リキッドルームは超満員。完全ソールドアウトである。ちなみに今日は追加公演で明日の本公演となる渋谷AXももちろん即完。世界を見渡してみても今、これほどまでにクーラ・シェイカーが求心力を持っている国は間違いなく日本だけだ。90年代後半にデビュー・アルバム『K』で伝説的大ヒットを記録したクーラ・シェイカーはもともと日本で非常に人気の高いバンドだったが、その後10年以上に亙って超高支持率を維持し続けているクーラは本当に驚異的な存在だし、ある意味、異形のバンドと言ってもいいだろう。
客層を見渡すと、リアルタイマーと思しき20代後半〜30代前半を中心に、ジーヴァス以降、再結成以降の新しいファンも確実に取り込んでいることが分かる。オープニングが“HEY DUDE”でクロージングが“GOVINDA”という必勝を目論んだセットリスト。その間をクーラ名義の新旧ナンバー、MC5やダニエル・ジョンストンのカヴァー曲等がテンポの緩急付けて並んでいるのだが、どの曲もライヴ用に一旦音塊を溶かして再度整形しなおすように手が施されている。そしてソリッドな音塊が溶け出し、極彩色の絵の具のようにライヴハウスを染め上げる過程こそがクーラ流サイケデリアの真骨頂だ。
酩酊と陶酔の狭間でたゆたうマントラのごときグルーヴ、それをさらにサディスティックなまでに焚きつけていくヒプノティックなハモンドの響き。ともするとナゲッツに収録されている60年代マイナー・サイケ・バンドの伝統芸能のように聞こえてもおかしくないパフォーマンスだが、彼らの超現役な演奏力とクリスピアンの圧倒的なスター性でもって無理矢理アリにしてしまうのがクーラ・シェイカーなのである。各種各界に「王子」がはびこる昨今だけれど、洋楽界における王子はやはりこの人なのだなぁと改めて確認してしまった一夜だった。(粉川しの)
クーラ・シェイカー @ 恵比寿リキッドルーム
2008.01.16