道の途中、っていうことなのかなって。あの、楽しいこととかきれいなこととかすてきなことって、自分から行かないといけないから。きこえてくるものと聴きに行くものって違うと思うんですよね」というようなことを、小林祐介(vo&g)がMCで言っていて、何か腑に落ちました。


『UKFC on the Road 2012』@新木場スタジオコースト - pic by 古渓一道pic by 古渓一道
THE★米騒動 (FUTURE STAGE)
1.Hys
2.Border
3十九歳
4.祝女
5.家政婦はなにも見ていない 
6.ブラック•ダンス•ホール
EN.女の娘

終わったあと、お客さんも関係者も、みんなやたら興奮して口々に絶賛していた。とてもよくわかった。自分もそうだったので。歌詞とか、曲タイトルとか、キャラクターとか、19歳という若さとか、ヴォーカル&ギターの石田愛実とベースの沖田笙子が向かい合ってマイク立ていて、でも沖田はほぼ正面向いて演奏してるから結果としてはバラバラの方向を向いてライヴやってる感じとか、「ここおもしろい」というポイントがいっぱいあるバンドだが、それ以前にそもそも、オーソドックスなロック・バンドとして優れていることがよくわかった。単純にギターのリフがかっこいいとか、ベースラインが耳に突き刺さってくるとか、歌詞がはっきりとヒアリングできるとか、ブレイク明けに3人で「ダン!」と音を合わせた時の迫力がすごいとか、そういう次元の話です。とてもよいバンド。


『UKFC on the Road 2012』@新木場スタジオコースト - pic by 石井亜希pic by 石井亜希
[Champagne]  (FRONTIER STAGE)
1.Kill Me If You Can
2.Rocknrolla!
3.言え
4.Cat 2
5.city
6.Waitress, Waitress!
EN.Don't Fuck with Yoohei Kawakami

1曲目、1ヵ月前に出たばかりのシングルでスタート。これ、つくづく、完璧な曲だと思う。リフ、リズム、サビの高揚感など、今の[Champagne]の最強ポイントが全部揃っている。しかも濃い。当然、いきなりものすごいテンションになるフロア。川上洋平(vo&g)、「今日、朝からいた人。(たくさん手が挙がる)あははは、すごいなあ。みんな、体力大丈夫ですか? それでこそUKプロジェクトのファンですね!」とか、「今日、フェスみたいじゃない? 最高だね。ムニャムニャ…フェスとか、ムニャムニャ…とかいうフェスよりも全然いいよね」と、言葉をにごしつつも、おそらくちょっと前に自分たちも出演したであろう(そしてきっと私がそのウェブ関係のスタッフのひとりだったりするであろう)フェスなどと比較したりしながら、がんがんステージを進めていく。「ステージを進めていく」に「がんがん」が付くのって、日本語としておかしい気がするが、でもそう書きたくなる感じだった、終始。バンドもオーディエンスも、MCの間も早く次の曲にいきたくてしかたないような、そして次に突入すると今のこの曲がいつまでも終わってほしくないような、そんな、歓喜と狂喜にちょっと「これで今日1日が終わってしまう」というせつなさも入ったみたいな空気。で、それ、何か、すごくいいものだった。
なお、アンコールは、telephonesやポリなど、今日の出演者の曲のメドレー。ちゃんと「トイス!」までコピーしておられました。あと、川上洋平、「また来年も絶対開催する、その時お会いしましょう!」と言い切っていた。


最後に2つ。
まず1つめ。お客、異常。出演者が口にしていたように、ほんとにフェスだった。「フェスみたいな」じゃなくて、まんま「フェス」のテンション。しかし、普通、フェスの時って、お客さんはぐるぐる移動したり休んだりしながら、お目当てのバンドの時にどかーんとはじけるわけだけど、FRONTIER STAGEのフロアではじけまくっているこの人たちは、LOST IN TIMEとTHE NOVEMBERSを除いて(その2バンドで暴れられても困るし)、ずーっとはじけまくっていることになる。それぞれ休憩はとっているんだろうけど、2Fから観ていると「ほぼおんなじ人たちがずーっとはじけてる」に見える。いったいどういう体力してるんだとか、楽しさが体力の限界を超えてるというか、明日大丈夫かとか、そういうことがとても気になりました。で、圧倒されました。
そして、2つめ。これ、もう、来年はフェスだと思う。お盆とはいえ平日開催なのに即完しているんだし、チケット買えれば来た人、少なくともこの2倍はいるだろうし。小規模なフェスならできると思う。野外希望。東京圏希望。週末希望。あと、日程、ROCK IN JAPAN FES.2013と当てないようお願いします、ということも、希望しておきます。(兵庫慎司)
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