地球三兄弟 @ 渋谷区文化総合センター大和田さくらホール

『ツアー2013「ここほれ三兄弟」』

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約1ヶ月、全国15公演を巡ってきた地球三兄弟の初のツアー(初日の模様はこちら→http://ro69.jp/live/detail/77568)が、ファイナルを迎えた。700席強が用意されている会場はバルコニー式で3階席まであり、3階席から観てもステージは近く感じる。座席制、しかもバンド・セットではなくTHE EARTH(桜井秀俊)、Oしゃん(奥田民生)、スパ de SKY(YO-KING)による弾き語りを中心にしたアコースティック・ライヴということで、2月21日の宮崎公演と並びレアなパフォーマンスが繰り広げられることとなった。地球三兄弟のロックのスケール感を余すことなく伝えるバンド・セットはそりゃあ凄いものだが、例えば二人真心ブラザーズや民生の『ひとり股旅』がそれぞれの芸の極致を内包しているように、今回の地球三兄弟も極めてストイックなステージに……ならないのだな。ユルかった。ほとんど野放しの三兄弟であった。

“Y.M.C.A.”のオープニングSEと手拍子が響き渡る中、まずはワークシャツ姿のスパ de SKYとオーバーオールのOしゃんがステージ両翼のお立ち台でそれぞれ挨拶。背景でネオンサインのように煌めく「THREE EARTH BROS.」の看板は時折「EARTH」の部分に「The」がくっついて点灯が切り替わり、リーダー=THE EARTHのショウ・タイムを演出する仕掛けになっているのだが、満を持して登場したTHE EARTHはひとりだけブラックのスーツに蝶タイという出で立ちで決めて“Y.M.C.A.”の振りを踊る。そして2人よりも一段高いセンターの位置に収まり、アルバム『バーベアマン』のオープニング曲でもあった“すっごい汗”を歌い出すのだった。リーダー=THE EARTHをネタとしていじり倒す地球三兄弟の姿勢が、このツアー・ファイナルに来て露骨にエスカレートしているのが分かる。客席からも早速、じわりと笑い声が漏れ聴こえていた。

地球三兄弟 @ 渋谷区文化総合センター大和田さくらホール
「最終日は3人だけのアコースティック・ライヴで……」「なんで? 打ち上げ的な? それとも予算?」「あの看板は買い取りだから。THE EARTHの家の屋根に付けて、トイレに入ると点灯する」とか何とか、地球三兄弟リーダーとSMA(ソニー・ミュージックアーティスツ)顧問とSMA名誉顧問による無軌道トークが転がりはじめると、もう手が付けられない。「本番中に酒なんか飲むわけないじゃん」と言い放ちながら缶をプシュッと開けるOしゃんである。「次は、我々のデビュー曲を歌います(THE EARTH)」「俺だよ、歌うのは!(Oしゃん)」「弾いたり歌ったりします(THE EARTH)」といった調子で、一度喋り始めると次の曲に繋ぐのも大変である。で、きっちり気持ちを入れ直して曲に向かうとか、オーディエンスを煽って曲に向かうとかも、しない。いきなり始める。いきなり初めて、曲の良さや、歌声の力強さや、スパ de SKYが歌う“目”のように人格から滲み出る説得力で、ダレ場をねじ伏せるかの如く演奏を成立させてしまうのである。

地球三兄弟 @ 渋谷区文化総合センター大和田さくらホール
リーダー=THE EARTHの見せ場はさすがに多かった。波の音と共に繰り出される美麗なギター・インスト“EARTH’S UP”や、バイオリンでケルト風の旋律をを奏でる“渚のボーナス”、“Three Earth Brothers Blues”でのスライド・ギターといった演奏はステージの要所要所をしっかり押さえていたし、「バイオリン、その衣装に似合うねえ。何か弾いてよ」というスパ de SKYの唐突な振りにも、『西部警察』のテーマ曲で応えてみせていた。そして、まるで石川遼みたいな若々しいゴルフ・ルックでパターを振るいながら歌う“ナイスショット!”(OしゃんがiPadで効果音を加える)、さらにはド派手なジャンプスーツでポーズを決めながら割り切った熱唱を繰り広げる西城秀樹のカヴァー“傷だらけのローラ”といった飛び道具的なレパートリーでも場内を湧かせる。

地球三兄弟 @ 渋谷区文化総合センター大和田さくらホール
THE EARTHが忙しなく衣装チェンジをしたりしているので、その間はスパ de SKYとOしゃんがステージ上に残されるわけだが、このときの2人の活き活きとした悪ノリがまたいい。「今、THE EARTHが捌けるときの仕草にカチンときた」「ぶりっ子するときあるよね。鼻にかかった喋り方とか」といったふうに、本人のいないところの悪口で意気投合している。お陰で、この後にTHE EARTHがOしゃん(というか奥田民生)の“野ばら”をカヴァーして歌ったとき、せっかくいい歌なのに鼻にかかった節回しで笑いそうになってしまった。スパ de SKYが歌う“MOTHER”も見事な名演で、Oしゃんは逆に真心ブラザーズの“空にまいあがれ”をカヴァーする。「かっこいいよねえー!!」「いやいや、曲がいいんですって!!」とこのときばかりは珍しく謙遜大会になっていたけれど、地球三兄弟のテーマに沿った歌詞の楽曲がそれぞれ選ばれていることに気付いて、唸らされてしまった。つまり、大地の歌と、海の歌と、空の歌を歌ったわけだ。

Zepp DiverCity公演にトータス松本がドッキリ出演したことに余程驚いたのか、THE EARTHは「今日は誰も来ないよね!?」と終始ヒヤヒヤしている様子。スパ de SKYとOしゃんが“ガッツだぜ!!”のファンキーなギターを奏でて、「THE EARTHあるある」を要求するという振りにも、ステージ終盤の2度目には「追い込まれても何も出ない」とギブアップしてしまうTHE EARTHである。「最終日に大やけど(笑)」とすっかり他人事なスパ de SKYに対しては、「お前のせいでな!」と応えていた。本編はオープニング同様“すっごい汗”で締め括られ、グッズTシャツで揃えた3人が再登場してからのアンコールは迫力のブルース・ナンバー“Three Earth Brothers Blues”からスタートだ。スパ de SKYがステージ上を練り歩きながらのブルース・ハープも炸裂させ、ユルいムードの中にもこの3人の基礎体力の高さを見せつける。そして「超が付く名曲!」「超“さすらい”? 超“コーヒー”?」とボケ倒しながらの超“イージュー★ライダー”。THE EARTHからOしゃんへと、リード・ヴォーカルのバトンがパスされるのだった。

地球三兄弟 @ 渋谷区文化総合センター大和田さくらホール
最後には、リーダーがバイオリンの肩当てパーツをステージ後方に放り投げ、スパ de SKYとOしゃんがそれぞれダイビングの素振りを見せながら慌てて回収しにいく、という即席コントまで盛り込まれたが、「桜井!」「YO-KING!」「奥田民生!」と互いをコールしていたこの3人の愉快なヒーローたちによる活動が一旦は見納めとなると、やはり寂しい。でも、THE EARTHは「寂しいってことは、良かったってことであり、またやりたいです!」と告げていたので、地球三兄弟の帰還を待ちたいと思う。(小池宏和)

01 すっごい汗
02 うかんでくる
03 呼びにきたよ
04 目
05 渚のボーナス
06 地球の親玉
07 ナイスショット!
08 EARTH'S UP
09 My Back Pages
10 野ばら
11 MOTHER
12 空にまいあがれ
13 アースより愛を込めて
14 絵
15 傷だらけのローラ
16 たかまり
17 すっごい汗

encore
18 Three Earth Brothers Blues
19 イージュー★ライダー

encore-2
20 アースの休日
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