『[Champagne] presents “This Summer Festival 2012”』 @ 新木場スタジオコースト

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『[Champagne] presents “This Summer Festival 2012”』 @ 新木場スタジオコースト
川上洋平(Vo./G.)をして「今日は、一年で一番楽しいライヴでした!」とまで言わしめた、[Champagne]主催による「冬なのに夏フェス」=『This Summer Festival 2012』。開催毎に規模を拡大しつつ、今年はアルカラとストレイテナーを迎え計3バンドが出演。ライヴ・モンスターが揃い踏みである。「デビューする前に始めたフェスで、当時は夏フェスだったんですよ。当時お世話になっていた店長に、どれぐらいの規模でやりたいんだって訊かれて。2000人!って答えて。店長は唖然としてたんですけど。それが今回、2000人越えました! ありがとうございます!!」と感慨もひとしおである。

1番手はアルカラ。初っ端から稲村太佑(Vo./G.)は名調子の挨拶をかまし、アルカラ流の奇怪なダンス・ロック・グルーヴで調理された[Champagne]曲のカヴァー“Waitress, Waitress!”を放つ。当然、どっかんどっかんと跳ね上がるオーディエンスである。サーヴィス過剰な爆笑MCとアクロバティックなバンド・アンサンブルの濁流はいつものことながら、今回は[Champagne]の庄村聡泰(Dr.)が最も好きなアルカラ・ナンバーだという“シェイクスパイ”を「ちなみに、浮気の歌です」と披露したり、2ヶ月前の[Champagne]との対バン時、川上が会場でMacの電源アダプターを紛失し、もしかしたらオーディエンスが見つけていないか訊いてくれと頼まれ、「そんなわけないやんと思いながら、でも彼(川上)はウブで訊けないから、訊いて。やっぱり無くて。なんかスベったみたいになって。結局[Champagne]の機材車の中にあって。そんとき僕、彼になんて言ったと思います? チクショーチクショー!!」と“チクショー”に傾れ込む一幕があったり。何しろ今回の『This Summer Festival』を踏まえた、[Champagne]をいじり倒すようなパフォーマンスになっているのが最高だ。さんざん笑い踊らせておきながら、ラストに“ミ・ラ・イ・ノ・オ・ト”で暖かい感動を運ぶところもズルい。

続いては、この夜の「大御所枠」という立場らしいストレイテナー。大御所と言ったって、瞬く間にフロアを熱狂の渦の中へと叩き込む、特大スケールの力強いバンド・アンサンブルが“Discography”から“BERSERKER TUNE”、“VANISH”と連なるわけだが、今回のステージではホリエアツシ(Vo./G./Key.)が鍵盤に向かって歌い上げ、ナカヤマシンペイ(Dr./Cho.)の美しいコーラス・ワークも映えまくるセットの中盤、“SIX DAY WONDER”から“シンクロ”とミディアム・テンポの流れの存在感が素晴らしかった。熱いステージの連打になることが分かり切っていた『This Summer Fes 2012』の、しかも限られた持ち時間の中、強火でガンガン行くだけではなく胸の内からじわじわと温めてくれるような抑揚を、フェスにもたらしてくれたのだ。フェスに「乗っかる力」が凄い。器の大きさを見せつけながら目一杯ステージを楽しみ尽くし、ホリエは何度も[Champagne]に感謝の言葉を投げ掛け、「ストレイテナーは今日が東京で今年最後のライヴなんだけど、来年はデビュー10周年。2/17に武道館でライヴやります。みんな遊びに来てね!」と告げたあとは、まるでフロア全体が再び浮上してゆくようなダイナミックな演奏で“Melodic Storm”を投下。実際、大御所扱いするにはまだ若いけれど、果たした役割は確かに大御所レヴェルの王道パフォーマンスであった。

『[Champagne] presents “This Summer Festival 2012”』 @ 新木場スタジオコースト
『[Champagne] presents “This Summer Festival 2012”』 @ 新木場スタジオコースト
さて、オープニングSEが鳴り響くと共にステージの背景にはバックドロップが持ち上がり、いよいよ[Champagne]の登場だ。幻想的なバンド・サウンドのイントロから“The”へと移行し、白井眞輝(G./Cho.)が右手で弦を押さえる扇動的なフレーズを組み立てながら、じっくりとフロアの熱量を推し量るようにプレイされる。そこから急転直下に転がり出す[Champagne]の高機動ロックンロールの手応えが凄まじい。不穏なグルーヴをこねくりまわす“El Camino”に触れてみても、彼らのロックンロールのグルーヴが進化・深化していることが肌に伝わる。川上の歌に磯部寛之(Ba./Cho.)の滑らかなベースの旋律が寄り添う“Kill Me If You Can”、OIコールを巻いてクラウド・サーフが続出の“city”と突き進んでゆく。

川上が「今日は、フェスだけど対バンじゃん? スペシャルなこと用意しました!」と告げ、磯部の呼び込みに応じて姿を現すのは、ストレイテナーのひなっちこと日向秀和(Ba.)だ。ツイン・ベース編成がレアな“Revolution, My Friend”に突入し、テナーのステージではなりを潜めていた、ひなっちの暴れスラップ・ショットがここぞとばかりに炸裂する。上半身裸になった庄村も明らかに興奮気味。しかし、ひなっちと向き合ってベース・フレーズの応酬で渡り合う磯部のプレイも、かなり力が入っていて素晴らしかった。自主企画フェスの遊び心はこの後にも発揮され続け、“Cat2”にはアルカラの稲村が、ネコ耳×ワンピース姿、魚を模した歌詞のカンペを手にステージに飛び込んで来る。この抜かりの無さは、軽く迷惑なレヴェルで楽しい。跳ね回りながら、英語詞の部分に滅茶苦茶なアドリブを詰め込んで来る。バンドの演奏はそのまま、ディープ・パープルの“Burn”に連なるというダメ押し付きだ。あっという間に辿り着いてしまった本編終盤は、ドラマティックな歌メロに白井のキラキラした空間系ギター・ワークが映える、1/23リリース予定のニュー・シングル曲“starrrrrrr”と、本家本元の“Waitress, Waitress”。フロアのそこかしこに肩車が生まれ、狂騒のフィナーレを迎える。

アンコールではなんと、川上とストレイテナーのホリエによる、豪華なデュエットのアコースティック・セッションでオアシス曲のカヴァー“Don’t Look Back In Anger”も披露された。年末ソングにはうってつけだ。また、“starrrrrrr”のカップリング曲となる、2004年頃からストックされていたらしい“涙がこぼれそう”は、グランジ風のオルタナ・ギター・サウンドに包まれたピュアな美曲。そしてアンコールを締め括るのは、今回のステージが20代最後のライヴとなった白井が主役の、“Don't Fuck With Yoohei Kawakami”ならぬ“Don't Fuck With Masaki Shirai”だ。狂ったようなノイズを振りまき、思うさま弾きまくる白井である。出演者それぞれの実力もさることながら、キャリアの中で培われてきた、バンド同士の交流の深さと信頼感、そしてそれを支えるファンの熱意が渾然一体となり、「これこそがThis Summer Festival」というオリジナルの熱いヴァイブに満たされた一夜であった。(小池宏和)
『[Champagne] presents “This Summer Festival 2012”』 @ 新木場スタジオコースト

[Chanpagne] セット・リスト

01: The
02: El Camino
03: Kill Me If You Can
04: city
05: Revolution, My Friend
06: 言え
07: Rocknrolla!
08: Cat2 → Burn
09: Kids
10: starrrrrrr
11: Waitress, Waitress

EN-1: Don't Look Back In Anger
EN-2: 涙がこぼれそう
EN-3: Don't Fuck With Masaki Shirai
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