阿部真央 @ 赤坂ブリッツ

『阿部真央 弾き語りらいぶ2012・冬 〜クリスマスだよ!来るでしょ?来るよね!?の巻〜』

阿部真央 @ 赤坂ブリッツ
阿部真央 @ 赤坂ブリッツ
オーディエンスとの親密なムードに満ち溢れながら、そのギターと歌声だけですべてを打ちのめしてしまうような圧倒的な表現力が迸る。大阪と東京で各1公演ずつが行われた、阿部真央の弾き語りライヴ。東京公演はフロアがみっちりとオーディエンスで埋め尽くされた、クリスマス・イヴの赤坂ブリッツである。開演前のステージ上には、水の置かれた小さなテーブルと譜面台、そして赤いアコースティック・ギターが1本のみ。それでオーディエンスの大合唱を誘い、ときに歓喜の涙を溢れ出させてしまったりするのである。

“きよしこの夜”のオープニングSEをバックに、白いブラウス、黒いミニスカート、そしてハイヒールブーツといった出で立ちであべまが登場。ギターを手にとり、大歓声を抑え込むようにしてまずはセカンド・シングル曲の“貴方の恋人になりたいのです”が披露される。決して凄むわけでもないのに、つぶさに描き出された恋愛感情のディテイルに場内が埋め尽くされていった。続いてはギターのボディをノックしながら勢い良く転がり出す“モンロー”だ。小悪魔的に悪戯でキュートな節回しが、オーディエンスのOIコールまで巻き起こして進む。一人きりだろうがなんだろうが、とにかく歌ありき、といった支配力のパフォーマンス。でも、ここで男性オーディエンスから投げ掛けられる「メリ〜・クリスマース!」の声に、思わず表情を綻ばせてしまうあべまであった。公演タイトルのコールに躓きながらも、「ようこそお越し下さいました!」と挨拶を挟み、曲また曲、と今度は情念系のパンチが効いたヴォーカルで“デッドライン”へ。「ハッ!」と吐き捨てるような冷めた笑い声でフィニッシュするさまがすこぶるかっこいいのだが、その直後にオーディエンスの声にウケてしまい、「もう〜、かっこつけようと思ったのに〜」と零している。そして《僕》という一人称で歌われるタイプの切々としたナンバー“じゃあ、何故”が続くのだが、序盤4曲であべまの多才な表現スタイルを次々と形にしてしまって見事だ。それを熱心に聴き入り、煽り囃し立て、まるで易々と荒波を乗りこなすようにパフォーマンスと向き合うファンの姿勢も凄いが。

阿部真央 @ 赤坂ブリッツ
阿部真央 @ 赤坂ブリッツ
さて、今回のステージには、オーディエンスのリクエストに応えるというクリスマス・プレゼントの一幕も用意されていた。「けっこう過酷な企画なの、あたしにとっては。何が来るか分からないから。だから練習してきたんだけど、最新アルバムの曲だけは出来ない!」という条件付きで、入場時に手渡された整理券の番号を、クジ引きの要領であべまが引き当てる。1300人超のオーディエンスの中、栄えある当選者は、まず都内よりお越しのミキさん&彼氏のヒロさん。3作目のシングル曲“いつの日も”をリスエストし、じっくりと愛の歌に場内が満たされる。続いての当選者は萌美さん。なのだが、喜びの余り泣き出してしまう。「泣かないでー! じゃああたし、涙拭いてる間にチューニング」といったやりとりを経て、改めてリクエストに応じて披露されるのは“ポーカーフェイス”だ。ライヴ映えするこのナンバーで、あべまは飛び跳ねながらギターを掻き毟り、サビ部分の歌をオーディエンスに丸投げして盛り上がる。「今日はクリスマスですが、みなさんあたしのライヴで大丈夫でしたか? 恋人たちのクリスマスの人!!……リア充かよ。今日はあたしがみんなの恋人でしょ!? みんなが阿部真央でしょ!?……あと……いや、いい。うん、一人で来た人、って訊こうとしたんだけど。いいって! 言うな! 寂しいー!」と、場を仕切るだけでも一苦労ではあるのだが、あべま自身も楽しそうだ。そしてリクエスト・コーナーの最後には、あかねさんとあずささんの姉妹が“走れ”を希望。慌てて譜面を確認し、まさかのアップテンポ曲2連打で強い意志の込められた歌が駆け抜ける。和気あいあいとしたムードの中にも、歌に向かうときのあべまのスイッチの切り替えは鈍ることなく、集中力が途切れない。

ギターだけが弾き語りじゃない、ということで、ツアーでもお馴染みのキーボード奏者=重実徹が登場し、あべまが歌に専念する“Don't leave me”と“側にいて”。彼女の呼吸に寄り添うようなピアノ演奏の中、感情表現豊かなヴォーカリゼーションが一層くっきりと浮かび上がる。アルバム『戦いは終わらない』にも“側にいて”のピアノ・ヴァージョンは収められていたけれど、生々しい息遣いが伝わるライヴ・パフォーマンスとなるとやはり格別だ。「今年も終わろうとしていますけれども、みなさんはどんな1年でしたか? あたしは、思い残すことがないとは言い切れない部分があります。ああしておけば良かった、こう言っておけば良かったと思うこととかあるかも知れませんけど、そういう人の背中を押せるような歌です」とあべまは語っていた。一人きりのギター弾き語りに戻るなり、張り裂けんばかりのエモーションを全力で吐き出すライヴ初演奏の“都合の良い女の唄”の後には、2013年3月6日にリリース予定と告知されたニュー・シングル曲“最後の私”もいち早く披露される。柔らかく玄妙なタッチのギター・プレイで、打ち明けられなかった恋心を歌ってゆく美曲。シングル作品としてはバンド演奏のアレンジになるのだろうけれど、今回のパフォーマンスにも物足りなさは微塵も感じられなかった。あべまの弾き語りが素晴らしいのは、例えどのようなスタイルの、どのようなテーマの楽曲であっても、感情の物語が織り成す歌の核がブレないからだ。本編ラストの“morning”まで、瞬く間の1時間半であった。

阿部真央 @ 赤坂ブリッツ
阿部真央 @ 赤坂ブリッツ
「それ、あーべーま!」「お!!」と、ファンというよりサポーターと呼びたくなるような団結力を見せてアンコールを催促するオーディエンスの前に、ポニーテール&ショートパンツといったアクティヴな姿を見せたあべまは、“ロンリー”でまたもや大合唱を誘う。そして定番の“母の唄”でフィニッシュとなるはずが、間髪入れずに再び沸き上がるあべまコールに、愛くるしいサンタ衣装でトナカイとクリスマスツリーを引き連れ再々登場。プレゼントをばらまき、ダンサブルなトラックでポーズを決めまくる。大サーヴィスだな。こんなにも楽しい光景が、他でもなくあのリアルでシリアスな歌の数々が繋ぎ止めた人々との関係によって生み出されているのだから、不思議だ。阿部真央は12/30、幕張で行われる『COUNTDOWN JAPAN 12/13』のEARTH STAGE(15:30〜)への出演を予定している。こちらもぜひお楽しみに。(小池宏和)

SET LIST

01: 貴方の恋人になりたいのです
02: モンロー
03: デッドライン
04: じゃあ、何故
05: いつの日も
06: ポーカーフェイス
07: 走れ
08: Don't leave me
09: 側にいて
10: 都合の良い女の唄
11: 最後の私 (新曲)
12: morning
EN-1: ロンリー
EN-2: 母の唄
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