定刻の19時を少し過ぎたところで場内は暗転、1曲目の“Lovers' Eyes”が始まった。そう、始まったのだが、ライトは付かない。暫く真っ暗闇の中で演奏は続けられる。そしてAメロ、Bメロ、最初のコーラスを歌い終わったところで、ばっと黄金色の照明が全開になり、その光を合図にアコースティック・ギターとバンジョーが全速力で走り始める。それを受けて場内は地鳴りのような歓声、凄まじいオープニングのカタルシスだ。「コンニチワーハジメマシテ! マムフォード・アンド・サンズデス!」とマーカス・マムフォードが日本語で挨拶し、2曲目の“Little Lion Man”へ。今度はイントロから駆け引き無しの瞬間着火で、2人のヴァイオリン・プレイヤーも参加した分厚いアンサンブルに、4パート・コーラスがこれでもかと更なる厚みを加えていく。
ヴォーカルとアコースティック・ギターのマーカス・マムフォードは足元にバスドラを置き、ドラムも担当する。そのマーカスを中心にキーボードのベン・ラヴェット、バンジョーのカントリー・ウィンストン・マーシャル、そしてコントラバスとベースを使い分けるテッド・ドウェインが横一列に並ぶ……というのがマムフォードの基本フォーマットだ。そこに楽曲によってヴァオリンが参加したり、プロパーなドラマーが参加したりするが、あくまでも基本は4人、つまりアコギとバンジョーを主体としたアコースティックなフォーク&カントリーであるというのがマムフォード・アンド・サンズだ。続く“Whispers in the Dark”は特にブルーグラス色の強いナンバーで、つんのめり気味に転がっていく演奏はほとんどアイリッシュ・パンクみたいなことになっている。
マムフォードの楽曲はそのほとんどがマーカスのヴォーカルとアコギを基点として始まる。中には“Timshel”のように、声とアコギ以外はいらないのだと主張する大胆にシンプルなナンバーも存在する。マーカスはバスドラを蹴るのをやめ、キーボードもバンジョーもベースも休み、まるでコーラス・グループのように4人がアコギに向かって声を繊細に合わせていく。そこから一転、「オドリマショ!」と言って始まったのが“The Cave”だ。彼らのライヴはびっくりするほどオーディエンスが縦ノリで踊りまくる。加速と減速を繰り返すブルーグラスな早弾きは前述のようにシンプルだし、パンキッシュだし、何よりフィジカルな快感を呼び起こすものなのだ。日本では特に玄人向けの印象をもたらしがちなカントリー・ミュージック、フォーク・ミュージックを圧倒的にわかりやすく、機能的に展開していく、それがマムフォードの凄さでもある。
アンコールの最初の2曲はセットリストには「Acoustic」と記されていて、「アコースティックもなにも、今までのセットもだいたいアコースティックだったじゃないか?」と思っていたのだが、蓋を開けてみれば本当に、厳密にアコースティック、つまりノー・マイクで歌われるセクションだった。ベンはシンセの代わりにアコーディオンを弾いている。4人のコーラスの美しさを損なわないように、控え目にサビをハモっていくオーディエンスが感動的だった。ラストは“Babel”と“I Will Wait”の必殺2連打、マムフォードを、というよりも最早今この時代そのものを象徴する二大アンセムで圧巻のエンディングとなった。(粉川しの)
Lovers' Eyes
Little Lion Man
Whispers in the Dark
Below My Feet
Holland Road
Timshel
The Cave
Lover of the Light
Broken Crown
Ghosts That We Knew
Hopeless Wanderer
Roll Away Your Stone
Awake My Soul
Dust Bowl Dance
(encore)
I'm on Fire (Bruce Springsteen cover)
Sister / Reminder
(encore 2)
Babel
I Will Wait