フランツ・フェルディナンド @ Zepp Tokyo

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フランツ・フェルディナンド @ Zepp Tokyo
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ポール・マッカートニーが11年ぶりに来日していて、アトムス・フォー・ピースも直後に控えている、そんな豪華すぎる&嬉しすぎるビッグ・アーティストの来日過密日程の最中にあって、当然のように東京公演をソールドアウトさせてしまうのがこのフランツ・フェルディナンドというバンドの底力である。

新作『ライト・ソーツ、ライト・ワーズ、ライト・アクション』がまさに「踊れるフランツ」の原点回帰とでも呼ぶべき快作だったこともあって、事前の期待も高かった今回の来日だが、そもそも彼らのステージはどんな種類のアルバムを作った後であっても関係なく、常に全力で、常にハイテンションで、常に楽しいものだ。アルバムごとの作風の変化、そこに込められたアーティストのエゴよりも「オーディエンスを全力で楽しませ、全力で踊らせたい」とする鉄壁のショーマンシップが遥かに勝っているのがフランツのライヴであり、彼らがファンに愛されている所以なのだと思う。

フランツ・フェルディナンド @ Zepp Tokyo
『ライト・ソーツ、ライト・ワーズ、ライト・アクション』からの最新シングル“Bullet”で幕開けたこの日のショウも、そんなフランツのショーマンシップがド頭から炸裂するいつもの、そして最高の滑り出しとなった。今回の来日はベースのボブが家族の病気のため来日できず、レーベルメイトでアレックス曰く「グラスゴーの古い友人」でもあるサンズ・アンド・ドーターズのスコット・パターソンが急遽ピンチヒッターとしてステージに上がったのだが、スコットは黙々と、しかししっかりとフランツのソリッドなリズムの土台を支えていて安心する。

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その代わり、アレックスとニックがいつも以上に発奮していて、ジェスチャーも大きめにギターを弾きまくり、踊り、オーディエンスを煽っている。ニックがヴォーカルを担当する“Tell Her Tonight”はいつもよりパンキッシュな縦ノリで、「ゲンキデスカトキオー!!」とアレックスの掛け声で始まった“Evil Eye”はB級ホラー映画のBGMみたいなチープでコミカルなキーボードを効かせ、こちらもガレージ・パンク・アレンジで前のめりに走り込んでいく。コンパスのように足を120度開いた状態で垂直ジャンプするという、足が長くないと格好良く決まらないアレックスのお気に入りのダンスも、前半から矢継ぎ早に繰り出される。

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“Walk Away”、“Stand on the Horizon”はそんな前半のファスト&パンクな展開に一息入れるチルアウトのセクションで、ニックのアルペジオ・ギターとコーラスが繊細に重ねられるフォーキーな“Stand on the Horizon”は特に素晴らしかったが、これは『ライト・ソーツ、ライト・ワーズ、ライト・アクション』でフランツが見せた新機軸の一端だ。続く“Can't Stop Feeling”はパンク、チルアウトと来て今度はベースの重低音をビリビリ効かせたエレクトロへのアプローチを試すナンバーで、“I Feel Love”のカヴァーも最後のほうはほとんどレイヴみたいなアレンジになっている。フランツのバンド・サウンドというものが広範な「ダンス」に対応可能なのだということを証明するパフォーマンスだった。

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そして“Jacqueline”以降の後半戦は、最後のセットリストを観ていただければわかるようにこれでもかとキラー・チューンを畳みかけていく問答無用の展開で、アルバム4枚、キャリア10年のフランツ・フェルディナンドが、10年間ブレることなく一本の道をひた走ってきたことを再確認させられる流れだった。“Jacqueline”はアルバム音源よりもテンポ・アップしていて、間奏のギター・リフなんて超ハイポジでギターを抱えるニックが胸元を掻きむしっているように見える。一方の“Do You Want To”はむしろアルバム音源よりもテンポ・ダウンしていて、一音一音にドラマティックな演出を加えていく、これまたフランツらしい大仰なショーマンシップが最高だ。

もうこの辺りになると場内は息苦しいほどの熱気で、二階席まで水蒸気のような湯気のような熱がもわっと立ち上ってくる。“Do You Want To”のコール&レスポンスも、“Take Me Out”の最後の「Take! Me! Out!」の大合唱も、アレックスに促されるまでもなく完璧に決めるオーディエンスもまた、フランツのライヴの素晴らしさの一端を担う重要なチームだ。“Love Illumination”ではアレックスとニックがアンプに飛び乗り、逆光の中に左右シンメトリーでポーズを取った2人のシルエットが浮かび上がるのが猛烈にカッコいい。アレックスによる恒例のメンバー紹介(という名のマイク芸)を挟み、“This Fire”、そして“Ulysses”ではウェイヴが起こる。「踊れるフランツ」のベースとでも呼ぶべき彼らの古典的名曲“Take Me Out”、「踊れるフランツ」のベースを再構築しようとした最新作の“Love Illumination”、そして彼らがかつて「踊れるフランツ」のベースを解体しようとした『トゥナイト』を象徴するナンバーの“Ulysses”、このそれぞれに異なる意味を持つ3曲が見事に足並みを揃え、ただひとつの目的=エンターテイメントに昇華される様は本当に感動的だったし、このステージ上におけるフランツの揺るぎない目的意識は、彼らを凡百のインディ・アート・ロックと分ける大きな差だと思う。

フランツ・フェルディナンド @ Zepp Tokyo
アンコールでは「ぼくらは今日テレビに出たんだよ、観てくれた?」とアレックスが言って『スッキリ!』の生放送でも披露した“Right Action”、そしてフランツの最初期のナンバーで懐かしの“Van Tango”(デビュー・シングル“Darts of Pleasure”のBサイド曲)もやってくれた。まさに10年の時空を超えてフランツのダンス哲学の耐久性を見せつけられる格好だ。アンコール・ラストはもちろん“Outsiders”。アウトロのメンバー全員でのドラム乱れ打ちにはスコットもきっちり参加し、きっちり顔芸のタイミングまで合わせてきたから相当事前にリハーサルしていたはずだ。そう、一見してジャム・バンドのインプロヴィゼーションのようにも見える“Outsiders”のドラム・セッションも、実は全てが計算づくのエンターテイメントへの努力であるというのが、フランツのフランツたる所以だ。すべては、最高のこのひとときのために。今日も天晴れフランツ・フェルディナンド!(粉川しの)
フランツ・フェルディナンド @ Zepp Tokyo

セットリスト
Bullet
The Dark of the Matinée
Tell Her Tonight
No You Girls
Evil Eye
Walk Away
Stand on the Horizon
Can't Stop Feeling (Remix with 'I Feel Love' snippet)
Brief Encounters
Jacqueline
Do You Want To
Michael
Take Me Out
Love Illumination
This Fire
Ulysses
Goodbye Lovers & Friends
Encore:
Right Action
Van Tango
Treason! Animals.
The Fallen
Outsiders
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