最新作『コール・ユア・フレンズ』を引っ提げてのゼブラヘッドのジャパン・ツアーは、いつものゼブラヘッド、そしていつもと少し違って少し特別なゼブラヘッドのライヴ・ツアーとなった。ステージにはツリーが飾られ、電飾もクリスマス仕様の飾り付けで、ローディーは森の小人のコスプレで準備をしている。そう、この2013年を締めくくる来日はゼブラヘッド主催の少し早いクリスマス・パーティーといった趣で、ぎっちぎちに埋まったリキッドルームにはあちこちにサンタのコスプレをしたファンの姿も見受けられる。ゼブラヘッド主催のクリスマス・プレ・パーティー……だなんて、どう考えてもアホで下品なハチャメチャ乱痴気騒ぎになるにきまっているわけだが、アホで下品なハチャメチャ乱痴気騒ぎをしたいバンドとしたいファンががっつり四つに組んで全力で最高のパーティーにしていく、それがゼブラヘッドのライヴの流儀だ。
そしてこの、「全力で馬鹿をやる」ゼブラヘッドのライヴの「全力」において世界でも類を見ないパワーと団結力を発揮してきたのが他でもない、日本のファンだ。ゼブラヘッドが日本を第二の故郷と呼ぶのも、日本のファンがゼブラヘッドを愛してやまないのも、音楽やライヴの楽しみ方をバンドと日本のオーディエンスの双方が100%共有しているからだろう。
この日のライヴもまさにそんな、彼らとファンの相思相愛の関係が生み出す最高にアホで下品でハチャメチャな乱痴気騒ぎとなった。ニュー・アルバムをひっさげてのツアーと言っても、ゼブラヘッドのライヴはバンドの最新モードを披露する場なんかではない。むしろポップ・パンク道をわき目も振らず走り続けてきたその覚悟と持久力を爆発させる場であって、“Sirens”でスタートしたこの日のライヴも、最初の一音が鳴った瞬間にゼブラヘッドの不変のポップ・パンク・フォーマットに照準が合う、といった感じで、ステージ狭しと駆けずり回り始めたメンバーに煽られフロアも一気に蜂の巣をつついたような状態になる。
アリの高速ラップ・シャウトとマッティのエモいヴォーカルの二刀流で縦に横にグルーヴを振り回しながら、メロディックなナンバーと激しくベース&ドラムスがドリフトするハードコアなナンバーを自在にスイッチングしながらがんがん進んでいく。ゼブラヘッドのナンバーは、オーセンティックなメロディック・パンクから、スクリーモ、スカ、ラップ・メタルと、メロディアスである、という軸がぶれないことを前提にしてその周りで微妙に曲調を変化させていくが、最終的にカタルシスの出口は同じとでも言うか、無心になって今を楽しみ尽くすマインドがそれらの微妙な変化に一貫したムードを与えている。曲の合間にはビールの一気飲みコーナーがあったり、「ゲロ」コールが起こったりとコメディタッチなお下劣もしっかり組み込まれ、“Postcards from Hell”ではオーディエンスを全員座らせてからの一斉ハイジャンプの演出があったり、また、ファンをステージにあげてビールで乾杯したりと、ショウの運びは、オーディエンスの阿吽の呼吸のコール&レスポンスまで含めてもはや名人芸の域。「変わらない」ことの凄みを見せつける格好だ。
変わらないゼブラヘッドのライヴにおいて、日々着々と変わり、進化し続けているのがメンバーの日本語MC、もとい日本語での下ネタだ。元々ここまで達者な日本語をMCで披露するバンドというのも滅多にいないが、彼らの場合はその語学力を生かす方向が思いっきり間違えていて、間違えたまま進化し続け10年以上が経過すると「スミマセーン! フツカヨイデアタマイタイデース! スミマセーン、ヤリマンハドコデスカー!」みたいなことをスラスラ言い出すようになる。オ○ンコだのチン○ンだとパ○パンだの、とてもじゃないけど書くするのもはばかれるような単語がバンバン飛び出すのはいつものことだが、それを文章に組み立てて話す能力がさらにアップしているのが無駄にすごい。
もちろんアホで下品なだけではなく、ギターのハード・リフに痺れる“Falling Apart”や、エモーショナルな“Public Enemy Number One”、はたまたグリーン・デイばりの男気で格好良く決める“Hello Tomorrow”など、ベテランらしい安定感のあるプレイも多々みられるのだが、格好良くキメたナンバーをやるたびに、そのキマった格好良さを台無しにする勢いで下ネタに走るのがまるで照れ隠しのようでもあって面白い。日本語で「チン○ンビンビンマ○コダイスキー!!」と絶叫してクライマックスに突入する、そんなバンドはゼブラヘッドぐらいしかいないだろう。ちなみにショウの4割を占めた下ネタ・トークから判定すると、一番日本語がうまいのは実はベースのベンじゃないかという気もする。
アンコールではメンバーが全員サンタのコスプレで登場するが、アリはその上からご丁寧にブラジャーを付けている。マライア・キャリーの“All I Want For Christmas is You”のカヴァーを皮切りに、サークル・モッシュで幕を閉じた“Anthem”まで、まさに全曲アンセム、ノンストップでパーティーの総仕上げにかかったゼブラヘッド。最後にアリが「明日日本を発つのが哀しくてしかたないよ、ニホンダイスキ、イチバンです。日本のライヴが一番楽しいよ」と真面目に語り出して少ししんみりするかと思いきや、改めて「チ○コビンビーン!!」と、叫んで終わるという、最後の最後までゼブラヘッドがゼブラヘッドをやりきって終わった、そんな最高にアホで最高に楽しいクリスマス・プレ・パーティーだった。(粉川しの)
ゼブラヘッド @ LIQUIDROOM ebisu
2013.12.05