SEKAI NO OWARI @早稲田大学 戸山キャンパス 記念会堂

SEKAI NO OWARI @早稲田大学 戸山キャンパス 記念会堂 - pic by 上飯坂一pic by 上飯坂一
早稲田大学で11/2(土)及び3(日)に開催の早稲田祭、その初日に、SEKAI NO OWARIがライヴ出演を果たした。戸山キャンパスの記念会堂は、詰めかけた来場者でぎっしりである。富士急ハイランドで3日間に渡って繰り広げられた、セルフプロデュースにして余りにも壮大なスペクタクル『炎と森のカーニバル』の直後に、大学祭ライヴでセカオワは何を見せてくれるのか。気になっていたのはその点だが、これが本当に素晴らしい内容だった。今回のライヴを企画したのは、首都圏の学生団体であるAGESTOCK2013運営委員会。ライヴのオープニングを飾るのは、セカオワ・メンバーのプロフィールなども散りばめられた、学生主導イヴェントとして趣旨を伝えるスペシャル・ムーヴィーだ。それに対してセカオワも、若い世代に伝えるべきメッセージをしっかりと用意して応える、そんなステージを繰り広げてみせた。周知の通り、セカオワはとことんディープで確固たるヴィジョンを持ったバンドであり、そのひとつの到達点が『炎と森のカーニバル』だった。一方で今回の学祭ライヴは、ヴィジョンをバンド単位の閉鎖的なものにすることなく、よりオープンマインドなセカオワが、学生たちと手を取り合ってライヴ空間を作り上げたことの意味に裏打ちされていた。

Fukase (Vo.)、Nakajin(Leader, SoundProduce, Gt.)、DJ LOVE (SoundSelecter,DJ)らはテールコート、Saori (Pf, ShowProduce)は真っ赤な裾の長いスカートでボトムのカラーを男性メンバーと揃え喝采に応えながら登場すると、まずは華々しく“スターライトパレード”でオーディエンスを跳ね上がらせてしまう。続く“虹色の戦争”でビートが加速する中、Nakajinは「早稲田祭、盛り上がってますかー! もっと盛り上がっていいですよー!!」と景気よく煽り立てていた。歌をがっつりとオーディエンスに委ねてみせる。衣装は『炎と森のカーニバル』でもお馴染みだったが、何しろあの時は一曲ごとのめくるめく演出に気を取られがちだった。改めて、背後にピエロ姿で飛び跳ねては手を打ち鳴らすLOVE、ステージ下手で美麗なピアノ演奏とエレガントなヴィジュアルを振り撒くSaori、ステージ上手から煽り役として切り込んでくるNakajin、そして「音楽の真ん中」に居ながら歌詞の一言一句に専念するFukase、という均整の取れた4人の佇まいに注視させられる。なお、DJ卓はサイズもポジションも講堂舞台の演台と概ね一致しているので、LOVEが通常の3割増しぐらいで偉い人に見えたりもする。

“ファンタジー”でさらに音楽的情報量が増えると、Fukaseはアクティヴになり、Nakajinと肩を組んでかがみ込むような体勢から、前列のオーディエンスに呼びかけるようにして歌う。そして動きはコミカルだが、シリアスなテーマのクレイ・アニメーション映像を挟み込んで、ロッキンチェアーを揺らしながらFukaseが歌うのは“天使と悪魔”だ。リズム・トラックが止まってしまい急遽リアルタイムでビートを打ち鳴らすという「ライヴ・ヴァージョン」対応を敢行。MCタイムには、実はデビュー前(初代DJ LOVE在籍時)に早稲田祭に応募して、教室ライヴを行ったというエピソードなども語りながら「おれ、早稲田祭、大好きなんだよ。毎年来てるもん。去年、一昨年はNakajinと一緒に(Fukase)」「あたし、一昨年ナンパされた(Saori)」「この後も、打ち上げに呼んでくれないかなあって思ってます(Fukase)」といった調子で、早稲田祭愛を振り撒きまくるのであった。

この後には、10/30に配信リリースとなったシングル曲“Death Disco”を放つ。Nakajinのエモーショナルなラテン・ギター・フレーズをDJ LOVEのビートが追い、Saoriの性急なピアノが鳴り響き、そしてFukaseによる切迫感に満ち溢れたヴォーカルが駆け抜けるのだが、ここでまたもやシステム・ダウン。どうにか早稲田祭トークで繋いで仕切り直したのだが、衝動的な勢いが重要なナンバーであるだけにメンバーも残念だったろう。そして、スクリーンにはシェイクスピアやスティーブ・ジョブズ、村上春樹、ビートたけし、甲本ヒロト、Dr.ヒルルク(『ONE PIECE』のキャラクター)らによる生と死を巡っての名言の数々が浮かび上がり、シャボンが吹き上がる演出の中で“不死鳥”が、続いて“幻の命”が、躍動感たっぷりに披露されていった。こちらは素晴らしい時間になった。

「MCでーす、告知します。2014年1月22日に、ニュー・シングル『スノーマジックファンタジー』をリリースします」と、突然ビッグ・ニュースを投げかけて場内をどよめかせるFukase(詳しくはこちらのニュース記事をご覧ください→http://ro69.jp/news/detail/91604)。「と言ってもまだ出来てないんですけど、珍しくラヴ・ソングです」「歌詞も、2番のBメロのとこがまだ出来てない」といった現状報告もあり、さすがにプレイされることはなかったが、本編は勇壮なオーケストラ風のトラックに彩られた“RPG”で終盤戦へと向かっていった。最後の最後にFukaseはホワイトファルコンを抱え、ストロークしつつ“インスタントラジオ”を歌い出す。オーディエンスが一斉に高速のクラップを打ち鳴らして食らいつき、DJ LOVEのスクラッチングからSaoriのピアノ乱舞、そしてリボンキャノンが放たれてのNakajinによるギターソロと連なり、盛大なフィナーレを駆け抜けてゆくのだった。

《Welcome to the “STARLIGHT PARADE”/星が降る眠れない夜に/もう一度連れて行ってあの世界へ》。アンコールの催促とばかりに“スターライトパレード”の一説が合唱される中で再登場した4人は、今回のライヴのために制作してもらったというTシャツを着込んでいる。「みなさんは、二十歳前後ですよね? ぼくらは、それぐらいの頃に奇抜なことをやっていまして……」と、セカオワの原点とも言えるclub EARTH設立時の、写真のスライドショーが始まった。「これは物件を探している頃ですね」「壁紙を全部剥がして、そうしないとペンキ塗っても落ちちゃうから」。壁の穴をパテ埋めする作業中のNakajinとSaoriの写真には、マスクでほとんど顔が見えていないのに「かわいいー!」と声が上がる。「なんでマスクをしているかって言うと、生殖器に悪影響がありますって注意書きがあったんですよ(笑)」。ステージを設営する場面には、敷き詰められて乾かされている無数の顔写真も写り込んでいた。「デモテープを送るときのメンバーの写真だ。40何社って送って、必ず返事しますってところも返事が無くて。そういうもんなんだって(Fukase)」「ここで寝泊まりして作業して。地下だから時間感覚が狂っちゃうんですよ(Nakajin)」「一週間とかお風呂に入らないで、大学行ってた(Saori)」。

そしてFukaseはこう続けた。「すごい借金も抱えて。テレビで、人が自殺を考え始める借金の額の基準が150万だって言ってたけど、そんなの超えてて……上手くいくかどうかってのは、最後まで分からないと思うんですよ。やりたいことがあったら、やった方がいい。みんなに夢の話をしても仕方ないんだけど、僕にとっての夢ってのは何なのかってことを歌います」と。そして披露されるのは“yume”である。つくづく、凄いバンドだ。天使と悪魔を抱きしめたまま、現実と夢の境界線を揺るがし続けて生きてきたバンドなのだ。だって、どう考えても、スライドショーの物語の先に、あの『炎と森のカーニバル』はあるのだから。来春にはアリーナ・ツアー『炎と森のカーニバル –スターランド編-』が待ち構えている。そして大喝采に見送られながら、最後までステージに残っていたDJ LOVEは「みんな、学歴高いかーっ!? ……イヤミか!!」と告げて去っていった。(小池宏和)

01 スターライトパレード
02 虹色の戦争
03 ファンタジー
04 天使と悪魔
05 Death Disco
06 不死鳥
07 幻の命
08 RPG
09 インスタントラジオ
en. yume
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