ザ・オフスプリング @ Zepp Diver City

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ザ・オフスプリング @ Zepp Diver City
ザ・オフスプリング @ Zepp Diver City
30年に及ばんとするキャリアの集大成を見るようなライヴだった。そして、それが今だったのが必然だとも思うライヴだった。今春のPUNKSPRINGに続いて、9作目となる新作『デイズ・ゴー・バイ』を引っ提げてのツアーで来日を果たしたオフスプリング。最新作『デイズ・ゴー・バイ』は、そのタイトルにも象徴的な通り、これまでの日々を俯瞰し、その上で新たな方向性も提示するようなキャラクターの作品だった。そうした彼らが一歩一歩歩いてきたキャリア、その巨大さが如何ほどのものなのか、今日のライヴはそれを一望させてくれるものだった。

ぎっしりと埋まったZepp Diver City。オープニング・アクトを務めたのは大阪発の3ピース、BUZZ THE BEARS。「オフスプリングのJAPANツアー一発目にようこそ! オープニング・アクト、大阪よりBUZZ THE BEARS、始めます」というG&Voの越智健太の挨拶と共に高速のメロディック・チューンが投下される。攻撃的なギター・リフと裏腹に叙情的なメロディ、その組み合わせが気持ちいい。「初めて聴いてもらう人がほとんどやと思うけど、オフスプリングを聴いてて、オフスプリングが好きな人に、何か伝わるんじゃないかと思って、やってきました」という、オフスプリング・ファンへの愛に溢れたMCもそうだったけれど、ストレートな日本語詞も含めて楽曲に正面から聴き手と向き合うようなすがすがしさがある。約30分強という短い時間だったが、その存在を知らしめるには十分な時間だったと思う。ステージの後の客席からの拍手の大きさが何よりそれを物語っていた。

そして、いよいよオフスプリングである。場内BGMでボブ・マーリィやスペシャルズが流れるなか、19時53分、客席を照らしていた照明が落ちる。と同時に、ステージ中央に掲げられたスカルマークが浮かび上がり、メンバーが登場。PUNKSPRINGの時と同じく、サポート・ギターを加えた5人編成でのステージである。最後に出てきたデクスターは、黄色のラインが施された黒のジャケットに身を包んでいる。1曲目は新作より“Hurting As One”。新作の中でもオフスプリングの王道ど真ん中を行く楽曲でのスタートである。とはいえ、ショウの初っ端が最新作からの楽曲ということで、少し心配した部分もあったのだが、観客はオーオーというシンガロングで見事に応えてみせる。日本のオーディエンスが培ってきたオフスプリングへの愛の深さを象徴するような一場面だ。デクスターはギターを持たずにハンドマイクで歌う。2曲目は、ライヴの大定番曲“All I Want”。なのだが、ここからの展開がすごかった。

ザ・オフスプリング @ Zepp Diver City
途中で、新作のタイトル曲“Days Go By”を挟むものの、それ以外は代表曲を連発。“Come Out And Play”に、“Have You Ever”に、“Staring At The Sun”に、“Original Prankster”に、“One Fine Day”に、“What Happened To You?”。会場は文字通り揺れっぱなし。しかも、進めば進むほど、揺れが大きくなっていく。デクスターのハイトーン・ヴォイスとヌードルズのギター・サウンドには、頭のネジを1本外すような爆発力と瞬発力があると個人的に思っているのだが、その爆発力と瞬発力が如何なく発揮されていく。アメリカでは『コンスピラシー・オブ・ワン』からの2曲(“Original Prankster”“One Fine Day”)の代わりに、『スマッシュ』からの楽曲を演奏することが多かったようだが、そうした地域ごとの配慮も含めて、とにかく最強のオフスプリングを見せる。そんな意志に溢れたセットリストだったのだ。

「これは世界で初めてライヴでやる曲だよ」というヌードルズのMCから始まったのは、新作からの“Cruising California (Bumpin' in My Trunk)”。オフスプリングならではのパーティ・チューンの最新型で、あくまで現在進行形のヒットチャートと向き合おうとする姿勢が素晴らしい。オフスプリングのように快楽性から逃げないバンドの場合、一発屋で終わるリスクというのは常につきまとうわけだが、それでも自分たちのダークなメッセージ性を損なうことなく、そこから逃げなかったし、90年代の未曾有のヒットの後も彼らはサヴァイヴしてきた。その底力を改めて感じるような楽曲だ。更に、オフスプリングのそうした姿勢を最も象徴する曲“Hit That”を畳み掛け、ここからは再び代表曲を連発して、終盤に向かって息もつかせぬセットリストを展開していく。

ザ・オフスプリング @ Zepp Diver City
前作『Rise and Fall, Rage and Grace』からの珠玉のバラード“Kristy, Are You Doing Okay?”を演奏したかと思えば、イントロからフロアに巨大なハンドクラップが広がった“Why Don't You Get a Job?”を畳み掛け、新作からの“Slim Pickens Does the Right Thing and Rides the Bomb to Hell”を挟みつつ、“Walla Walla”“You're Gonna Go Far, Kid”と超アッパーな展開へと雪崩れ込んでいく。そして、フロアを見渡しながら、「最高だよ。日本に戻ってこれて本当に嬉しい」というヌードルズのMCから演奏されたのは、この曲を聴かないで帰るわけにはいかないアンセム“Pretty Fly (For a White Guy)”。この「アハン、アハン」の大合唱を聴く度に、オフスプリングは正しいなあと思う。どんな御託も、どんな正論も、どんなお説教も、このコーラスの前では歯が立たない。そして、そこを信じてきたのがオフスプリングのキャリアそのものであり、今日のライヴのセットリストだった。本編ラストは、これまた必殺曲“Want You Bad”。ここまでピッタシ1時間。まるでジェットコースターに乗っているような1時間だった。

ザ・オフスプリング @ Zepp Diver City
アンコールは、これぞオフスプリングという王道楽曲の3連発。デクスターのヴォーカルの高音がキレキレだった“Americana”に、ヌードルズのジャンプから轟音に雪崩れ込んだ“(Can't Get My) Head Around You”、そしてオーラスは “The Kids Aren't Alright”。いわゆるヒット曲ではなく、こうしたオフスプリングのアイデンティティが染み込んだ楽曲でショウを締めくくるのが実に彼ららしい。やるべき曲をやるべき形でやった集大成的な展開に場内は感動的とも言える空気に包まれるが、デクスターをはじめとするメンバーはさらりとステージを降りていく。それは、これでおしまいではなくて、また一緒に遊ぼうねという、実に彼ららしい佇まいのように見えた。今度の日曜日にはMAN WITH A MISSIONをオープニング・アクトに迎えて、追加公演も行なわれる。今回のオフスプリング、絶対観て損はないと思う。(古川琢也)

1. Hurting As One
2. All I Want
3. Come Out And Play
4. Days Go By
5. Have You Ever
6. Staring At The Sun
7. Original Prankster
8. One Fine Day
9. What Happened To You?
10. Cruising California (Bumpin' in My Trunk)
11. Hit That
12. Kristy, Are You Doing Okay?
13. Why Don't You Get a Job?
14. Slim Pickens Does the Right Thing and Rides the Bomb to Hell
15. Walla Walla
16. You're Gonna Go Far, Kid
17. Pretty Fly (For a White Guy)
18. Want You Bad
(encore)
19. Americana
20. (Can't Get My) Head Around You
21. The Kids Aren't Alright
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