ザ・ズートンズ @ 渋谷O-EAST

ザ・ズートンズ @ 渋谷O-EAST - ザ・ズートンズザ・ズートンズ
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7月末に3rdアルバム『ユー・キャン・ドゥー・エニシング』を発売した、リバプール出身の異色バンド=ザ・ズートンズ。新作発売とほぼ同時期にフジ・ロック・フェスティバル08に出演、2日目のホワイト・ステージを盛り上げた彼ら。あのときは、3rdアルバムを購入したものの、発売から3日後ということで、まったく聴きこめていない時期だった。ということで、来日自体のインターバルこそ短いが、新作の世界観が反映されたライブがじっくり観られるのは、日本のファンにとって今回のツアーが初となる。

イギリスを飛び出し、LAレコーディングを敢行した3rdアルバムでは、土臭くフォーキーなアメリカン・ロック的なサウンド・アプローチをみせファンを驚かせたが、男性陣の出で立ちにもフォーキーな香りが。以前よりスリムになったヴォーカルのデヴィッドは、髪が伸びに伸びてて、仙人系に(ディヴェンドラ・バンハートやジョン・フルシアンテを思い浮かべてください)。そしてアビちゃんはますます美しく。フレアのショート・パンツがキュートで、当然フロアの男性陣からの視線も熱い…。もはやズートンズのライブではおなじみの光景だろう。

ライブに定評のある彼らだが、やはり今回もその点では間違いなかった。正直、演奏テクニックは多少荒削りな面もあるけど、そういったことはまったく問題にならないのだ。音のタメ方もファンキーだし、生み出されるグルーヴが骨太で、緩急のつけ方も、お客さんの煽り方もうまい。もちろん、演奏自体も、年を経るごとによりソリッドになってきている。新作から加入した新ギタリストのポールとのチーム・ワークもばっちり。

デヴィッドの歌声は、貫禄というか、枯れた渋みが増しており、持ち前の衝動性のみらず、ソウルフルな情感をもって、オーディエンスを煽動する。ただし、彼らの楽曲自体がディープな音楽素養を背景にしたもので、もともとある種の“渋み”を備えているため、バンドとしての成熟が、ともするとノスタルジックなものを呼び込んでしまう恐れもある。しかし、そうならないのがズートンズなのである。その肝の一つが、アビちゃんのパフォーマンスだ。妖艶な腰使いのダンスといった視覚的な刺激のみならず、時に弾むように軽やかで、時に重厚で、時になまめかしいサックスの音色、そしてフリーキーなハイトーン・コーラスは、かなりの緊張感をこのバンドのサウンドにもたらしている。

デビュー時ゾンビ・メイクで強烈なインパクトを残したりと、“いびつさ”が身上といわんばかりに、突っ走ってきた印象のある彼ら。もともと抜群のソングライティング力を誇るだけに、正直3rdで垣間見せたレイドバック感が行過ぎると、このまま“器用貧乏”なバンドになっていってしまうのではないかとちょっと危惧したけど、やっぱり心配無用だ。彼らからは、観客と一体になって“楽しめる”ライブと音楽をやっていきたいんだ、という熱さがみなぎっていた。(森田美喜子)
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