Ken Yokoyama @ Zepp Tokyo

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Ken Yokoyama @ Zepp Tokyo
昨年リリースされたアルバム『Best Wishes』のツアーファイナルとなったZEPP TOKYO。まずは、ゲストバンドのSAが登場TAISEI(Vo)は、「軽くアウェーだね」と苦笑いしていたが、最後には、全てを巻き込むダイナミックなパフォーマンスと、キャリアに裏打ちされた名曲の数々で、2階席まで「SA!」コールを巻き起こしていた。しかも、Ken BandとSAの対バンは、いろんな意味でメモリアルだったのだ。TAISEIはMCで、こう語っていた。11年前のインタヴューで、Tシャツ、短パンからパンクロックを取り返すと語ったこと、でも、今こうしてTシャツ、短パンの親分とライヴをやっていること。そして「同じ臭い釜の飯を食った戦友がベースを弾いているとなると、感慨深いものがあるね」とも――そう、Ken BandのJun GrayとTAISEIは、嘗てBAD MESSIAHで活動を共にしていたのだ。別々の道を進みながら、今日こうして交差した両者。TAISEIは、オーディエンスの盛り上がりに「メロコアもいいもんやね」と笑顔を残してステージを降りた。

Ken Yokoyama @ Zepp Tokyo
パンクロックの名曲がBGMとして流れる中、いよいよKen Bandがオン・ステージ。Kenが『WE ARE FUCKIN’ONE』と書いた日の丸を掲げると、フロアにも幾つか旗が掲げられる。そこから『Best Wishes』の収録曲を中心に、前半はほぼぶっ続けで演奏。そこには、東日本大震災以降から彼が掲げ続けてきた『WE ARE FUCKIN’ ONE』という思いを、やっと楽曲に落とし込めて、それをキッズと具現化できるという喜びや、具現化してやるという気概が感じられた。ステージのギリギリ前までマイクスタンドを運び、曲のメッセージを伝えてから歌い、極めつけにマイクをフロアに投げ込む、それも、何度も。いつだってキッズと近い場所に立ち続けてきた彼だけれど、こんなにも“近付きたいんだ、一つになりたいんだ”という姿勢を行動で示したことはなかったように思う。

Ken Yokoyama @ Zepp Tokyo
このままストイックに行くのか?……と思いきや、中盤には“まっちゃん”こと松浦英治(Dr)のストリップ・ショーを敢行。Ken Bandに参加して2年弱、必要以上に馴染んでいることが伝わってきた(笑)。その勢いでKenも暴走。「BAD MESSIAHはスケベなロックンロールバンドだったの」と、マイクスタンドにパンティがぶら下がっていたエピソードをJun Grayと話すと、最前列の女の子に「パンティちょうだいよ」とおねだり(笑)。でも、「そんなこと言いながらも、日本のことを考えてるのよ」とサクッと本線へと戻る。楽しみ、楽しませながらも、テーマからはブレない。それが、今の彼の強さだと思う。

“Cherry Blossoms”など、日本への思いを込めた楽曲を畳み掛けたあたりから、彼の言葉はますます真っ直ぐになった。国旗を掲げることに対して「変な違和感があるなら、それが何でなのか、考えようぜ」と呼び掛け、そして「みんなで考えて、一緒にいい場所にしていければ」と願う。それと同時に、溢れ出てきたのがパンクスとしての誇り。「右翼だとか左翼だとか、どっちでもない。俺たちもSAも、パンクスだ」、「パンクロックに感謝と希望を」――パンクは、音楽であると同時に、考えるキッカケを与えてくれる存在である。それを改めて感じると共に、そういった立場をKenが強く自覚していることが、最も表れた瞬間だった。キッズにも、それは確実に伝わり、“Believer”は、まるでパンクロックの国の国歌のように、壮大なシンガロングを起こしていた。

Ken Yokoyama @ Zepp Tokyo
最前列のキッズにピックを手渡しし、ステージを降りたKen。アンコールは止まない。それに応えて現れると、Kenは、ステージの傍らに置いていた『東北ライヴハウス大作戦』の旗を持ち出し「仲間がやってるけど、俺も一緒になってバックアップするから」と言い、続けていくこと、繋いでいくことの大切さを歌う。フロアには、一つになる意思を見せるようなダイヴが巻き起こっていた。

客電も点き、ここで終わり……と思いきや、「何やろうか?」と言いながらダブルアンコール!  しかも、リクエストに次々と応えながら、途中で楽器を置き掛けながら、結局は7曲も披露してくれた。そこには、昨年急逝したNo Use For A NameのフロントマンTonyに捧げられたカヴァー“Soulmate”も含まれていた。最後まで、キッズにKenは近付き続けた。

『Best Wishes』が、たくさんの人に宿り、突き動かしているという事実が、感動的な光景となって広がったこの日。でも、きっと、これははじまりでもある。一人一人の力、パンクロックの力が、これからもっともっと発揮されていく予感がする。(高橋美穂)
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