1/31の大阪Zepp Namba公演を皮切りに、日本での7公演を含むアジア・ツアーへと乗り出したアヴリル。昨年は広島でのイヴェント出演キャンセルが残念だったけれども、約2年ぶりのジャパン・ツアーである。追加公演として決定したZepp Nambaと東京・新木場スタジオコーストはライヴハウス規模のレアなパフォーマンスで、その後は神奈川・パシフィコ横浜(2/3)、日本武道館2デイズ(2/4及び5)、愛知・日本ガイシホール(2/7)、大阪・インテックス大阪5号館(2/8)と、アリーナ・クラスの会場をがっつり巡るスケジュールになっている。その2日目にあたるスタジオコースト公演を観たのだが、もうこれぞアヴリル・ラヴィーン、というパワフルかつキュートな内容だった。前作『グッバイ・ララバイ』のドレス姿でグランド・ピアノの上に腰を下ろす落ち着いたイメージから、超キツめのアイライナーできっと正面を見据えたセルフ・タイトル作『アヴリル・ラヴィーン』への変遷も頷ける、アヴリルがアヴリルであることを改めて強く自覚した、そんなステージであった。以下、本文はセットリストなどネタバレを含むので、閲覧の際はご注意を。
新作のアートワークと、これまでの数多くのPVがフラッシュバックするオープニング映像を経て、響き渡るのは3人の和太鼓奏者による勇壮な音色。露骨にトラディショナルな響きではなくて、若い演奏者によるフレッシュでポップな響きになっている。前回ツアーでも披露されたコラボだ。そのまま和太鼓を含めた編成でバンドが繰り出すのは、新作において日本人リスナー歓喜のヴァイブを放っていたロッキン・ダブステップ・ナンバー“Hello Kitty”だ。《カ・カ・カ・カワイイ!》のフックを迸らせながら、身を躍らせるようにステージ袖から飛び出して来るアヴリルである。その衣装には無数のハローキティが。勢い良くラップ・ヴォーカルを繰り出す合間にも、「meow」とか口走るものだからさっそく萌え死にしそうである。そして軽快なポップ・パンクの“Girlfriend”からは、ステージ全編を通して怒濤のシングル曲連打へと突入。さっとノースリーブ×レギンスの身軽な衣装に切り替えてPVをバックに繰り出されるのは、ジョーン・ジェット版の“I Love Rock n’ Roll”を彷彿とさせる大振りなギター・リフのアヴリル流アンセム“Rock N Roll”だ。コルナを振りかざして煽り立て、「イエエェー! トキオー! ミンナサイコーッ!!」と一際昂った声を上げる。そう言えば、今回のセットリストはオリジナル曲のみで固められていたので披露されなかったけれど、かつてカヴァーしたジョーン・ジェット“Bad Reputation”は、映画『ONE PIECE FILM Z』でも使用されて話題になった。
17歳でデビューして現在二十代最後の1年を過ごしているアヴリルは、傍目には変わらずキュートだけれども、年齢を重ねるということについて意識的になっているのではないか。でなければ“Here’s To Never Growing Up”といった楽曲のテーマに向き合うこともないだろうし、そのメッセージをオーディエンスと分かち合うようにフロアへとマイクを向けて歌わせることもないだろう。“I Always Get What I Want”を披露する合間には片腕で全身を支えながらの華麗な側転を決める一方、音源ではチャド・クルーガーとのデュエット・ナンバーだった“Let Me Go”は、長い年月の奥行きを受け止めさせるドラマティックなラヴ・ソングになっている。そこから連なる“My Happy Ending”は、もう10年近く昔に発表された楽曲なのに、現在までの経験が加味されてより味わい深く、ウェットかつエモーショナルに歌い上げられていて感動的だった。そして堂々、歌メロが預けられるデビュー曲“Complicated”。どう表現すれば良いのだろう、アヴリルが完全体のアヴリル・ラヴィーンになったというか、そもそもアヴリルとはアヴリルであることによって既にロック・スターだったことを思い出させるというか、彼女は巡り巡って、その境地に達したのではないかと思えるのだ。
さあ、スクリーンにはマリリン・マンソンの顔が大写しになり、漆黒のケープかマントかを羽織ったアヴリルが歌うのは、もちろん“Bad Girl”だ。バンドはここぞとばかりにマリリン・マンソン風の硬質なサウンドを放ち、絡み付くようなアヴリルの節回しもパンチが効いている。アヴリルは基本的に歌唱力の高いシンガーなのでこの辺りもお手の物だが、彼女のロックンロールというのはロックの歴史をつぶさに参照して学び、上手に器用にロックするというものではない。例えばかつて《これがロックンロールよ ねえおじさん》と歌ったのは森高千里だが、そんなふうにアヴリルは大胆なアティテュードをもって、自身の感性に忠実にロックを乗りこなし、自らを現代のロック・アイコンたらしめてきた。“Rock N Roll”という楽曲もまさにそうだったろう。アティテュードがロックンロールを何度でもリフレッシュし、歴史の重さやカビ臭さから解き放ってくれるのだと、彼女は教えてくれる。本編のクライマックスは“Losing Grip”から、笑顔で感謝の言葉を投げ掛けつつ「もっとみんなの顔を見たいから、ジャンプして! ジャンプ、ジャンプ!!」と“Sk8ter Boi”へ。4カウントのフィニッシュを勢いに乗ったパンチ&キックのポーズで決めたアヴリルは、まったく痛快なほど、アヴリル・ラヴィーンであった。
再び和太鼓とのコラボレーションで始まったアンコールは、“What The Hell”から“I’m With You”にかけて、この日最大級のシンガロングを生み出してしまっていた。オーディエンスが盛り上がれば盛り上がったぶんだけ、彼女は凄いパフォーマンスを見せてくれる。ひたすら力強く愛くるしく、チャーミングなアヴリルではあったし、フロアも盛大に沸き続けていたけれど、ツアー序盤だからだろうか、僕が欲張りなのだろうか、まだまだこんなもんじゃないだろう、という思いもあった。オーディエンスが増えるアリーナ公演においては、パフォーマンスの方も更に大きなスケール感が発揮されるだろう。今後の各地公演に参加予定の方は、一切の遠慮をかなぐり捨てて、欲張りに、アヴリルとの時間を楽しみ尽くしていただきたい。(小池宏和)
セットリスト
01 Taiko
02 Hello Kitty
03 Girlfriend
04 Rock N Roll
05 Don’t Tell Me
06 Here’s To Never Growing Up
07 I Always Get What I Want
08 Wish You Were Here
09 Let Me Go
10 My Happy Ending
11 Complicated
12 Bad Girl
13 He Wasn’t
14 Losing Grip
15 Sk8ter Boi
encore
01 Taiko
02 What The Hell
03 Smile
04 I’m With You
アヴリル・ラヴィーン @ 新木場STUDIO COAST
2014.02.01