J @ SHIBUYA-AX

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デビュー当時から一貫したメッセージと情熱でファンを魅了し続けるJというアーティストの偉大さに、改めて感服させられた夜だった。Jの今年最初のツアー「J 2013 SPRING TOUR“Like a NEW Lighting”」のファイナルとなるSHIBUY-AX公演。J自身も「俺は雨男」とたびたび口にしてきたように、これまで悪天候に見舞われることの多かったJのライヴだが、この日は心配された爆弾低気圧も明け方のうちに去り、夕暮れ時の東京は雲ひとつない晴天。暖かな陽気の中、Tシャツ一枚で会場へと向かうオーディエンスの足取りも軽く、これから始まるライヴへの期待が否応なしに高まっていく。

暗転とともにお馴染みのSEが鳴り響き、割れんばかりのオイ・コールに迎えられて登場したJによる「OK、渋谷! 飛ばすぜー!」という第一声で勢いよくスタートしたパフォーマンス。“Die for you”“go crazy”と初っ端からアップ・ナンバーを投下して、フロアのテンションを一気に沸点まで引き上げる。サポート・ギターの溝口和紀と藤田タカシのソリッドな硬質ギターで炎のカーテンを作り出し、Jとスコット・ギャレットの重たいリズムでグイグイと前に押し出していくヘヴィ級のサウンドはこの日も健在。それに絶え間ないオイ・コールと拳の乱立で応えるオーディエンスも、開演直後とはいえ力を温存する気は微塵もないといった様相だ。“go crazy”の終盤では、真っ白い光が場内に満ちる中、Jとオーディエンスの一糸乱れぬコール&レスポンスも。Jのライヴはもう何度も観ているけれど、こうしてバンドとフロアが全力でエネルギーを爆発させることで、一縷の迷いもなしに未曾有の熱狂へと上り詰めていく様子には、いつも圧倒されてばかりだ。

J @ SHIBUYA-AX
「会いたかったぜー! ずいぶん待たしちまったな。去年から今年にかけて色んなことをやってきたけど、やっとこの灼熱の場に戻ってきたぜ!」という挨拶から“OVER DRIVE”に突入すると、再び場内は業火の中へ。“Go Charge”ではイントロから凄まじいモッシュが沸き起こり、“PYROMANIA”では「待ってました!」とばかりにフロア中のライターが着火する。“here we go”の前では次の曲を“Go with the Devil”だと勘違いしたJが「悪魔みたいに悪い奴はいるかー?」というMCを繰り出し、サポート・メンバーにたしなめられるシーンもあったけど、15年以上にもわたってライヴハウスで絆を深めてきたファンを前にすれば、それもひとつのご愛嬌。“here we go”を終えて「次の曲は、さっき俺がコールした……笑」と仕切り直してスタートした“Go with the Devil”の飛び跳ねるビートに乗って、激しく揺れるAXが大きな一体感に包まれたことは言うまでもない。

J @ SHIBUYA-AX
スコット以外の3人がステージ袖にはけてスタートした中盤のドラム・ソロでは、トライバルなバスドラ連打から、アンビエントでノイジーな電子音に合わせたダイナミックなビートへと展開していく約8分間のパフォーマンスに、オーディエンスから割れんばかりの拍手が送られる。その後ステージに戻ってきたJが「スコットのドラム、また凄いことになってたね」と言うように、場内の空気をこれでもかと震わせたスコットの重低音ビートは、Jの屈強な音楽を支える屋台骨としての存在感をまざまざと見せつけてくれていた。そして“Feel Your Blaze”のパワフルに突き進むサウンドで後半戦の狼煙を高らかに上げたところで、「このツアーで色んな刺激を受けて、いま俺たちは新しいアルバムを制作しています。その中から1曲持ってきました!」と新曲へ。夢と現実の間をゆらゆらと彷徨う密室的なサウンドからサビで一気に視界が開けるドラマティックな展開は、あらゆる壁を突き抜けて「その先」のステージへと力強く歩を進めていくJサウンドの真骨頂。そのまま“storm rider”“BUT YOU SAID I’M USELESS”“break”“BURN OUT”とキラー・チューンを畳み掛け、会場全体で残るエネルギーのすべてを燃やし尽くして本編を終了した。

J @ SHIBUYA-AX
本編終了直後からフロアに溢れる「J!」コールに迎えられ、まずはJひとりが現れたアンコール。ここで彼はこんなことを語った。「いつかバンドをやりてぇな」と漠然と憧れるガキだった自分が今ここに立てているのは、皆のおかげだということ。だからこそ大切な仲間である皆にも、それぞれの夢を叶えてほしいということ。ここで一緒に燃やしたエネルギーをそれぞれの人生につなげて、夢に向かって突き進んでほしいということ。そして自分は特別な存在ではなく、夢をつかもうという気持ちで走り続ければ、誰しもが平等にチャンスに恵まれるということを、最後に熱っぽく告げてオーディエンスの拍手を誘った。そしてサポート・メンバーをひとりずつ紹介しながら呼び込み、最新アルバム『ON FIRE』の中でも凛とした存在感を放つバラード“baby baby”を披露。さらに“addiction”“Endless sky”“Evoke the world”とアップ・チューンを連打して、「次に会う時まで、何があってもくたばんなよ!」という決まり文句とともに、2時間強のステージは幕を閉じた。

夏には都内5会場を舞台に5カ月連続の2DAYS=TOKYO 10 DAYSが行われることも発表済み。未来を変える気概に満ちたエネルギッシュなサウンドや、アンコールで喝采を浴びた真摯なMCにはもちろん胸を熱くさせられるけど、そこに一切の嘘がないことを証明するかのように、こうした精力的な活動を次々と積み重ねていくJの姿勢にこそ、何より感動させられる。絶え間なく走り続けることの尊さを、音と、言葉と、行動のすべてで体現してみせるJ。そのブレない姿から放たれる強靭なメッセージは、更に説得力を増していた。(齋藤美穂)

セットリスト
1. Die for you
2. go crazy
3. OVER DRIVE
4. Go Charge
5. PYROMANIA
6. here we go
7. Go with the Davil
8. Sixteen
~Dr. Solo~
9. Feel Your Blaze
10. 新曲
11. storm rider
12. BUT YOU SAID I’M USELESS
13. break
14. BURN OUT
アンコール
15. baby baby
16. addiction
17. Endless sky
18. Evoke the world
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