2つのステージがアリーナの両端にあった昨年の形とは違い(というか、一昨年の方式に戻したというべきか)、2つのメイン・ステージ「ULTIMATE STAGE」(ステージ向かって左)「BIG ROCK STAGE」(向かって右)が左右に隣り合う形で設置されたメイン・アリーナ。そして今年はもう1つ、場所的には可動式スタンドの裏にあたる「コミュニティ・アリーナ」というイベントスペースに、3つ目のステージ=「EXTREME STAGE」を新設。メイン・アリーナとの間の音漏れもないし、日中は光を遮れない(=照明も含めた世界観が作りにくい)こと以外は申し分なし。何より、メイン・ステージ2つに交互にアーティストが登場する、というこれまでの流れにもう1つのステージが加わり、アリーナと「EXTREME STAGE」の間を行き来する人の波が生まれることによって、「フェス」としての躍動感が格段に高まっている。これまでにも、2006年&2009年の幕張メッセでの開催時は3ステージ制で行われてきたわけだが、それがここたまアリでもついに実現!という時点で、7年連続で来ている自分はテンションが上がったのだが、やはり素晴らしかったのはその中身だ。
堂々の大トリを務めたのは、2006年・2009年に続き3度目の『LOUD PARK』出演となるスレイヤー。最新アルバムの『血塗ラレタ世界』から爆風の如く吹き荒れるアンサンブルとスラッシュ・ビート! 「ジュンビ、ハ、イイカ!」のトム・アラヤのコールから“ウォー・アンサンブル”、そして1stから“ダイ・バイ・ザ・スウォード”!と畳み掛け、巨大な空間を激情渦巻く漆黒の闇へと塗り替えていく。ついにはアリーナに特大の渦巻きを描き出すオーディエンスに「Are you excited?」と呼びかけるトム。ウォー!と会場中から高々と沸き上がる雄叫びに、メタルの化身の表情がおもわず満足げにほころんだ場面に、スレイヤーと日本のファン、そして『LOUD PARK』との間の絆が垣間見えて、思わず胸が熱くなった。本編最後に“エンジェル・オブ・デス”も聴けたし、アンコールでは“レイニング・ブラッド”も聴けたし――という珠玉の展開で、アリーナいっぱいのファンはもちろん、そろそろ電車の時間を気にし始めるスタンド席のオーディエンスをも21時半を回ってもなおぎっちり惹きつけてみせる渾身の名演を見せてくれた。
リンプ・ビズキット/ホワイトスネイクという2大ヘッドライナーの顔合わせがメタル・ファンにある種の困惑を呼んだ昨年とは違い、メタル/ハード・ロック/ヘヴィ・ロックを軸とした『LOUD PARK』の中でも今年はよりその核心だけをゴリッと抉り出したような空気感を実現していたのが印象的だったし、「ジャンル型音楽フェス」の中でもひときわ強い個性を放つ『LOUD PARK』ならではの、オーディエンスとの信頼関係が感じられる1日だったと思う。出演キャンセルになったストーン・サワーがもし今日のラインナップの中にいたら……とつい夢想しつつ、来年の開催を今から楽しみに待つことにしたい。(高橋智樹)
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