9mm Parabellum Bullet @ 新宿 風林会館

9mm Parabellum Bullet @ 新宿 風林会館 - all pics by 橋本塁all pics by 橋本塁
39 -Thank You- LIVE

「俺は今日は『ありがとう』とは言わないから。『サンキュー』としか言わないから。みんな来てくれてどうもあ……サンキューだね(笑)」とフロアを沸かせる菅原卓郎のMCは、もちろんこの日のライブのタイトル=『39 -Thank You- LIVE』にちなんだものだ。9mm Parabellum Bulletの結成「9周年」アニバーサリー・イヤーの幕開けとして行われた『39 -Thank You- LIVE』の会場として選ばれたのは、新宿・歌舞伎町の「風林会館」5階。昭和の夜を彩ってきたグランド・キャバレー「ニュージャパン」の跡地で、今はライブやクラブ・イベントなど多目的レンタルホールとして使用されているこの場所。シャンデリアやソファが店内を埋め尽くし、先端にお立ち台のついたランウェイ(花道)が舞台から長く伸びてーーという独特のレトロ・ゴージャス感と、スタンディングで400人入る広さの会場にしては驚くほどの天井の低さが相俟って、地上5階とは思えないほどの濃密なアングラ感に満ちている。幸運にも抽選で選ばれた400人の観客のみならず、Ustream生中継越しに多くの人が見守る中、登場と同時にランウェイへと駆け出していった滝善充をはじめ全員スーツでキメていた(滝はすぐTシャツになってしまったが)4人は、まさにそのゴージャスなアングラ感をも全身で呼吸し楽しみながら、ダイナミックで妖しい9mmそのものの世界を繰り広げてみせていた。

9mm Parabellum Bullet @ 新宿 風林会館
この日の昼に、5月29日のニュー・シングル『Answer And Answer』リリースを発表したばかりの9mm、いきなりその『Answer And Answer』収録の新曲インスト“Mr.Brainbuster”を挨拶代わりに響かせた後、“Discommunication”の爆音とともに会場を満たしたオーディエンスの情熱と歓喜とジャンプが、昭和ゴージャスな空間をがっつり揺らしてみせる。“The Revolutionary”の《世界を変えるのさ》のフレーズは地下集会のような不穏なエネルギーにあふれて響いていたし、高らかなクラップが鳴り渡った“Supernova”で再びランウェイへと飛び出す滝のエネルギッシュな姿が、フロアの高揚感を天井知らずに煽り立てていく。そして、「俺たちライブ2ヵ月ぶりなんだけど、その間に新曲山ほどレコーディングしてて……」という卓郎の言葉とともに、『Answer And Answer』収録曲以外の新曲を2曲立て続けに披露。スクエアなビート感とエモーショナルなメロディが印象的な「新曲1」、ロシア民謡と歌謡が荒馬ロデオに揺さぶられているような「新曲2」……いずれも「触れるものすべてが9mmの音になる」というマジックそのもののスリルと感激に満ちている。

9mm Parabellum Bullet @ 新宿 風林会館
9mm Parabellum Bullet @ 新宿 風林会館
卓郎がハンドマイクでランウェイへ進み出て歌い上げた山本リンダの爆裂カバー“どうにもとまらない”はこの場所でひときわ艶やかに花開いていたし、そこから間髪入れずに流れ込んだ“Black Market Blues”はミステリアスな破壊力に満ちていた。さらに、「シングルが出ます! “Answer And Answer”を聴きたくないか?」という卓郎の言葉ともに、シングルのタイトル曲“Answer And Answer”へ。かみじょうちひろ&中村和彦のタイトな16ビートの上でメタルとポスト・パンクがデッドヒートを繰り広げるような音像が、この場の熱狂にさらに拍車をかけていく。間奏部分をじっくりねっとりとじらしていた滝が最後には轟々たる狂騒の風景を描き出した“Finder”から、卓郎が「次に聴いてもらう曲は、“カモメ”……か?」と言いながら一瞬だけ披露したのは、なんと昭和の名曲:渡辺真知子“かもめが翔んだ日”! そしてそのまま“Living Dying Message”へ雪崩れ込む!という息もつかせぬ展開に、会場にはむせ返るような熱気が広がっていく。

聴く者すべてを震撼させ狂喜させる楽曲群を、「演奏する」とか「表現する」といった次元を超えて、もはや呼吸や鼓動と同じような感覚で、身体全体で鳴らしている4人の佇まいは、それ自体が最高にエキサイティングだった。そして、この日のアクトで特に光っていたのは卓郎の歌。これまでも日々コンスタントにその表現力とパワーを増し続けてきていたその歌が、ここにきてギアが一気に2つか3つ上がったぐらいの成長を見せていたし、特にヘヴィ・バラード“カモメ”での彼のヴォーカリゼーションの艶やかさには、この曲を幾度となくライブで観てきた自分も思わず聴き惚れてしまった。この日の9mmのパワフルな演奏とともにあふれていた、抗い難い妖力を持つ「歌謡感」は、この会場の空気感よりもむしろ、卓郎の表現力の向上によるところが大きいのだろう。そんな堂々とした卓郎の歌いっぷりと、「ありがとう!……あ、言っちまった!(笑)」とうっかり「サンキュー縛り」を破ってしまう微笑ましいキャラとのコントラストも、9mmのライブならではの醍醐味だ。

9mm Parabellum Bullet @ 新宿 風林会館
「今日はもうひとつ発表があります!」と、「キューミリの日」こと9月9日に、恒例ライブ・シリーズ「カオスの百年」の「vol.9」を、バンド結成の地=横浜を舞台に、横浜BLITZにて開催することを卓郎がアナウンス。「9周年、これからますます……弾け飛んでいこうと思うんで。お付き合いください!」のコールに、熱い拍手と歓声が沸き上がる。そして、“ハートに火をつけて”から“Vampiregirl”“Beatiful Target”とライブは怒濤の終盤へ! “新しい光”は会場丸ごと真っ白に染め上げるような輝きに満ちていたし、スラッシュ・ナンバー“Punishment”はどしゃめしゃな爆走感ではなくタイトなビートの推進力とともに鳴り響いていたのが心強かった。9mmのさらなる進化ぶりが魅惑の会場で鮮やかに咲き乱れた、最高のステージ。1時間40分ほどを全速力で駆け抜けるような熱演の後、この日の「おみやげ」として帰り際に来場者全員にプレゼントされたのは、「9」印の金太郎飴。9周年アニバーサリー・イヤーは、まだまだこれからが本番だ。(高橋智樹)


[SET LIST]

01.Mr.Brainbuster
02.Discommunication
03.The Revolutionary
04.Supernova
05.新曲1
06.新曲2
07.どうにもとまらない
08.Black Market Blues
09.Answer And Answer
10.The Revenge of Surf Queen
11.Finder
12.Living Dying Message
13.砂の惑星
14.キャンドルの灯を
15.カモメ
16.ハートに火をつけて
17.Vampiregirl
18.Beautiful Target
19.新しい光
20.Punishment
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