「今日が来ることは分かってたんだけど、ここにいるバンドの仲間とやれることが最高に嬉しいです。もうね、健さんの曲聴いたら泣くし……今はまだ、泣かないで行きましょうか。ちょっとしかできなかったけど、新曲やらせてください」。表情はニコニコとしながらもHiroはそう告げて、『best+ 2009-2015』に収録された“look away”をアップリフティングに繰り出す。一方Eiji(Dr)は、「みんな十分に楽しんでるの? なんか大人しくない? 人多すぎて暴れられないの? 俺、最初ウルっと来てたんだけど、普通になってきた。調子出てきた」と笑いを誘う。
ここまでも十分に歌は分かち合われていたのだが、「歌っちゃおうのコーナー」として配置された“the way down”や“wait”、そして“disclosure”は、まさに叫ぶような歌声の応酬だ。MCを促されたTomohiro(B)は「フラットで来ようと思って、何も考えてなかった。いつもどおりなんだ。でも健さんのステージを観たりして、いつもと違う感じはある。最後だからこうっていうよりも、俺、こういうイベントがやりたかったんだ」と語る。そしてHiroはあらためて感謝の思いを伝え、「この6人が、バンドじゃなくてもまた出会える日がくるようにっていう歌詞です」と、しなやかな意志を豪快なリフに乗せて、もうひとつの新曲“choices”を披露した。
最後の“a fact of life”は、他の出演者も飛び入りする最高潮の1シーンであり、また意志と決断によってもたらされたピリオドであった。もうずっと前から覚悟していたつもりなのに、ライヴ中はやはり、もったいない、もったいないと繰り返し思っていた。喪失感はこれから更に募るだろう。しかし同時に、一曲一曲がプレイされるたび、FACTだけがFACTの幕を引けるのだということも、その音からは痛いほど伝わってくる。オーディエンスは全力で声を上げ続け、その時間を共有していた。6人が並んで手を繋ぎ、挨拶し、花束を受け取る。最後にはEijiがフロアにダイヴして、忘れられないステージは幕を閉じるのだった。(小池宏和)