今回の公演では、まず1組目に大阪出身のwaterweedが、2組目にはUKバンドのYour Demiseがゲストとして出演。音の密度というか質量が異様に高い4ピースwaterweedは、メタル成分多めのスクリーモでさっそくフロアを沸騰させてくれる。冷める隙を与えないといった感じのライヴ巧者ぶりを見せつけ、そのパフォーマンスを食い入るように凝視する人も多かった。一方、ラップ・ミクスチャーと叙情的にメロディアスな展開との間を行き来するUKのYour Demiseは、バンド・サウンドは荒削りながら強靭な喉とヴォーカル・スキルを遺憾なく発揮するエド・マクリーが目を引く。もしかするとグライム・シーン上がりなのではないかという実力派で、ラウドなサウンドの中から突き抜けて来る声の力はまさに「ロック・バンド専用ラッパー/シンガー」といった印象だ。FACTが紹介してくれるバンドはいつもおもしろい。ツアー後半戦ではwaterweedに代わって米国のOur Last Nightが帯同するほか、公演によってはスペシャル・アクトが招かれる予定になっているので、スケジュールをチェックしてみて欲しい。
というわけで、迅速かつスムーズな転換ののちにいよいよFACTが登場。超人ドラマー・Eijiが背後に控える形で、他のメンバー5人が横一線に並ぶ。新加入のイギリス人ヴォーカリスト兼ギタリスト=Adamは、ステージ上手から数えて2番目という位置に着いている。重さ/速さだけではなく、いまにも眩く発光するかのような豊かな音響も加えられたトリプル・ギターのリフが轟き、ドラマティックなオープニングを形作ってゆくさまは、この時点で既にステージの成功を予感させるものだった。そしてHiroのハイトーン・ヴォイスがくっきりとメロディを描き出しながら伸びる。3マン・ライヴということもあってさすがに演奏曲数は多くなかったが、今回はセット・リストの約半数にあたる8曲が新作『burundanga』からであり、序盤から一線に並んだメンバーによるコーラスの絨毯爆撃が、否応無くオーディエンスのシンガロングを引っ張ってゆく。リリースから半年が経過し、ファンに楽曲を咀嚼する時間が与えられていたこと、そしてツアーへの待望感を一層募らせていたことも、この盛大なシンガロングの要因となっているように思える。
昨年のEP『Eat Your Words』の辺りから気になっていたことだが、1曲のメロディが次から次へと展開してなかなか帰ってこない、みたいな往年のFACT節は、次第になりを潜めている。爆発的なシンガロング・フレーズが盛り込まれ、ライヴの現場でオーディエンスの歌声が加えられることによって完成すると言わんばかりの楽曲が多く生み出されるようになった。だからFACTの楽曲演奏がシンプルで単調になってしまったかというと、そういうわけでもない。新加入メンバーのAdamはギターを置いてマイクを握り、スクリームを飛ばしている場面もあったが、いざトリプル・ギター編成という場面ではやはりTakahiroとKazukiのプレイの自由度が増し、ステージの両翼からユニークにして刺激的なギター・プレイが次々に繰り出され、楽曲に深みを与えている。何より、FACTにこうした変化はおそらく、ライヴ会場で彼らの音と向き合ってきたオーディエンスとの、交感によるものなのだ。
Hiroは「今日はすごい祭になっちゃいましたねー!! まさかこんなふうになるなんて思ってなかった。ありがとう!」と興奮を隠せない様子で告げ、「待って、まず、この外人からね」と改めてAdamを紹介する。それを受けてAdam、いきなり流暢な日本語で「前の方、盛り上がってるかー! 後ろの方、盛り上がってるかー! 上の方、盛り上がってるかー! セクシーなこと言ってって言われてたんだけど、チンコしか思いつかない……」と語り出す始末。他のメンバーがステージで喋るよりも、露骨に北関東訛りが強いのが可笑しい。ものの数秒で、愛されキャラのパーティ着火剤的役割を受け止めさせる存在感だ。驚愕のブラスト・ビートを通常運転といった面持ちで繰り出してしまう守護神・EijiのMCに触れては、「エイジの〈え〉は笑顔の〈え〉だよ」とやりあう場面もあったのだが、後になってAdamは「エイジの〈え〉は英語の〈え〉じゃないの?」と、どこまで計算しているんだかさっぱり分からないオモシロ発言も放っていた。最高だな、このキャラクターは。
ドリーミーなリフレインから不穏なインダストリアル・ビートまで、ありとあらゆる音の効能が詰め込まれたハイブリッドなバンド・サウンドの中で、メンバーは口々に「ケガだけはしないようにね」と一言添えながらも、フロアの火に油を注ぎ続けていた。ツアー序盤だろうが関係ない、楽曲の設計も、新メンバーの加入も、すべてはこの熱狂のために成されたことだからだ。そこには、音楽の無限の可能性をもってより多くの人々と繋がり、生活の中で積もり積もったあらゆる感情の受け皿になってやろうとする、FACTの一貫した思想が息づいていた。そもそも、オリコン・チャートで上位に食い込むような作品をリリースしておいて先に海外ツアーを敢行してしまうことも、ワンマンではなく国内外の盟友バンドと共にツアーしてしまうことも、彼らのそんな思想の表れに他ならない。相変わらず常識はずれではあるが、スジは通っている。そして得られるものは他でもなく、ファンや仲間からの絶大な信頼感である。
アンコールの最後をドラマティックに締め括ったFACTの6人は、一列に並んで肩を組み、改めて礼をして、割れんばかりの喝采を浴びていた。本当にツアー・ファイナルみたいだが、今回のツアーは10/5のZepp Tokyoにおける追加公演まで続く。ぜひとも多くの人に、この懐の深い思想に裏打ちされた熱狂の中へと、飛び込んで欲しいと願う。(小池宏和)